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新庄も注目の野球YouTuber、将来は大リーガー? 企画から道開く
一度は「YouTuber(ユーチューバー)」に転身した元独立リーガーが、再びボールを握り、メジャーリーグを目指して海を渡りました。元BCリーグ武蔵の右腕、安河内駿介投手(26)。最近は、元メジャーリーガーの新庄剛志さんと練習をする動画も公開。二度も「引退」を決意しながら、野球の夢に再び走り出したのはなぜか。異色の経歴同様、その理由もぶっ飛んでいました。
「ハロー、ワールド。メジャーユーチューバー『OPA Q(オパキュー)』です」
そんな語り出しで始まる安河内投手のYouTube。昨年からオパキューという名前で、「ストラックアウトに挑戦」といった野球関連のものから、「ヤクルト20本一気飲みチャレンジ」「バナナの皮のむき方」などクスッと笑えるものまで、様々な動画を配信してきました。
実際に会ってみても、YouTube同様、「おちゃらけキャラ」全開な「OPA Q」ですが、野球の実力は本物です。
最速は151キロ。関係者を通じて実現した新庄さんとのキャッチボール動画は、小気味良い互いの投球に「ずっと見ていられる」といったコメントが寄せられています。
私も彼の投球を受けたことがありますが、とにかく「直球が強い」という表現がしっくりくる本格派右腕です。ただ、その野球人生は順風満帆とは言えませんでした。
福岡市出身。熊本・秀岳館高では甲子園出場はなし。東京国際大では下級生の頃から登板機会に恵まれたものの、2年生の冬に右ひじを痛めました。以降、公式戦で登板することはできず、4年生では肩も痛め、野球からの「引退」を決意。就職活動をして、一般企業からの内定ももらいました。
転機が訪れたのは、大学卒業も近づいてきた2015年12月でした。ある接骨院で肩を見てもらったところ、「それまで痛みで上がらなかった肩が、上がるようになった」と言います。
「もう1回はい上がったら面白いと思った」と内定を辞退し、2年間の浪人生活で輝きを取り戻すと、BCリーグの武蔵から声がかかりました。
日本のプロ野球を目指して入団した武蔵には2018年の1シーズン所属。最速を146キロから151キロに伸ばし、38試合で2点台の防御率を残しましたが、その年のドラフト会議で指名されることはありませんでした。
すると、今度はクラウドファンディングを利用し、米球界挑戦を表明。170万円近い資金が集まり、昨年春、トライアウトを受けました。高評価を受けたものの、米球団から声はかからず。再び「引退」を表明し、YouTuberの道へ進みました。
「もう野球をやる気はなかった」と言います。YouTubeの企画で「球速150キロプロジェクト」に取り組み、昨年12月に東京都内で行われた「パワーショーケースジャパン2019」というトライアウトに参加したのも、あくまで「YouTubeの企画で球速を計りに行くくらいのつもりだった」そうです。
だが、このトライアウトでの投球が米球界関係者の目に止まりました。主催者を通して投球動画がメキシコ球団「ジェネラルス・デ・デュランゴ」に渡り、3月のキャンプに招待されることが決まりました。
メキシコリーグは米国の3Aに相当するレベルで、「5試合で5イニング」のチャンスが与えられる3月のオープン戦で結果を出せば、そこからメジャーリーグへの道も開けます。
非常に狭き門であることは安河内投手も理解していますが、挑戦を即決。理由は「面白そうだから」だそうです。
野球をやっていたことから、自らを「メジャーユーチューバー」と名乗っていたOPA Q。メキシコに向けて出発する2日前の2月28日、にっこり笑ってこう話してくれました。
「メジャーユーチューバーが、メジャーリーガーになったら、なんか面白くないすか? 不安はなくて、めちゃくちゃ楽しみ。あ、英語の勉強しなきゃ」。そして、「YouTuberは辞めませんよ」とも。
新庄さんからは野球の技術面に加え、ユーモアを交えたあいさつなどで「人の心をつかむ努力をしろ」と助言を受け、「楽しんでこいよ、自分に勝て。おれも勝つ」と応援メッセージももらいました。真の「メジャーユーチューバー」への挑戦が始まりました。
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