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女性の障害者が語る「性の悩み」夜の生活「イマジネーションの世界」
「障害者と性」。最近では、テレビ番組で乙武洋匡さんが男性障害者の性を語り、話題となりました。一方で、女性障害者の性について語られることはほとんどありませんでした。でも、女性障害者だって性欲はある、はず。車イスグループ「BEYOND GIRLS」の梅津絵里さん(41)と中嶋涼子さん(32)に話を聞きにいきました。
女性にまつわる性の問題は、見えにくいのが実情です。
もちろん、セックスへのモチベーションは人それぞれです。そして、声にださなくても、セックスが大切なコミュニケーションであることは間違いありません。
梅津さんと中嶋さんは、性について悩む障害者の女性たちに届いてほしいとの思いから、あえて率直な言葉で語ってくれました。2人の会話の中には、普段、耳にしない表現や単語が出てくるかもしれませんが、その表現自体が、2人のメッセージになっていると考えています。
――なぜ、顔や名前をだして性について語る、この取材に応じてくれたのでしょうか。 健常者、障害者問わず、なかなか話にくいテーマかなと思いまして……。
梅津絵里さん(以下梅津) これまで、障害をこう乗り越えたんだよという美談を求められることが多かったのですが、それだけじゃないのになあと思っていました。というのも、障害乗り越えた、終了!じゃなくて、その先、恋愛して、結婚して、出産して、子育てして……と人生は続くわけです。そうなると、日常の「性」は切り離せない話。障害者の中に同じように悩んでいる方もたくさんいらっしゃると思うので、障害者だってセックスできる、恋愛できる、子どもだって作れるんだよっていうことを知ってもらいたいと思いました。
――梅津さんは、障害を持つ前の25歳で結婚されています。障害を持った後の夫婦生活で困ったことはありましたか?
梅津 27歳で難病の「全身性エリテマトーデス」を発症して、それから6年間寝たきりの生活でした。ご飯を食べられるようになる、トイレに一人で行けるようになる……日常のことを一通りできるようになった後は、子どもが欲しかったので、夫とのセックスについても考えるようになりました。
――具体的に何かされたんですか?
梅津 リハビリの時に、四つん這いで体を支えるための筋トレをしました。バックの時にも使えるかも、なんて頭をよぎりながら(笑)。作業療法士の方が若い女性だったので、そういう話も素直にできました。もう、腕がぷるぷるで生まれたての子鹿みたいでしたよ(笑)。6年ぶりのセックスになるので、「ここまで回復したんだよ」って夫をびっくりさせたかったんです。まあ、実際にやると、夫も「本当に大丈夫なの?」とそれどころじゃなくて、結局、基本スタイルが1番いいねってなったんですけど(笑)。
――リハビリの担当者が若い女性じゃなかったら頼みづらかったですよね。
梅津 そうですね。私は子どもを望んでいたので「早く大好きな夫とセックスができるようになりたい」と相談できました。でも、そう言えない人の方が多いんでしょうね。「性の話は恥ずかしい」ということに加え、「セックスのリハビリなんて余裕あるんですね」ともっと重度の方を嫌な気持ちにさせてしまうかもしれない、と考慮する気持ちがあるのかもしれません。
でも、セックスじゃなくても、スキンシップって大事じゃないですか。病気をきっかけに、セックスができなくなってしまったという人もいます。だけど、私は諦めたくなかったんです。
中嶋涼子さん(以下中嶋) 私も絵里に会うまで、何でも話せる障害者の友達がいなかったので、健常の子としかこういう話をしたことがありませんでした。なので、ずっと「私だけがおかしいんだ」って思って悩んでいたんです。でも、絵里に話を聞いてもらって、「あ、これは車イスあるあるなんだ」ってほっとした。私たちが、性の話をすることで救われる子もいるのかなあって思います。
――“車イスあるある”とは?
中嶋 私は下半身の感覚がないから、尿もれしやすいんです。まわりに障害者の友達がいなかった時は、健常の子に相談すると「腰に枕をいれると我慢できるよ」って言われてやってみたんですけど、うまくいかない。絵里に相談すると「私も病気のあとで括約筋が弱まったので不安があるよ」って言われて、「あ、これは筋肉の話なんだな」って気づきました。脊髄損傷をしていると、そういう子は多いみたいです。
梅津 「防水シートをベットに敷いてやるといいよ」ってアドバイスしたりなんかしてね。バリアフリーのホテル情報をお互いにシェアすることもあります。
――下半身の筋肉が弱っているということなんですが、感じたり、イクという感覚はあるのでしょうか?
梅津 私は下半身の感覚が鈍くあるんですけど、涼子は全くない。だから、「えっちってどうしてるの?」って聞いたこともありました。電話で3時間くらいしたよね、その話(笑)
中嶋 そうなんです。なにしろ感覚がないので、お腹にあたるのや、入るのがわかる時もあれば、実はわからない時もあります。私は9歳から車イスなので、障害を持ってからのセックスしかしたことないんですよ。なので、もうイマジネーションの世界。たぶん、こんな気持ちよさな気がする、みたいな(笑)。でも、好きな人とのセックスは本当に気持ちいいですよ。
――涼子さんは今、パートナーはいるんですか?
中嶋 今は、仕事が忙しくって……。どなたかステキな人がいればとは思っています。これまで、出会い系アプリ「ティンダー」を使って、男の子と出会ったりしていましたね。最初は車イスってことを伏せてやりとりして、途中であかすようにしてました。
――相手の反応は?
中嶋 ひかれることもあるけど、それでもいいって言ってくれる人もいる。だんだん、車イスの扱いもわかるようになってくれて、うまく付き合えることもありました。勇気をもってやってみてよかった。おかげで、男性とデートすることにも慣れてきました。
梅津 涼子は本当にアクティブ。見てるこっちも元気がもらえる。
中嶋 私の周りの障害者の方は、既婚か独身かしかいなくて「恋人」とどうやって出会うのかっていうのが大きな課題だったんです(笑)。なので、出会い系アプリのおかげで出会いの場が広がりました。私がこういう発言をすることで、「私もやってみたい!」という声をいただいたので、積極的に話していこうと最近は思っています。
梅津 障害者も恋愛もセックスもできるし、家庭を持って子作りもできる。今の状況に絶望をせずに、未来を夢見ていいんだって知って欲しいですね。
梅津絵里(うめづ・えり)1977年生まれ。難病の全身性エリテマトーデス(SLE)などによる両上下肢まひ。27歳で難病を発症し、6年間寝たきりの生活に。34歳で退院、自宅療養。2017年にタレント活動を開始。18年にリーダーの小澤綾子さん、中嶋涼子さんと3人で車イスチャレンジユニット「BEYOND GIRLS」を結成、イベント出演、講演、歌、動画配信などマルチに活動している。
中嶋涼子(なかじま・りょうこ)1986年生まれ。9歳の時に病気のため下半身不随になり、車イスの生活に。高校卒業後アメリカに留学。帰国後はFOXなどで日本語字幕制作、映像編集に携わる。現在は、車イスのインフルエンサーとして活動。「BEYOND GIRLS」で、動画配信活動に力を入れている。
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