連載
#30 夜廻り猫
「値踏み」された48歳が父からもらった言葉 夜廻り猫が描く婚活
48歳で始めた婚活。デートを申し込んできた男性は、ずっと仏頂面で生返事でしたが、きれいな店員さんに声をかけられると態度が一変して……。「ハガネの女」「カンナさーん!」などで知られ、ツイッターで「夜廻り猫」を発表してきた漫画家の深谷かほるさんが「婚活」を描きました。
「むっ 涙の匂い…!」。きょうも街を夜廻り中の猫の遠藤平蔵は、ひとりワインを開けようとしている女性に声をかけます。
「もし そこなおまいさん泣いておるな? 心で」
女性は48歳、独身で父と2人暮らしです。
婚活を始め、デートを申し込んできた人と会いましたが、男性はずっと貧乏揺すりをしていて会話は盛り上がりません。
しかし、カフェの綺麗なウェートレスから「こちら、落としましたか?」と声をかけられると、男性の表情がぱぁっと華やぎます。
女性は「正直よね」と腹を立てながら家に帰りましたが、デート用の装いを見た父から「そういう服を着ると、女優さんのようだな」と声をかけられたのです。
「父は私を綺麗と思ってるのよ 切ない」と苦笑します。
ただ、遠藤たちとワインを傾けながら「今年も1人でも、楽しくやろうと思います」とにっこり。遠藤も「いいと思います」と応援するのでした。
作者の深谷かほるさんは「値踏みされるとか、性の対象として点数をつけられることは、時に、あります。年をとってもあります」と指摘します。
コミュニケーションをとろうとせず、見た目だけで判断し、ころっと態度を変える偏った見方。
父に「綺麗」と言ってもらった女性は、「1人でも楽しくやる」と気持ちを切り替えます。
深谷さんは「こんな失礼な『値踏み』で高い点数をとってもいいことはありません。
ふりかかってしまった時には、相手にしないで済ませたいものですね」と話しています。
【マンガ「夜廻り猫」】
猫の遠藤平蔵が、心で泣いている人や動物たちの匂いをキャッチし、話を聞くマンガ「夜廻(まわ)り猫」。
泣いているひとたちは、病気を抱えていたり、離婚したばかりだったり、新しい家族にどう溶け込んでいいか分からなかったり、幸せを分けてあげられないと悩んでいたり…。
そんな悩みに、遠藤たちはそっと寄り添います。
遠藤とともに夜廻りするのは、片目の子猫「重郎」。姑獲鳥(こかくちょう)に襲われ、けがをしていたところを遠藤たちが助けました。
ツイッター上では、「遠藤、自分のところにも来てほしい」といった声が寄せられ、人気が広がっています。
◇
深谷かほる(ふかや・かおる) 漫画家。1962年、福島生まれ。代表作に「ハガネの女」「エデンの東北」など。2015年10月から、ツイッター(@fukaya91)で漫画「夜廻り猫」を発表し始めた。第21回手塚治虫文化賞・短編賞を受けた。単行本4巻(講談社)が7月23日に発売された。
1/27枚