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ラジオ×クラファンが生んだ「事件」 TBSラジオ宮嵜Pが語る舞台裏
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初めての令和の夏。TBSラジオを舞台に「事件」が起きました。深夜番組『うしろシティ 星のギガボディ』をきっかけに結成された、うしろシティの金子学さん率いる「GIGA BODY, METAL, from JAPAN」が、フィンランドで開かれた「ヘヴィメタル編み物世界選手権」で優勝。渡航費などを募ったクラウドファンディングは、想定をはるかに超える800万円以上が集まりました。番組の小さな「ノリ」がSNSやクラウドファンディングなどを通じて大きな「ストーリー」に。3カ月に渡った騒動を見守り続けたプロデューサーの宮嵜守史さんは「今時の道具と、ラジオが本来持っている魅力がうまく調和した」と振り返ります。
兄弟番組『アルコ&ピース D.C.GARAGE』での「ムチャぶり」から始まったこの企画。宮嵜さんが「これはヤバイ」と感じ始めたのは、フィンランド行きが招待ではなく自費と分かり、メンバー5人分の渡航・宿泊費をまかなうためにクラウドファンディングを金子さんの相方の阿諏訪泰義さんが立ち上げた時でした。
「阿諏訪君がサイトを立ち上げたら、1時間足らずで目標の100万円を超えちゃって。スタッフのグループLINEがあるんですけど、阿諏訪君には『もう告知をするな。つぶやきを消せ』ってすぐ言いました(笑)」
「募集期間が10日間ぐらいしかなかったので、『10万円のリターンはこないよ』と一応作った10枠も、埋まりだして。僕は会議中だったんですけど、会議なんか頭に入らないくらい、グループLINEで『ヤバイ』って言い続けて。リスナーの熱量に驚きました」
目標金額の100万円を超えても勢いは止まらず、2595人から集めた支援金の総額は約820万円に。ただ、宮嵜さんは「他の番組がクラウドファンディング目当てにやってもこんなには集まらなかっただろう」と話します。
「今回、フィンランドに行くまでの経緯をちゃんとリスナーに見せられた、聴かせられたというのが、クラウドファンディングとうまくかみ合いました」
優勝した金子さんも元々は、「タダでフィンランドに行けるなら」という軽い気持ちからエントリーしました。しかし、宮嵜さんによると、毎週の放送に向かう姿勢から伏線がありました。
「今回、金子君が構成作家の福田(卓也)君とちょこちょこ相談しながら、『(予選の課題動画を)送ってみます』という話から始まったんですけど、その前からラジオに取り組む姿勢としてうしろシティの二人には、『疑問に思ったり、気になったりしたところにはどんどん行ってね』と伝えていて」
「自分から動くと、話すことや聴いてほしいことができるんですよ。『ラジオで何かを話さなきゃいけない』から行くんじゃなくて、興味がある場所に行って、そこでどうだったかを話した方が面白くなる。ラジオ(仕事)が先でなく興味を先に。そういったクセをつけてほしいなあとは思っていました」
「なので、能動的にやってくれてたことが、まずセミファイナルまで行ったってなって。『ここで(コンテンツとして)回収はできた』と。そしたらファイナルに進んで、実は渡航費は自腹ということが分かって、話がどんどん面白く転がっていきましたよね」
そうした小さな「ノリ」が、800万円以上を集め、大会当日はツイッターのトレンドも飾る結果に。宮嵜さんは、ネット上でのコミュニケーションによって、ラジオの持つ魅力が、より引き出されるようになったと言います。
「元々ラジオって、聴く人の思いが強いと思うんですよ。今回は経緯を放送でずっと話して、リスナーも一緒に乗っかって楽しんでくれた。その思いの度合いが、SNSやクラウドファンディングで可視化できるようになったんです」
「昔だったら、思いはあるんだけど、その思いを表現・表明する方法が限られていました。今は、SNSを通じてその思いを、他の人にも見せられる。何ならパーソナリティーにも届く時代です。良くも悪くも」
「800万円というすごい金額が集まり、フィンランドで金子君と後輩芸人のメンバーが頑張って、その様子をみんなで見て聞いてワーッと盛り上がれた。今時の道具と、ラジオが本来持っている魅力や性質がうまく調和して、今回の『事件』になったかなと思います」
金子さんは帰国後さっそく、今回の珍道中を番組のネタに。集まった支援金の内訳も番組では報告しました。「お金の内訳をちゃんと言うのも大事だと思って」と話す宮嵜さんからは、この顚末さえも転がそうとする企てが見えます。
「集まったお金は阿諏訪君の収入になるので、税理士さんに入ってもらって、税金や経費などの計算をきちんとしてもらっています。その結果、例えば10万円が余ったら、そのお金で新しい企画をやろうとか、5万円マイナスだったら、その穴埋めをどうするかの企画をやろうとか。リスナーにまた還元できたらいいですね」
「これはリスナーが生んでくれた企画でもあるので、そうやって『いってこい』のラリーを繰り返して、これからも楽しんでいければいいなと思います」
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