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「あんまり頑張らないで、でもへこたれないで」 樹木希林さん名言集
樹木希林さんの言葉を集めた書籍が28日に発売されます。
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樹木希林さんの言葉を集めた書籍が28日に発売されます。
「人間はあした地球が滅ぶとわかっていても、きょうリンゴの木を植えなきゃならないものなのよ。そういうふうに考えて生きていきましょうよ」。乳がんが見つかった後の生活と心境について問われた樹木希林さんの言葉です。テレビや雑誌などに登場した120の言葉を集めた書籍「樹木希林 120の遺言」(宝島社)が28日に発売されます。その言葉の魅力について担当者に聞きました。
昨年9月に75歳で亡くなった樹木さん。宝島社は翌月29日、生前の言葉を集めた新聞広告を出しました。
朝日新聞に掲載された広告では、「あとは、じぶんで考えてよ」というキャッチコピーとともに、このような言葉が載っています。
広告を出した理由について、宝島社の広報担当者は「過去に企業広告にご出演いただいたご縁もあり、追悼の意を込めてご出演いただきました」と話します。
この追悼広告は新聞やネットニュースなどでも取り上げられて話題に。宝島社には「語録を出版してほしい」といった要望が寄せられたそうです。
そうした声を受けて出版されるのが「樹木希林 120の遺言」(税抜き1200円)です。
テレビや新聞、雑誌やフリーペーパーに登場した樹木さんの言葉の中から120を選んでまとめた内容で、装丁は鈴木成一さん。樹木さんと親交のあった養老孟司さんの寄稿も掲載されています。
載っている言葉の一例は以下の通りです。
どのようにして樹木さんの言葉を選んだのか? 担当した宝島社第一書籍局第四編集部の編集長・宮川亨さんに話を聞きました。
――この本を企画した経緯を教えてください
弊社の企業広告にご出演いただいたことがご縁となって実現しました。2016年1月に発表した、ジョン・エヴァレット・ミレイの「オフィーリア」をモチーフにした企業広告が大きな反響を呼んだこともあり、カバーはこの写真を使用しています。
もともと「ユニークな女優さんだな」と思っていましたが、がんを告白してからも仕事を続ける姿を見て、その「人生哲学」を知りたいと思っていました。
――言葉の数を「120」にした理由は
120という数字をあらかじめ決めていたわけではありません。言葉を厳選していくなかで、樹木さんのメッセージを必要十分に書籍という形で表現するには、200でも100でも150でもなく、120個の言葉が適切だと考えたからです。
――どのようにして選んだのでしょうか
樹木さんはあらゆるメディアで取材やインタビューを受けていますが、新聞と雑誌は確認できる限りすべて、テレビ映像も入手できる限りのものを集めました。
一般向けに販売されていないフリーペーパーや、広告業界向け専門誌のインタビューなどにも目を通しました。女性編集者と協議しながら約300個に絞り、さらにそこから120個を選出しました。
――選ぶにあたって工夫した点は
仕事、人付き合い、恋愛、家族、夫婦、子育てなど、人生という長い時間軸におけるあらゆる場面で、老若男女問わず参考にできる言葉を選びました。
数ある言葉のなかでも、樹木さんの人生観の本質的な部分が伝わるメッセージを選んだつもりです。
言葉の選定以外では、本文のデザイン、言葉の書体や見せ方にこだわりました。樹木さんのメッセージがひと目でスッと心に入ってくるイメージを追求し、ページの余白も大切にしながら文字のレイアウトを組みました。
――収録されている中で最も古いメッセージは
内田裕也さんと電撃結婚後すぐに、夫婦で雑誌のインタビューを受けた際の言葉です。「週刊明星」(集英社)の1973年10月7日号に掲載されたもので、以下の通りです。
『ユーヤさんが人のことどうこういうのを聞いたことがない。オレはオレ、テメエはテメエで勝手にやれってなもんでしょう。人の悪口を言ったことがないのよ。そこが好き。男はそれでなくちゃね』
――編集者として最も印象に残ったメッセージは
『子供の時に他人と比較する無意味さを知ったので、受賞してもしなくても、何とも思わない』です。
これは「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」で日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を樹木さんが獲得した時のことを振り返った言葉です。
人生における不幸の始まりは、「人と比較すること」なのではないかと思わせてくれます。
10代、20代の若い人は10回読んでもピンとこないかもしれません。この言葉を軸にして、樹木さんの他の言葉を見ていくと、「人は人、自分は自分」という樹木さんのスタンスが見えてきます。
人と比較して「勝った、負けた」という優劣だけで物事を判断するから不幸を感じるのだなと。樹木さんがすごいのは、それを子供の時にわかっていたということですね。
――「こんな風に読んでほしい」という点があれば
「大人のための人生訓」として読んでいただきたいです。
日常生活や仕事場で人生を教えてくれるような人や言葉に出会うことは、ありそうでなかなかないものです。
そして、人はみな自分のことに一生懸命です。人の悩みや生きづらさにかかずらっている時間はありません。
「なんとなーく、人生すっきりしないな」と思っている人たちはぜひ、希林さんの言葉に目を通してみてください。「生きるってこういうことなのか」と、心なしか肩の力が抜けるのではないでしょうか。
――編集をしていて気づいたことがあるそうですね
「人生が思い通りにいかない」ことは当たり前だと再認識できました。
「なるようにしかならない」というある種の諦観。しかし、それは手を抜くとか人任せにするとかいうことではなく、「長い人生、思い通りにいかないことも多いけど、それとどう折り合いをつけながら自分の頭で考えて生きていくか」だと、樹木さんに言われている気がしました。
人生とは、幸せとは、大人になるとは、ということを考えるヒントになればと思います。
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