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洗浄ボタンが、まるで宝探し…全盲の女性がつぶやいた大事な視点
「所定の位置を決めてほしい」…施設側の反応は
外出先のトイレにある「洗浄ボタン」の位置、気にしたことありますか?「潮干狩りのアサリを探す気分で壁をタッチしています(笑)」と、全盲の女性がツイッターに投稿した「日常風景」から、トイレのバリアフリー化について考えました。
17年前、30歳で視覚障害者となった浅井純子さんは4月下旬、こんなツイートを投稿しました。
《トイレを流す際、センサー式ってありますよね?でも,センサーの場所が分からないのです。どこ?どこ?どこ?とトイレに座りながら左右のセンサーを探しまわる全盲の私。最近は、潮干狩りのアサリを探す気分で壁をタッチしています(笑)
センサーの位置が統一されることを願い、今日もセンサーを探します!!》
このツイートは8000リツイートされ、2万以上の「いいね」がつきました。
ツイートのリプライには、「言われるまで考えなかった」、「目が見えてても毎回探しますw」、「どこのトイレでも音声ガイダンスがあれば良いですね」、トイレ設計に携わっているという人からは「(JIS規格の)普及がんばります!」といった、たくさんの反応がありました。
トイレを流す際、センサー式ってありますよね?でも,センサーの場所が分からないのです。どこ?どこ?どこ?とトイレに座りながら左右のセンサーを探しまわる全盲の私。最近は、潮干狩りのアサリを探す気分で壁をタッチしています(笑)
— 浅井純子 (@nofkOzrKtKUViTE) April 10, 2021
センサーの位置が統一されることを願い、今日もセンサーを探します!!
浅井さんは17年前、特発性周辺部角膜潰瘍という病気を発症。徐々に視力が落ちていき、2年前に全盲となりました。
浅井さんが闘病生活を経て、病院の外の生活がメインになったのがおよそ10年前。その頃にはトイレを流すときはレバーかボタン、センサーのどれかになっていたといいます。
それがさらにバリエーション豊富になり、「いまでは外に出るため、ドアを開けただけで流れたり、便座から立ち上がっただけで流れたりするものもありますよね」と浅井さん。
トイレの洗浄が多様になるにつれ、全盲の浅井さんは困ることが増えてきました。
「初めて入ったトイレだと、どこを押したら流せるかわからないんですよ」
「狭い空間なので、その空間のどこかにあるとは思っているんですが、トイレットペーパーの近くなのか、その反対側なのか、タンクについているレバーなのか、はたまた背中のあたりなのか…」
そんなときは、とにかく壁を触って、流す機能のあるものがどこにあるのかを探し当てるのだといいます。
だからこそ、洗浄ボタンに関して「所定の位置を決めてほしい」と浅井さんは訴えます。
「それができないのであれば、自動で流れるのか、ボタンがどこにあるのかだけでも音声で教えてほしいですね」
浅井さんが具体的に「わかりやすい」と挙げてくれたのが、自動洗浄を音声で案内してくれる設備でした。
実際、その設備を一部店舗で採用している百貨店の、高島屋に話を聞きました。
高島屋でユニバーサルな施設・商品・サービスの拡充などを推進するESG推進室の下村大輔さんによると、高島屋大阪店では、2011年に多機能トイレを竣工した際、「節水機能の一部」として、音声で自動洗浄を案内する機能がつけられたといいます。
機能は、便座に座ると「このトイレはセンサーに手をかざすか、ドアをあけて外にでると、自動的に水が流れます」というもの。
下村さんによるとこの機能は「この機能の導入については、あくまで節水機能のオプション的な位置づけでしたが、(浅井さんのような)声をいただき、新しい気づきがありました」。
現時点で全店舗への導入にはいたっていませんが、浅井さんのような視覚障害の人にとって有益な機能だということがわかったことで「施設のユニバーサル化推進に向け、他の店舗への導入拡大も検討していきたいと考えています」と話します。
高島屋では、新規に多目的トイレを設置するときにはグループとしての設計指針(改正バリアフリー法のガイドラインに沿ったもの)があるそうです。
ただ、難しさも抱えており、苦しい胸の内を話してくれました。
「日本橋の高島屋は重要文化財に登録されているなど、全国的に古い建物が多く、階段を使わないとトイレに行けない店舗もあります。そうした店舗を全部改修してバリアフリー化し、ユニバーサルな施設環境を整備できるかというと難しいところがあります」
それを補うための方法として取り組んでいるのは、サービス介助士など「有資格販売員の拡充」です。有資格社員の人数を年々増やしていくことをグループESG重点課題の数値目標の1つに設定し、取り組みを進めていくとのことです。
「接客でバリアフリー化を補強していくのは百貨店の強みだと思います」
下村さんは「障害のある方にとって、何がストレスやバリアになっているのかというのは健常者の視点では気付かないことも多いのが事実です。今回のような声を多く聞かせていただき、参考にしながらすべての人が『使いやすい』『便利』とおっしゃっていただける施設にしていきたいと考えています」と話しています。
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