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弱音吐けない・定年までフルタイム…「男性の生きづらさ」共有はまだ
「弱音を吐いてはいけない」「定年までフルタイムで働き続けないといけない」
11月19日の「国際男性デー」に合わせて、男性が感じている「男性だから」というプレッシャーに向き合おうというイベントや調査がありました。「男性の生きづらさ」に着目した取り組みを取材し、記事にした女性記者が自分の中にある「べき論」を考えました。(朝日新聞記者・関口佳代子)
「国際男性デーを取材してみませんか」
10月下旬、上司から送られた一通のメールを読むまで、その記念日の存在を知りませんでした。
二つ返事で取材しようと思ったのは、自分の中にある「男性への固定観念」を見つめるいい機会になるのでは、と思ったからです。
三つ違いの兄、六つと九つ違いの弟に囲まれ、料理や洗濯、家事もみんなでやる家で育ちました。「男だから、女だからこうあるべき」と言われたことは記憶になく、自分の中には性別における「べき論」が存在しないと思い込んでいました。
だんだんと周りが結婚し出す年になって、「安定して稼ぎがよい高学歴の男性と婚約した」と話す友人の言葉に、数年もの間もやもやした気持ちを引きずったり、自分より稼ぎが悪いから彼氏と別れたという話に、「お金がすべてなの?」と思いながらもどこか納得してしまったり。
夫婦間の収入の差なんて、どちらが上だろうが関係ないよ、と口では言いながら、「男性の方が高収入で当たり前」という考えから逃れられない自分に気がつき、これはどうしたことなのか、と悩んでいました。そんな時に冒頭のメールが届いたのです。
国際男性デーに先立つ17日、男性の育休取得など、どうしたら多くの人が生きやすくなるかを考えるイベントの取材に行きました。主催したのは一般社団法人「Lean In Tokyo」。女性が挑戦できる社会の実現を目指し、勉強会や3月8日の国際女性デーに合わせたイベントの開催などをしている団体です。運営メンバーの多くが女性です。
イベントには約70人が参加、男性の参加者は1割ほどいました。話題は家庭での家事や育児の分担から、男性の家庭参加を阻む職場の環境、夫婦別姓などまで及びました。
「同僚が、職場の育休促進やダイバーシティプログラムは無駄と言っていたらどう対応するか」などを話し合う時間も設けられ、参加した人たちは自分自身の身近な体験などと照らし合わせながら、解決策を話し合っていました。初めての人同士でも、スタッフが合図をするまで、議論が盛り上がっていました。
参加者の感想で、印象に残ったのは「仕事や交際の時に、『男だから』とプレッシャーをかけられることが当たり前。自分がおかしいと思っていたことを議論していいのだと気づけた」という言葉でした。
Lean In Tokyoは国際男性デーに合わせ、「男性だから」という固定観念やプレッシャーから生じる「男性の生きづらさ」についての意識調査も実施。男性309人の約半数が、プレッシャーから生きづらさを感じたことがあるという実態が浮かび上がりました。
二宮理沙子代表は、これらの取り組みの理由を「男性の生きづらさを可視化し、議論することが、女性やその他のジェンダーの人にとってもよりよい社会につながる」と話します。
国際男性デーに合わせて、男性が主催する大きなイベントも探しましたが、見当たりませんでした。#MeToo運動などの高まりなどを受け、女性への差別や性暴力などは少しずつ可視化され始めました。でも男性にとっては、性規範によって「生きづらさを感じている」と、発信することはおろか、「生きづらさ」を抱えていることを共有することすらできないのが現状なのではないでしょうか。
これまでひきこもりの人に話を聞くなど、少しずつ男性が持つ「生きづらさ」について、考えてきたつもりでした。ただ、「おかしい」という思いを共有することすらないという人に会い、改めて社会にある男性へのプレッシャーの強さを感じました。自分の中にあるジェンダーの思い込みと向き合ったり、日々の発言でおかしいなと思ったことを議論したり。地道なところから取り組んでいきたいです。
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