話題
泣かなかった赤鬼… したたかな村人と心優しい鬼の物語、作者に聞く
「それでも自分を必要としてくれるなら」と思っていた鬼が、最後に見たものは――。
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「それでも自分を必要としてくれるなら」と思っていた鬼が、最後に見たものは――。
生きるのに必死な村人と、人間に利用されていることを知りながら協力する鬼。「それでも自分を必要としてくれるなら」と思っていた鬼が、最後に見たものは――。そんな物語がネット上で注目を集めています。描いた漫画家に話を聞きました。
先月28・29日と2回に分けてツイッター投稿された計8ページの漫画。
タイトルは「したたかな村人とすべてを知っていた鬼」です。
物語は、村人の吾作が「金棒」を鬼にプレゼントする場面から始まります。
鬼が「こういうの欲しかったんだ!」と喜んでいると、子どもが近づいてきて、村が侍たちに襲われていることを知らせます。
鬼はもらったばかりの金棒をふるって、侍たちを撃退します。
次の場面では、平穏を取り戻した村で、村長たちが話し合いをしています。
「金棒は高くついたが 村を守ってくれるなら安いもんじゃ」「吾作 これからも鬼の機嫌をとってくれよ」
外でこっそり、そのやりとりを聞いていた鬼。
前々から利用されていることを知りながら、「それでも自分を必要としてくれるならいい」と考えていたのです。
今度は大人数で、落ち武者たちが村を襲ってきました。
苦戦する鬼を見て村人たちは「いかん 役立たずが」「村を捨て逃げるぞ」と言います。
そんな中、金棒をもらった時の鬼のうれしそうな顔を思い出した吾作は、「わしは戦う!」と鬼の加勢に向かいます。
「わしもいくぞ」「わしもじゃ」と続く村人たち。見事に落ち武者たちを撃退することができました。
最後に描かれているのは、笑顔の鬼が村人たちと並んだ場面。「鬼はほんとうの村の仲間になった」と締めくくられています。
この漫画に対して、「優しい世界だ」「鬼の笑顔のコマが胸に迫りました」といったコメントが寄せられ、リツイートは9千、いいねは4万を超えています。
描いたのは、漫画家の一智和智さん。デビュー20年以上で、単行本30冊以上、電子書籍を含めると50冊以上を世に送り出しています。
現在は、KADOKAWAのコミックウォーカーで「便利屋斎藤、異世界に行く」、オーバーラップのコミックガルドで「剥かせて!竜ケ崎さん」を連載中。また、一智和智とは異なる名義でも執筆しているそうです。
今回ツイッターで公開した作品については、こう話します。
「常になにか描いてネットに上げるのが癖になっているので、いつもネタを考えています。ですので、その流れの中で急に思いついたという感じです」
したたかな村人とすべてを知っていた鬼【はじまりの章】 pic.twitter.com/RedJNYVIvZ
— 一智和智バーサスアース続編更新中 (@burningblossom) 2019年3月28日
したたかな村人とすべてを知っていた鬼【おわりの章】 pic.twitter.com/SmLnIaXwx9
— 一智和智バーサスアース続編更新中 (@burningblossom) 2019年3月29日
仕事の原稿の合間を縫って描いたそうで、「いかに早く描きつつ、ちゃんと読んでもらえるものにするか」と心がけたそうです。
「メッセージ性のような大それたものはありません。楽しんでもらえればそれでいいかなと思ってます」
名作「泣いた赤鬼」を彷彿とさせる物語ですが、まったく意識していなかったそうです。
「有名な作品なので、だいたい知っていますが、うちにその本はなかったので、ちゃんと読んだことはありません」
パッと見てわかりやすく、「見た人の心をつかむ何かを」という思いで漫画を投稿し、たびたび話題になる一智さん。
多くの反響が寄せられたことについては、「もっとすごい作家さんがいっぱいいらっしゃるので、まだまだだなと思っております」と話していました。
◇ ◇ ◇
一智さんの最新単行本「剥かせて!竜ケ崎さん」が5月末に発売されます。
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