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「おそいよ」「ゴメン」青森の謙虚すぎる除雪車に集まった共感の嵐
こんなに愛らしい除雪車、見たことない!
雪国・青森を走る「謙虚すぎる」除雪車の写真が、ツイッター上で話題を呼んでいます。「たとえ速度が遅くても、大丈夫」。人々の優しさを集めた現象の背景事情について、取材しました。(withnews編集部・神戸郁人)
「許せる」。1月19日、そんな言葉とともに、雪道を走行する除雪車の画像がツイートされました。
黄色い車体の上部と、背部の電光掲示板部分には、雪が降り積もっています。よく見ると、指でなぞったような文字で「おそいよ」「ゴメン」と書かれているのです。
「これは許さざるを得ない」「ゆっくりでいいんだよ」「いつもありがとう」。愛嬌(あいきょう)たっぷりな表現に、コメント欄は、除雪作業員をねぎらう言葉であふれました。19万超の「いいね」がつき、3万回以上リツイートされています。
投稿者で青森県黒石市在住の水道工事業・村上悠也さん(25)によると、除雪車は弘前市内の国道7号を走っていました。仕事場への移動中に車両を見つけ、「これは面白い」と撮影したといいます。
許せる pic.twitter.com/b9uOZYrgAr
— 村上悠也 (@u8murakami) January 19, 2021
あまりに謙虚な除雪車は、なぜ生まれたのか? 運行を担う、国土交通省弘前国道維持出張所の野呂琢(たく)所長に聞きました。
野呂さんによると、車両は「薬剤散布車」と呼ばれています。積雪を溶かす塩化ナトリウムの粒子を、道路にまく機能があるそうです。国道7号のうち、平川市碇ケ関~弘前市津賀野(つかの)を結ぶ、全長31.7キロの「大鰐(おおわに)工区」を走っています。
通常、事業委託先である地元建設業者のスタッフが、二人で運転。19日も同じ運用で、担当者たちが出発前、車両に文字を書きました。
野呂さんいわく「除雪車は、規定により時速40キロ程度で走行しています。散布作業を行う際は、さらに速度を落とす必要がある。後続車両が来た場合、追い越してもらうこともしばしばです」
車両に文字を書くというのは、もしかしたら、周辺のドライバーに対する気遣いから出た行動だったのかもしれません。
「本来なら、外部に見えるよう『散布中』と表示しなければいけないのですが……。慌ただしく出かけたため、消し忘れてしまったようです」
青森県内は今年、猛烈な寒波に見舞われ、弘前市周辺でも暴風雪になる日が多くあります。そのため、朝と夕のラッシュ時間帯前をメドに、連日散布車2台が稼働。約2時間かけ、大鰐工区の融雪作業を行っています。
こうした状況に苦しむのは、青森だけではありません。各地の高速道路などで、急な豪雪に伴う立ち往生や、猛吹雪による多重事故が発生しています。除雪の必要性は、例年以上に高まっていると言えそうです。
今回話題になった写真に寄せられた温かい声が、全国で除雪に携わる人々にとって、励みになることを願ってやみません。
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