連載
#3 ネットの話題フカボリ
「やらなきゃ」ばかりで「やりたい」が迷子に 描いた大学院生に聞く
「やらなきゃ」を「やりたい」に切り替えられない様子を描いた漫画が、ネット上で注目を集めています。
いい中学に入るため勉強しなきゃ。いい高校に入るため勉強しなきゃ。いい大学に入るため勉強しなきゃ……。でも、大学に入った今思うことは「自分は何がやりたいんだろう」。それまでの「やらなきゃ」を「やりたい」に切り替えられない様子を描いた漫画が、ネット上で注目を集めています。描いたのは教育における主体性について研究している大学院生です。漫画に込めた思いを聞きました。
「教育ってなんだろう……?」
— Marina (@marina_mimicry) 2018年6月13日
って思った時のまんが。#教育 #漫画 pic.twitter.com/TtzPKdDRnX
6月中旬、「『教育ってなんだろう……?』って思った時のまんが」という文言とともにツイッター投稿された4ページの漫画。
成績優秀なA子が悩みを打ち明ける場面から始まります。
この漫画に対して、「あー、わかるわー」「今ほんとこの状態で助けて欲しい」といったコメントが寄せられ、リツイートは2万、いいねは4万を超えています。
作者は、東京学芸大学大学院教育学研究科で学んでいるMarinaさん。ふだんから、記憶を定着させるために学んだことや気づいたことを漫画に描いてきたそうです。
「これまでは自分のメモとして描いていましたが、最近ツイッターを始めて、描くためのiPad Proも購入したので投稿しました」
A子とのやりとりは、実際にあった出来事をもとに、これまで出会ってきた「たくさんのA子」のことも含めて、まとめて描いたそうです。
「A子のような思いを抱えている人が身近にたくさんいたんです。中には『自分が自分だと認識できない』と話す人もいました。漫画に描くにあたって相当軽くしているところもあります」
主体性や創造性、過剰適応について研究しているMarinaさん。
大学時代には、教員の提示した課題を生徒が受け取るだけではなく、自分自身の力で課題を創りだすためにはどうしたらいいかを研究しました。
描いたMarinaさん自身、A子さんのように感じたことはあったのでしょうか?
「うーん、どうでしょう。ただ、私はやらされる勉強が本当に嫌いで、学校の勉強もとても苦手でした。塾をすべてやめて、つまらないまま勉強することをやめて、自分が面白いと思えるような勉強方法を自分でつくれるようになって、ようやく成績が上がりました。私なりに、やらなきゃいけない環境の中で、自分のやりたい気持ちを大切にしていたのだと思います」
今回の漫画を描くにあたって、特別なメッセージを込めることなく、自分が見聞きした現状を描くことで問題提起になればと考えたそうです。
「対面とは違いますが、ツイッター上で多くの人とつながって、たくさんのコメントをいただきました。研究に携わる者として、ポジティブなコメントもネガテイブなコメントもすべて大事な意見として生かしていきたいです」
共感の声やアドバイス、教育について考えさせられる意見など、寄せられたコメントを4象限のチャートにしてツイートしました。
「誰かのコメントが、誰かにとって大切なことなんじゃないかと思ったんです。共感してくれた人や悩んでいる人に届けばいいなと思ってまとめました」
話題になったことについては、こう話します。
「やりたいことが見つからないから『A子はダメだ』というわけではありません。漫画を読んで『ちょっと変えてみよう』『このままでいいんだ』とか、何か感じたことを大切にしてもらえたら。そして自分のことや教育について考えるきっかけになればうれしいです」
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