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赤ちゃんの高熱、ネット検索の注意点 「事前に知っていれば…」
「赤いぶつぶつ」これなんだ?
母親歴2年目、大変さを実感して育児レベルも着々と上げていたつもりです。しかし、病気への対応力はレベル0。昨年、1歳の息子が40度近い熱を出し、けいれんを起こし、その後、体に発疹が表れました。親はどう対応すればいいのでしょうか。ネット検索をしても、たくさんある情報の中で何を信じていいのか迷うこともあります。筆者の体験を振り返りながら、小児科医の坂本昌彦さんに小さな子どものいる親が心配しがちなポイントについて話を聞きました。
昨年9月の連休前、40度近い熱を出し、けいれんを起こしたため夜中の救急外来を受診した息子。その後2日経っても熱は高いままでしたが、食欲もあり、ぐったりする様子はないので、このまま何もなく回復するといいなと思っていました。
さらに夫が検索したところ、子どもが突発性発疹を経験した母親の体験記を発見。そこには、突発性発疹では解熱後に機嫌が悪くなると書かれていました。「不機嫌なのはこういうことか!」と納得です。
さすがに4連休あれば子どもを連れて公園やドライブに行けるんじゃないか……そんな見通しは甘く、残りの休日も息子は家に缶詰め。私と夫は交代でスーパーに行ったり、カフェでゆっくりしたり、少しでもストレスをためないように過ごしました。
<「教えて!ドクター」小児科医・坂本昌彦さんに聞く>
――突発性発疹が出たらどう対応したらよいでしょうか? 我が家は医者の診断を受けず、状況から突発性発疹だろうと判断してしまいました。
心配なら受診していただいてもよいと思いますが、もしお子さんが元気で水分も摂取できており、ご家族が特に不安もなければ必ずしも受診は必要ありません。
基本的には熱が下がるタイミングで発疹が出てきますが、熱が下がる少し前から発疹が出ることもあります。発疹が出るのは主に前胸部、背中、顔です。手足の発疹は少ないです。
あとは便がゆるくなることがあります。また熱が下がったあとも数日間機嫌が悪くなることも多いです。
生まれて初めての熱が突発性発疹ということは昔からよく言われてきました。ただし、昔は生後6、7ヶ月が多かったですが、最近は1歳過ぎてから突発性発疹になる子も少なくありません。
――熱性けいれんとの関連はあるのでしょうか?
熱性けいれんを起こしやすい感染症は、突発性発疹とインフルエンザがよく知られていますが、他の上気道炎などの感染症でも起こり得ます。必ずしも熱性けいれんは突発性発疹に限ったものではありません。
――注意することはありますか?
突発性発疹で意外と知られていないのは、2回かかることがある点です。その理由は原因のウイルスがHHV-6とHHV-7の二つあるためですが、2回目の症状は1回目ほど目立たないことも多いです。
突発性発疹にかかると一時的に体力も落ちるので、ほかの風邪をもらいやすくなります。熱が下がって発疹が出たから治ったサインだと判断するのはよいですが、数日は機嫌が悪くて本調子ではないことも多いです。翌日からすぐ登園ではなく、お家で安静にし、様子を見ながら登園を再開することをお勧めします。
予防接種を打つ場合は、だいたい治ってから1、2週間くらい空けてくださいと伝えています。水ぼうそうや麻疹のときは4週間空けないといけません。
いずれにせよ、迷ったり不安な時は遠慮せずかかりつけ医にご相談ください。
――病院に行く前に家庭内でできることはありますか?
病院に急いで行くべきかどうかは、本人の全身状態から判断します。熱であれば、「熱が出ているから」ではなく、水分が取れていない、具体的に言うと普段の4割か3割しか取れていない場合、顔色が悪くぐったりしているなどが急いで受診する目安です。
おしっこが出ていないときは脱水のサインですが、6時間以上出ていないなどが目安になります。もっとも、元気であっても、3、4日熱が続いて下がる気配もない場合には、一度詳しく原因を知る必要も出てきますので、日中に小児科でご相談ください。
もちろん、子育て不安を軽減することも小児科医の仕事です。もし不安であれば、遠慮なくご相談ください。もっとも、夜間は救急対応の病院がほとんどで小児科医がいないことも多いですので、できれば日中にかかっていただくとよいでしょう。
「事前に知っているのと知らないのとでは大きな差が出るよね。調べたことである程度落ち着いて対処できたよ」
息子の症状が治まり夫婦で振り返っていた時、夫が言いました。確かに症状について知っていると、観察する余裕が出るのかも。ただ、私が夫の立場だったら冷静に調べる行動に出られていたか不安です。
インターネットでは、「赤ちゃん 病気」と検索するだけで、赤ちゃんがかかりやすい病気をまとめたサイトが出てきます。「赤ちゃん けいれん」と入れると、「こんなときどうする」の情報がたくさん表示されます。ただ、ありすぎて何が正解か分からなくなるかもしれません。
<「教えて!ドクター」小児科医・坂本昌彦さんに聞く>
――分からないことがあるとまずネット検索をしがちですが、調べるときに大切なポイントはありますか?
こうしなさいという話は難しいのですが、これをしてはダメということはあります。
例えば、誰が書いたか分からないブログの情報は怪しいですね。医学的な根拠がどこまであるのか。まず当たるべきは厚労省や国立感染症研究所など公的機関の情報です。
子どもで言うと、「オンラインこどもの救急」というサイトがあります。日本小児科学会がやっているので信頼できます。いざというときにここを確認するといいですね。
医者が言っているから正しいだろうというのも危ういです。例えばクリニックのサイトには正確な情報が載っていることも多いですが、そのクリニックに患者さんを誘導するために、偏った情報を載せていることもあります。一方、悪気はなくても医療者が1人で作っている場合、その医師が勘違いしていると修正されない可能性もあります。
公的機関は情報を公開する前に複数の専門家が入ってチェックされることが多いため、間違いがあったらそこで修正される可能性も高くなります。ただ、このルールも絶対的ではありません。我々医療者も、どのように正確な情報を提供できるのか、日々悩み続けています。
結局のところ、情報を全て文字に落とし込んでネット上で全て余すことなく伝えるのは難しいのです。直接話してコミュニケーションを取ることで、表情など非言語的な要素から正確に伝わるニュアンスもあります。そこに僕たち医療者が患者さんと直接コミュニケーションを取ることの意味があるのかなと思います。
熱性けいれんを起こし、発疹が出たのは半年以上も前のことです。しかし、今でもそのときの不安な気持ちは忘れられません。異常なほど熱かった頭も、不機嫌な様子も。
小児科医・坂本さんに「生まれて初めての熱が突発性発疹であることも多い」と聞き、もっと早くから知識を蓄えておかなければいけなかった、と後悔しました。
しかし、坂本さんはこうフォローをしてくれました。
「妊娠中は時間があるので調べることができますが、子どもが生まれると目の前の生活に忙殺されて調べる余裕もありません。生まれる前に情報提供したほうがいいのかなと思う一方、生まれてからのことは生まれてから考える人もいます」
確かに、妊娠中は毎日情報収集をしていましたが、すべて妊娠・出産に関わるものでした。生まれてからのことと言ったら、ミルクやおむつ、洋服、沐浴など日々の生活のことが中心。予防接種ですら直前で調べたくらいです。
坂本さんは「生まれてからまんべんなく情報を集めるのはなかなか難しい」とした上で、アプリなどを活用し、いつも身近にあるスマホからより正確な情報が得られるしくみを考えていきたいと話していました。
いつ何が起きるかわかりません。信頼できる情報を、アクセスしやすいところに用意しておく。反省と学びの母親2年目でした。
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