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どう見ても岩波文庫!鬼のようなこだわり詰まったポーチの偏愛ぶり

本好きが狂喜した、空前絶後の逸品

一見すると、岩波文庫の書籍として思えませんが、側面をよく見るとファスナーが……
一見すると、岩波文庫の書籍として思えませんが、側面をよく見るとファスナーが…… 出典: ヘミングスのウェブサイト

目次

100年近い歴史があり、文学から哲学まで、多種多様なジャンルの書籍を扱う「岩波文庫」。その本の外観を「完全再現」したポーチが、SNS上で人気を集めています。特徴的なデザインの表紙はもちろん、アイデンティティーである「帯」まで作るほど、こだわりが徹底しているのです。読書好きの心をつかんで離さない、このアイテムは、なぜ誕生したのか? 製造・販売元企業に、話を聞きました。(withnews編集部・神戸郁人)

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あの「唐草模様」と「壺」が入っている!

岩波文庫は1927年、総合出版社である岩波書店が創刊しました。同社によると、同年7月10日に夏目漱石『こころ』や、トルストイ「戦争と平和(一)」など、国内外の名著22冊を刊行。以来、古今東西の英知を世に広め、人々の人生を彩ってきました。

最大の特徴は、ベージュの表紙です。書名や著者名をぐるりと取り囲む唐草模様。裏表紙に見える、「岩波」の文字が刻まれた壺の絵を思い出す人もいるかもしれません。秋田県出身の画家・平福百穂(ひゃくすい)さんが考案しました。83年にカバーがかけられるようになるまでは、そのままの状態で本屋に並び、現在もカバー下にあしらわれています。

この装丁をポーチに落とし込んだのが、服飾雑貨を手掛ける企業ヘミングス(東京都渋谷区)です。モチーフは、松尾芭蕉『おくのほそ道』・福沢諭吉『学問のすすめ』など、日本の文豪や思想家・俳人の著書5冊。いずれも3190円(税込み)で販売しています。

サイズは幅125ミリ、奥行き160ミリで、岩波文庫の書籍とほぼ同じです。表面に本のタイトルなどが英語で書かれ、唐草模様や壺の絵も忠実に再現されています。ファスナーを開けると、大小四つのポケットやペン差しが現れ、様々な用途に生かすことが可能です。

特筆すべきは、文庫本の表紙を固定するベルトや、しおりひもを備えていることでしょう。ブックカバーとしても使えるため、読書家にはたまらない仕様と言えるかもしれません。更に書籍のジャンルを、青や緑といった色で分類する帯まで取り付けてあるのです。

「家族への誕生日プレゼントにしたい」「本を読むのが楽しくなる」。SNS上には、商品の画像とともに、称賛のコメントがたびたび飛び交っています。

ファスナーを開けると、大きさが異なる四つのポケットが登場。ブックカバーとして使えるよう、表紙を固定するためのベルトや、しおりひもも備えている。
ファスナーを開けると、大きさが異なる四つのポケットが登場。ブックカバーとして使えるよう、表紙を固定するためのベルトや、しおりひもも備えている。 出典:ヘミングスのウェブサイト

ページの切断面まで忠実に再現

本への愛情にあふれたポーチは、どんな経緯で生まれたのでしょうか? ヘミングス代表取締役社長・水野裕之さんを取材しました。

同社では10年ほど前、「リブレポーチ」と呼ばれる、本型の雑貨を発売したといいます。表紙にフランス語などが書かれた、ハードカバーの洋書風でした。書店向けの商談会に出品したところ、商品を見た人から、岩波文庫とのコラボを薦められたそうです。

「文庫本をかばんに入れると、表紙が曲がってしまい困る、といった話は聞いていました。本を大切にする人には、ポーチのようなアイテムが求められるかなと。岩波文庫の編集長さんに相談すると、快諾してもらえたため、約7年前に販売を始めました」(水野さん)

商品の見た目を考える上でこだわったのは、本としての体裁を追求することでした。例えば、表紙の側面。直線的な切断面を表現するため、外側からミシンで縫い、ステッチを付けています。その結果、縁が糸に支えられ、生地がへたらずに済むのです。

また著作権をクリアするため、書名は和文ではなく、英文で表記しています。海外版の翻訳などを参照しました。おしゃれな見た目から、岩波文庫を知らない人にも手に取ってもらえるなど、意外な効果があったといいます。

当初は9種類の商品を取り扱っていましたが、販売状況を踏まえ、3年ほど前に5種類まで絞りました。最も売れ線なのは、夏目漱石の『こころ』で、年間300個ほど世に出るそうです。20代~30代女性を中心に、贈答用として購入されるケースも少なくありません。

ポーチは並べたり、重ねたりすることで、インテリアとしても使用できる(現在は取り扱いがない商品も写っています)
ポーチは並べたり、重ねたりすることで、インテリアとしても使用できる(現在は取り扱いがない商品も写っています) 出典:ヘミングスのウェブサイト

「紙のページをめくる楽しさ知って」

商品の人気を背景に、同社は岩波文庫型デザインで、無地のミニノートも製造してきました。取り上げる書籍のラインナップは、ポーチと変わりません。岩波文庫の本を手掛けている印刷所に、本物の文庫本と全く同じ方法で、製本・梱包まで依頼しています。

確かな品質が評価され、ネット上で話題に上るたび、完売することが多いという岩波文庫コラボシリーズ。商品に興味を持っている人々に対し、水野さんは次のように語りました。

「弊社のポーチの売りは、文庫本のような見た目で、実際に書籍が中に入っているという面白さです。部屋の中に並べ、インテリアとして活用することもできます」

「『読書離れが進んでいる』と言われて久しい昨今です。紙のページをめくり、本を読む楽しさを知るきっかけにして頂けたらうれしいですね」

岩波文庫型ポーチは、書泉グランデ(東京都千代田区)などの書店のほか、ヘミングスの販売サイトでも購入できます。
岩波文庫をモチーフとしたノートのイメージ画像。取り扱う書籍の種類は、ポーチと同じだ。画像は福沢諭吉の著書『学問のすすめ』。
岩波文庫をモチーフとしたノートのイメージ画像。取り扱う書籍の種類は、ポーチと同じだ。画像は福沢諭吉の著書『学問のすすめ』。 出典:ヘミングスのウェブサイト

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