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#16 どうぶつ同好会
押すな、押すなよ!豚の尻に頭当てるヤギ 攻防の理由、飼育員に聞く
ゴールデンウイーク中、ツイッター上に登場した、ある動画が話題です。映っているのは、大きく目を見開き、豚のお尻に頭を押し当て続けるヤギ。動物園で撮影された、野性味あふれる姿は人気を呼び、今も拡散されています。この謎めいた行動について、2匹が暮らす動物園の飼育員に、理由を聞きました。(withnews編集部・神戸郁人)
約1分間の動画は、来園者の一人が、先月30日にツイートしました。
動物園にずっと豚のおしりを押し続けるヤギと嫌がり続ける豚がおった pic.twitter.com/6JnX6ZKL3h
— 昇悟 (@024y9Y36uWb2M63) 2019年4月30日
地面にできた穴に寝そべる、黒毛の豚。そこへ、画面右脇から真っ白なヤギがやってきて、豚のお尻を頭で押し始めます。
嫌がるように鳴き、抵抗する豚。しかしヤギは気にもせず、尻尾をぴこぴこと振りながら、ひたすら頭を押し当て続けるのです。
豚がたまらず起き上がり、ヤギを恨めしそうに眺める場面で、映像は終わります。
コメント欄には「メェ惑なヤギですね」「豚が優しすぎる」といった感想が並び、2万回以上リツイートされたほか、「いいね」も5万を超えました。
はた目からは、少し気の毒にも思える、ヤギと豚のやり取り。一体、どんな背景があったのでしょう? 2匹が暮らす、周南市徳山動物園(山口県周南市)を取材しました。
飼育員の重永和美さんによると、動画に登場するのは、メスのシバヤギ「ナツ」(4歳)と、オスのミニブタ「ジャンプ」(9歳)です。同じスペース内で、それぞれの種の別個体、羊と一緒に生活しています。
動画が撮影された頃、ナツは年に数回訪れる、発情期を迎えていました。普段よりも活動的になり、ジャンプにちょっかいを出したと考えられるそうです。
「異なる種の動物同士が、あそこまで濃厚に関わり合うのは、とても珍しい。ナツは感情が高ぶり、じゃれるつもりで、ジャンプにぶつかっていたのではないでしょうか」
重永さんによると、シバヤギは、群れの中での力関係を決める上で、頭突きし合うことがあります。また、自分より下位の個体の前で頭を振り、地位をアピールするそうです。
元々おてんばなナツと、おっとりした性格のジャンプ。そんな組み合わせに、シバヤギ本来の習性が加わり、今回のような光景が生まれたのかもしれません。
既にナツの発情期は終わり、ジャンプとは適切な距離を取りつつ、平和に過ごしているといいます。
動画から、シバヤギやミニブタに興味を持ってくれた人に対し、重永さんはこう語りかけます。
「たまたま野性的な姿が広まりましたが、どちらの動物も、基本的におとなしい性格です。日頃は仲良く暮らしているので、その姿を園内で直接見て欲しいですね」
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