――でも、筋トレをするなら重いバーベルを使ったり、回数をたくさんしたりした方が効果が高そうですが……。
バーベルを使う方法は確かに優れています。重りを使って強い負荷をかけられますし、細かい負荷の調整も可能です。でも、
自重でもやり方次第で、十分に強い刺激を加えられますよ。
負荷の調整もできます。
腕立て伏せなら、
狭めの手幅で体を真っ直ぐにして胸が床につくまで下ろす。これを反動を使わずに丁寧におこなえば、10〜20回でも相当にきついです。
「お前、腕立て30回できねえのかよ」と友だちに言っていた学生に、きっちりこの方法でやってもらったら、5回が精一杯でした(笑)。
みんな回数を多くしたくて、ごまかしたラクなやり方をしちゃうんです。
やっているつもりで全然できていない。胸がつかない腕立て伏せは「腕立て伏せかけ」。
質の低い100回よりも質の高い10回の方がずっと効率よく筋肉をつけられます。
腕立て伏せは、深く下ろしたときほど筋肉にかかる力が強くなります。また、深く下ろして筋肉が伸ばされるほど筋損傷が強く起こります。上下動が大きく力学的仕事量も増えます。刺激が強くなれば、
筋肉がより強く大きくなる。腕立て伏せと腕立て伏せかけでは全然違うんです。スクワットも同じ。浅いスクワットは「浅はかなスクワット」です。
始めようと思えばその場で「1秒後にでもできる」のが自重トレーニングのメリットです。また、腕立て伏せなら、膝をつけば負荷は軽くなり、椅子に足を乗せれば負荷は重くなります。フォームで負荷を調節してオールアウト(これ以上の動作ができない状態)までやってみてください。
――そういえば、「腕立て伏せ」の回ではゆっくりの動き(フルレンジプッシュアップ)と早い動き(ハイスピード・プッシュアップ)のものがありますよね。
筋トレにはいろんなテクニックがありますが、その1つとして「スロー」と「クイック」を組み合わせたものですね。筋肉をつける刺激には物理的なものと化学的なものがあると言いましたが、それらを自重の負荷でも効率よく与えることができるように工夫しています。
スローは力を入れ続けて動作することで、筋肉にジワジワと持続的な力を与え続けます。こうすると筋血流が制限されて運動することになるため、比較的軽めの負荷でも乳酸などの代謝物が多量に蓄積して、筋肉内の化学的環境が過酷になります。
クイックは切り返しの加速度によって、自重でも強い物理的負荷をかけられます。その切り返しの大きな加速度をより筋肉が伸びたポジションで加えることで、筋肉痛を起こす刺激が大きくなります。
ハイスピード・プッシュアップでは、切り返しの物理的ストレスと、高回数おこなうことにより代謝物が多量に蓄積する化学的ストレスの両方を強く与えられます。
自重でも工夫次第で効果的な筋肥大の刺激を加えられるんです。筋肉体操では他にもいろいろなテクニックを駆使しています。
――
基本的には初心者なら筋肉体操をやっておけば、自然と谷本先生の教えが身につくわけですね。でも、筋肉体操はかなり上級者向けでは?
北海道版の『北海道で!筋肉体操』では、レベルダウンの方法もあわせてお手本を見せています。
公式動画が公開されているので、自分に合うレベルでやってみてください。1部位週2回くらいの実践が良いでしょう。ちなみに、
北海道版の締めは「筋肉は裏切らんべ!」ですよ。