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「死ぬと思った」震災から8年 刀剣乱舞で紅白、横田龍儀が輝く意味

横田龍儀さん=ファースト写真集「龍儀」より
横田龍儀さん=ファースト写真集「龍儀」より

目次

 アニメやゲーム、マンガなどを舞台化した「2.5次元ミュージカル」で活躍する俳優の横田龍儀さん(24)。「刀剣男士」として、昨年はNHK紅白歌合戦にも出演しました。福島県川内村生まれの横田さんは、高校1年のときに東日本大震災を経験。支援に訪れた芸能人の姿を見て、芸能界を志したといいます。「『死ぬと思った』あのとき、本当に元気づけてもらった。今度は自分がそうなりたい」。地元への思いを胸に、表現者としての活動を続けています。(朝日新聞校閲センター・田辺詩織)

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インタビューに答える横田龍儀さん
インタビューに答える横田龍儀さん

ジュノンボーイ出身、話題作に出演

 「初めて写真集を出して、発売記念イベントにたくさんの人が来てくれた。支えてくれているんだなと実感しました」

 横田さんは、若手俳優の登竜門「ジュノンボーイ」の出身。「刀剣乱舞」の物吉貞宗役やスマホアプリが原作の「A3!」の佐久間咲也役など、話題作に出演し、端正なルックスとみずみずしい演技で若い女性の心を捉えています。

 そうした人気の証として、初めての写真集「龍儀」(主婦と生活社)が3月、発売されました。

 写真集は「見たことのない自分」がコンセプト。学生時代に続けていたボクシングの撮影は、「かわいい系と思われている」イメージを一新するカットになりました。

 刀剣乱舞の共演者からも「もっくん(太田基裕さん・千子村正役)や崎山つばささん(石切丸役)に、『お前がこんな姿してるの、変な気持ちになるわぁ』って言われました」と反響があったそうです。

ボクシングの撮影シーンを紹介する横田さん
ボクシングの撮影シーンを紹介する横田さん

芸能人に勇気づけられた

 横田さんは、川内村の自宅で被災しました。発生から8年になる東日本大震災の話になると、丁寧に言葉を選びながら、それでも力強く思いを語りました。

 「写真集のイベントに福島から来てくれた人がいて、『生きていてくれて、ありがとうございます』と言われたんです。生きていたからこそ、こうやって人に勇気を与えられている。それが、うれしいです」

 緊急地震速報のアラームが鳴り、直後に起きた地震。大きな揺れで家財道具などが倒れ、机の下に潜りながら「初めて死を覚悟した」と振り返ります。

3年前のあの日
オレは初めて死を覚悟しました。
携帯から緊急地震速報のアラームがなり
その約10秒後にきた大地震。
何が起きているか理解できずにいたら
隣で100キロ以上のタンスが倒れ、電気が落ちてきて
台所から聞こえる何十枚もの皿が割れるおと。
怖くて机の下に潜り込んで
止まらない地震を感じながら
あぁ、オレは今日死ぬのかって思いました。
2014年3月11日の横田龍儀さんのブログより

 そして、福島第一原発の事故。横田さん一家は、神奈川県に避難しました。慣れない場所での暮らしに不安を抱える横田さんを勇気づけたのが、被災地支援をする芸能人の姿でした。

 「テレビに映る芸能人が、避難生活をしている人たちを勇気づけているのを見て、『自分もそうなりたい』と思うようになりました」


「自分のしたいことをしろ」背中押した両親の言葉

 もともと、仮面ライダーへの憧れがあったという横田さん。それでも、高校3年になり将来の進路を考える時には、「普通の仕事」を選ぼうとしたそうです。

 「役者なんて安定してないし、今大変な時期だし」。そう思っていた心を動かしたのは、両親の言葉でした。

 「そんなに簡単に諦めていいの?」

 「自分のしたいことをしろ。こっちは大丈夫だから」

 初めて母親から「怒られた」という横田さん。背中を押され、ジュノンボーイのコンテストに応募しました。そのコンテストで審査員特別賞を受賞し、芸能界への道が大きく開くことに。

 「あの言葉があったから、芸能の仕事ができている」。今回の写真集も、「父がつけてくれた名前が気に入っているんです」とタイトルを「龍儀」にしました。

福島、東北の支えになりたい

 昨年は紅白、そして単独での写真集。福島、東北の人の支えになりたいという気持ちで、ここまでやってきたといいます。2014〜17年には福島の放送局の⽇本縦断企画で、東北の被災地も歩きました。

 「旅先で出会った人からかけられた『ずっと応援しているから、有名になってね』という言葉が胸にずっと残っていて。そういう人たちを、もっともっと元気にできるようになりたい。だから、絶対に有名にならなきゃいけない。もっともっと、これから頑張りたいと思っています」

 今年の3月11日、「8年」と題したブログに「いろんな人に出会い、いろんな人の想いを聞き、今の自分がある」とつづった横田さん。目標は今でも、仮面ライダー。ふるさとを始め、多くの人たちに勇気や元気を与えられるよう、挑戦は続きます。


取材を終えて

  終始和やかな雰囲気でしたが、ふるさとについて真っ直ぐに記者を見て語る様子が印象的でした。

 「最近も福島には戻っていますか」という質問には、「毎年帰っていたんですけど、最近戻れてないんですよ。行きたいです。当時(震災後)行けなかったところも行けるようになっていますし」。地元のことを気にかけていなければ出てこない言葉だと思います。

 そんな横田さんの活躍は、きっと多くの人たちの力になっていると感じました。

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