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合コン累計2500回以上 「乳がんステージ4」でも行きまくった理由
進行性の乳がんと診断された後、自身の体験を漫画にして、夢だったマンガ本を出した女性がいます。神奈川県鎌倉市の白戸ミフルさん(40)です。『乳がんステージ4だった私が、それでも合コンに行きまくって救われた話』(キノブックス)は、突然乳がんを告げられた、自身のことを赤裸々に描いています。
白戸さんは、化粧品関係の仕事をしたり、ライターとしても活動したりしています。そして、とにかく合コンが大好きで、累計2500回以上参加してきたほど。「高校生からカラオケボックスで、合コンをしていました。一番はまったのは20代で、週3回以上はあり、1日2回の『はしご』もありました。当時は、ウェブ系の広告会社にいて、土日はゴルフをしたり、パーティーをしたりして、パリピっぽい生活を送っていました」
合コンの楽しさは、恋人を見つけることだけに限らないそうです。「楽しいのは女子会議ですね。合コンの最中に、トイレに一人ずつ行き、ターゲットを誰にするか決めて、その後どうなるか『こんな連絡がきたよ』といったことを語ることが、楽しかったんですよ。逆にデートとかする暇がありませんでした(笑)」
そんな白戸さんは、35歳の時に胸にしこりのようなものを感じました。
「もしかしたら乳がんかもしれないと、思いました。不摂生な生活を送っていましたが、健康診断も異常がなかったので、『ありえない』と思いつつ、とにかく怖かったです」
その3カ月後、会社の健康診断がきっかけで乳がんが発覚。脇や骨にも転移していて、「ステージ4」と宣告されました。
「考えないようにしようと思いながら、ずっと考えていたんですけど、病名が宣告されてからは、絶望的になりました。全然がんについての知見がなかったので、『転移していたら、死んじゃうんじゃないの』って思いました。ショックすぎて情緒不安定でした」
その後、抗がん剤治療などを受けました。同僚らに話すこともできず、泣きながら眠る日もあったそうです。
「髪の毛がベッタリと抜けて、まるでのりのようでした。普段は気づかなかったけど、髪の量ってこんなにあったんだと思いました。ものすごい量が抜けたのに意外となくならなくて、でも、2カ月近くで完全に抜けてしまいましたね」
それでも前向きに病気と向き合いました。ウィッグを楽しんだり、野菜中心の生活で肌がすべすべになっていく様子を楽しんだり。とにかくポジティブです。
「最初はショックでしたけど、髪の毛が抜けきってしまうと、逆に気持ちよくなってしまいました。この状況を楽しまないと逆に損だと思いました。私の好きな言葉が「コロンブスの卵」(発想の転換)「一粒で二度おいしい」。つらいことを楽しくするをモットーとしてきました。子どものころから同時に色々とするのが好きでした。時間を有効活用したい気持ちがあるんでしょうね」
小学生の時からの憧れだった漫画家を目指す気持ちも強くなったそうです。同じ乳がん患者として励まされていたタレントの小林麻央さんが亡くなったこともあり、「自分でもできること」を考え、自分の体験を描くことを決意。マンガ教室に通い始めたそうです。そして、夢をかなえました。
「がんになった人は皆が死んでしまうとか、治療もつらいとか、マイナスイメージばかりがある。そうしたものを払拭(ふっしょく)したいと思いました」
「がんである人がカミングアウトしやすい世の中になればいいなと思う。私自身なかなか言い出せなかったし、勇気を出して告白しても、ドン引きされて、傷ついていました」
「過剰に気を使われたり、心配されたりするのも、ありがたいことなんですけど、普通に接してほしいと思う。私が病気を経験していなかったら、こんな風に考えるようになれたかは難しいかも思うんですけど、今はできると思う。がんへの理解が進んで、もっとカジュアルに言えるような時代がくれば良いなと思っています」
現在は、3カ月に1度のペースで通院しているという白戸さん。再発は今のところなく、根治に向かっているそうです。最後のページにはこんなメッセージが添えられています。
「がん治療も気持ち一つで楽しく乗り越えることができる!」
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