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「平成元年のテレビ欄」を高校生が見たら…「今と一緒すぎて吹いた」
一年の締めくくりである大晦日の新聞のテレビ欄には、その年の出来事や流行が表れます。平成の真ん中くらい「平成13年生まれ」で現在、高校生の私が大晦日のテレビ欄を振り返ってみたら……。ノストラダムス祭りに首をかしげ、「DA PUMP」の紅白初出場におののき、ビートたけしさんの出まくりに驚愕。そこから見えたのは「テレビ、全然変わってないじゃん」でした。(高校生記者・永石真理愛)
私は現在、高校3年生。お嬢様芸人の、たかまつななさんが運営する「笑下村塾」の高校生記者として活動しています。
平成元年はバブル真っ只中。
私は平成13年生まれ、平成元年はまだ生まれていません。
バブリー生活を謳歌していた私の母は、「小宮悦子キャスター懐かしい!」とテレビ欄を見て当時を振り返り、目を輝かせていました。
登美丘高校ダンス部のバブリーダンスが有名となり、ダンシングヒーローがリバイバルヒットしたのは記憶に新しいですが、荻野目洋子さんの名前が、リアルに紅白出演者の一覧にあることにバブルを感じます。
驚いたのは、18時から日テレと、テレ朝で同じ時間帯にビートたけしさんを起用していること。この頃のテレビ局の戦略は今よりゆるかったのかな?
そして、あらためて当時、どんだけビートたけしさんが支持されていたのか。それから30年経った今でも変わらぬ影響力……。
たけしさんってすごい。
私が生まれる3年前。
この年は翌年にノストラダムスの大予言を控えた年でした。
テレ朝でも21時から「ビートたけしの世紀末バトルノストラダムスの大予言」という特番が組まれています。
なんといってもこの年は、「U・S・A」で一躍、テレビで引っ張りだこになったDA PUMPの紅白初出場につきます。
ぶっちゃけ、USAが話題になるまでDA PUMPというグループ名さえ聞いたことがなかった私にとっては、新グループが今年デビューしたように感じられます。
なので、過去の紅白出場者一覧にある「DA PUMP」の文字には違和感を覚えてしまいました。
当時私は7歳の小学2年生。エド・はるみさんの「グ〜!」にどハマりして小学校で毎日のように友達とネタを真似していました。
しかしながら、テレビ欄にはエド・はるみさんは見当たりません。
びっくりしたのは「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!」。大晦日の「ガキ使」がこんなに長寿番組であったとは。
当時は大晦日のテレビ番組といえば、紅白歌合戦と格闘技、というのが定番であったそうですが、いつの間にか格闘技がなくなり、ガキ使は定番化されていくという、番組に長寿と短命があるのは不思議な気がします。
「来年のことをいうと鬼が笑う」ということわざのように、年末年始は「笑い」が日本人には馴染みがあるのかもしれません(ちょっと違うか?)。
局ごとに見ると多少の変化はありますが、全体を見てみるとあまり出演者も番組の内容も変わっていないことがわかります。
特にビートたけしさんは毎年のように大晦日のテレビに登場しています。ビートたけしの文字をテレビ欄に見ない年の方が稀です。
ここまで毎年大晦日の番組に出演していると、大晦日のレジェンドと言っても過言ではありません。
他にもダウンタウンや明石家さんまさん、ナインティナインなどの第一線で活躍する人は昔も今も変わりません。
紅白も北島三郎さん、石川さゆりさんなど演歌の大御所、今は解散してしまったSMAPやAKB48などのアイドルグループも、お決まりのように、ほぼ毎年出場していました。
番組の内容も同じことが言えます。
紅白は平成元年以前からありますが、ガキ使や格闘技が定番化していきました。
「これが今年の大晦日のテレビ欄だよ」と平成元年の番組表を見せられても、違和感がないでしょう。
物心ついた頃から大晦日にガキ使を見るのが習慣の、ガキ使っ子の私にとっては、かろうじて元年にはまだガキ使がないことに時代の差を感じるくらいです。
結論から言うと「平成の移り変わりを振り返るためにテレビ欄を見たのにあんまり変わってない!」。
もちろん、全部が全部一緒なわけではないです。しかし、新聞の縮刷版を抱えながら平成元年から今年までを振り返ったにしては、番組のメンツもコンテンツも変化が少ないように思われます。
近年、ネットの普及により若年層がYoutubeやInstagramといった他のエンタメツールに分散し、テレビを見る人が減少しています。その上、今はネットでテレビが見られます。
生まれた時からネットが身近にあった若年層がテレビ動画を見る手段としてネットに流れてしまうのも無理はないでしょう。
結局、ネットが普及する前からテレビに慣れ親しんだ視聴者層が、今もテレビを見ている。確実に数字が取れる方に流れてしまっているテレビ局の姿が見えてきます。
紅白について言えば、友だちと話していて「演歌興味ないから、紅白が演歌になったらガキ使にチャンネルを変える」という声をよく聞きます。
私も、毎年の大晦日は、ガキ使は録画バッチリの状態で、オンタイムでは紅白が演歌になったらガキ使を観て自分の好きそうな歌手になったらまた紅白に戻るという、チャンネル移動をしています。
演歌の枠って必要なの? と疑問に思ってしまいますが、老若男女に向けた番組である紅白にとって、外せない理由もわかる気がします。
でも、若年層の声を無視し続けていたら、視聴率は上がることはないはず。実際、紅白の視聴率(関東地区)は、平成元年の47.0%が、平成29年には2部が39.4%まで下がっています。
そもそもテレビって誰のためのどういうものなのでしょうか?
昔は、今ほどエンタメが充実していなかったので、みんな、テレビに娯楽を求めていました。と言うより、テレビしかなかったのです。
1963年(昭和38年)は、北島三郎さんが紅白に初出場した年です。この年の紅白の視聴率は81.4%。今では目を疑うような数字です。
現在、人々の娯楽は分散しています。巨人対阪神の次の日、クラスで起きていただろうあの盛り上がりはもう存在しないのです。
ある人はyoutube、ある人はAbemaTVを観るのでそれぞれが得た感動を伝えようとしても相手には通じません。
今年の大晦日、あなたはどう過ごしますか?
ネットからの情報が溢れて、選択肢も広がって好きなものが簡単に入手できる時代、大晦日は「簡単に合理的に楽しむ方法」で満たされています。
バブルの時は、景気はよかったかもしれませんが、人々は限られた情報の中から、楽しそうなことを必死で探し出し、全力で楽しんでいたような気がします。
その全力で楽しむ姿こそが、「笑って年越し」なのかなとも思います。
楽しむための対象が氾濫する「平成最後の大晦日」に、本当の意味で思い出に残る時間を過ごすことは、バブルの時代よりも難しくなってきているのかもしれません。
両親が目を輝かせてバブル時代の話をするように、私も全力で今の時代を楽しみたい。大晦日のテレビ欄をタイムスリップしながら、自分の生まれた平成に誇りを持ちたい気持ちになってしまいました。
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