ネットの話題
「ヒンディー語」風ポップが秀逸!インド食材店、ユーモア満載の発想
「素晴ラッシー」仕上がりが大好評
とあるインド食材専門店が製作した「ポップ」が、ツイッター上で大きな反響を呼んでいます。異国情緒満載で、見た人を幸せな気持ちにさせる、和文デザインの誕生経緯について取材しました。(withnews編集部・神戸郁人)
ポップが話題になったのは、1月17日のこと。ツイートに添付された写真を見ると、かまぼこ形の黄色い画用紙に、赤字で「売れてます」とつづられています。
特徴的なのは、その見た目です。たとえば「売」の場合、部首である「士」の下部が右側へと大きく伸び、「て」の上方を勢いよく越えています。
さらに「す」も弧を描くように書かれるなど、芸術的なデザインが、見る側に強い印象を残します。直線と曲線の巧みな組み合わせは、まるでインドの公用語の一つ・ヒンディー語で使われる「デーヴァナーガリー文字」のようです。
「これは素晴ラッシー」「ヒンディー語なのに読めちゃうぞ」。ツイッター上には、ポップをユーモアたっぷりに解釈する人々の声があふれました。
このポップを掲示しているのは、東京都台東区のインド食材専門店・アンビカショップです。インド産のスパイスや香辛料、調味料などを取り扱っています。どのような経緯でポップが生まれたのか、製作担当者に聞きました。
事の始まりは、約3年前までさかのぼります。当時、店員はインド人しかおらず、本社の日本人社員が定期的にサポートに訪れていました。その際、商品の関連情報を伝える、和文入り掲示物を手掛けていたそうです。
「その役割を担っていたのが私でした。書き上がったらラミネート加工を施すのですが、端の部分が余ってしまうときがあります。捨てるのももったいないということで、日本語ポップに仕立てました」
担当者は店番中、チラシの裏紙で何度か練習した後、画用紙にマジックを走らせました。参考にしたのは、店内にある、カレーなどの商品パッケージに表記されていたヒンディー語です。
書く際に、文字同士をつなげる直線や、点などの記号を採り入れることを意識。商品棚の値札を入れるプラスチック部分に収まるよう、高さ約5センチ、幅約13センチの大きさに仕上げました。
「売れてます」を含め、5種類ほどの日本語ポップを作ったという担当者。文字のみならず、スパイスの使い方などについて紙にまとめる機会もありました。これまでの経験を踏まえ「ポップは単に商品を紹介するだけのものではない」と語ります。
「店頭に出ているスパイスの種類が多すぎて、混乱してしまうお客さんがいます。そういう方向けに『ポテトサラダやスナック菓子、コーヒーにもかけられる』といった説明を書いたこともあります」
「さらに対面でも情報を伝えることで、『そんな使い方ができるなら、買ってみよう』と喜んでもらえた場面も、少なくありません。ポップをきっかけに会話が生まれ、お客さんの顔が輝いていくのを見るのは、とても楽しかったです」
担当者は現在、本社で商品の受注管理などを行っています。店舗に行くことは基本的にないそうです。それでも、数年越しに自作のポップが話題になり「お店に興味を持ってもらえて大変ありがたい」と喜びます。
その上で、次のようにも話しました。
「私たちはインド・ネパールレストランから、バーやカフェに至るまで、様々な飲食店と取引しています。どのお店も、新型コロナウイルスの影響による、売り上げの減少などで苦労しているのが現状です」
「ぜひ、メニューをテイクアウトするなどの形で、気にかけて頂けたらうれしく思います」
1/37枚