IT・科学
猫の日、ツイッター社が仕掛けた「ある企画」へたくそ写真集めた理由
ツイッターでは同じ「ハッシュタグ」を通じたコミュニケーションがたびたび盛り上がります。2月22日の「猫の日」では「#猫の写真へたくそ選手権」が注目を集めました。実はこれ、ツイッター社が自ら仕掛けたもの。あえて「へたくそ」を取り上げた理由とは? 企画をしたツイッター社の担当者は「見せたいものと見たいものは一致しない」とその狙いを語ります。ツイッターの「中の人」が考える「バズり」について話を聞きました。
今日は猫の日
— 桜🌸Continues🌟 (@panstarrsison) 2019年2月22日
なので本来の姿を
こわくないよ😄 pic.twitter.com/cclwHlwah3
話を聞いたのは張浩さん、木和田奈々子さん、梶原大介さんの3人です。
2月22日は猫の鳴き声「ニャン、ニャン、ニャン」にちなんで猫の日として制定された、日本だけのものです。
なので、今回のツイッター社の企画も日本独自の取り組みです。
グローバル企業のツイッター社ですが、張さんは「これまでも花見や、母の日、父の日など、日本ならではの企画は続けてきました」と語ります。
ちなみに「世界猫の日」は8月8日ですが、猫関連のツイートは2月22日の方が多いそうです。
なぜ、あえて「へたくそ」なのか。
木和田さんは、日本の「ちょっと独特」なツイッターカルチャーを意識したと言います。
「○○の写真へたくそ選手権は、ツイッター上で人気のある文脈の一つです。○○に様々な動物を当てはめたハッシュタグが年間通してよくツイートされています。一気に知名度を得たのは、羽生結弦選手の祝賀パレードが大混雑しなかなか狙い通りの写真が撮れない状況を逆手に取った #羽生結弦の写真へたくそ選手権 でしょうか。完成形ではないものをフックに写真を見てもらう、そんな温度感がツイッターではちょうどよく、利用者の方々に受け入れていただきやすいようです」
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— Twitter Japan (@TwitterJP) 2019年2月19日
誰が一番へたくそ?#猫の写真へたくそ選手権 開催中
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梶原さんも「自然発生的に生まれた熱量をより大きくさせる」よう気をつけたそうです。
「ツイッター社自身が前に出ていかず、ユーザー発で生まれたものを使うようにしました。ツイッターのコミュニティーには、熱量をもったフォローとフォロワー関係があります。その自然発生的に生まれた熱量を、より大きくさせ、他のコミュニティーに広げることを心がけました」
ペットは飼い主にとって、家族同然の存在です。一方、梶原さんは、ツイッターでの拡散で気をつけたい点として「見せたいものと見たいものは違う」と強調します。
「猫の飼い主は『かわいい猫』を見せたいけど、まわりの人が見たいとは限らない。ペットそのものを見せると、猫が好きな人しか楽しめない。みんなが『猫の日』を楽しんでもらうには、『可愛い』よりも『おもしろい』かが重要。そこで、飼い主がうまく取れなかった『へたくそな猫の写真』をツイートすることで参加でき、他の人もそれをみて楽しめる『#猫の写真へたくそ選手権』を開催し、飼い主とその他の人が『へたくそな写真』を通じてポジティブな感情が広がるように心がけました」
#猫の写真へたくそ選手権
— イヨ (@iyoiyoiyo_14) 2019年2月20日
ひどい顔(笑) pic.twitter.com/b8uWllYsn9
日本では「天空の城ラピュタ」の放送に合わせた「バルス祭り」が有名ですが、張さんによると「○○の日」的な盛り上がりは日本ならではだそうです。
「もしかしたらそこまで興味がないかもしれないけど、その日だから参加する。そんな、ゆるい雰囲気と一体感は日本特有のものかもしれません。盛り上がっても、その日が過ぎればなくなってしまう。参加しやすいきっかけを作るのが大事で、その際は、キラキラし過ぎるものより、ヘタウマな方がいい」
木和田さんは「お祭り騒ぎは、参加しやすい要素として重要。常に何かツイートのネタを探している人に対して、より参加障壁が低いものを用意したい」と話します。
アメリカでは、トランプ大統領をはじめ政治家がツイッターを活用する場面が目立ちます。対して、日本では「今起きていること」への関心が高い傾向があるそうです。
「例えば電車の遅延、災害情報、台風、スポーツなど。今起きていることの裏で交わされる様々な会話を知りたい、語りたいと思っています。なので、特定のトピックスより、みんなが楽しめる動きが起きるように気を配っています」と張さん。
では、日本で社会問題が関心を呼ぶのはどのような時なのでしょう?
木和田さんは「ツイッターでは日々、カジュアルな話題から社会派な話題まで様々な議論が活発に行われています。そういった議論からムーブメントが生まれることも多いです。例えば待機児童問題などがあります」と話します。
ツイッターが日本でサービスが始まったのは2008年です。その後、スナップチャットやマストドンなど様々なSNSが生まれてきました。最近では「Tik Tok」から新たな動画の楽しみ方が広がっています。そんな中、ツイッターがこれから大事にしようとしているものは何なのでしょう?
張さんは「安全に会話できる場所」を用意することだと強調します。
「プラットフォームとして、あっちゃいけないことを定義する。そういう流れが現在、重要なポイントだと思っています。新しい機能は、使ったり使わなかったりするかもしれませんが、人が会話を続けることは変わらない。安全な環境で会話ができるようなモデレーションを提供できるか、一人の従業員として考えています」
ツイッター社は、今回のキャンペーンで期間限定絵文字や「#猫を殺処分から守る3ヶ条」といった取り組みを同時に展開しています。
時代とともに、その存在感や使われ方が変化してきたツイッター。「猫の日」のように、自らコミュニティーに関わり、交通整理をする場面は今後も増えていきそうです。