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ハッピーターン包み紙「超大事な役目」 あえて密封しない理由
ロングセラーの定番お菓子には、味はもちろんパッケージなど、色んな「愛され要素」があります。中でも包み紙は、食べる直前まで手に触れ、食べた後もいじられる存在。亀田製菓のハッピーターンは、包み紙が目の前で「小さな山」になる光景まで幸せを感じてしまいます。あのつるっとした肌触りだけで思い出すのは不二家のミルキーの甘い味。六花亭のマルセイバターサンドは意を決して包み紙の「改革」を実行しました。定番お菓子の包み紙について調べてみました。
「包み紙について面と向かって聞かれたのは初めてです」
少し戸惑う亀田製菓の平野和雄さんでしたが、いざ話始めると「包み紙も含めてハッピーターンの魅力であることは確かです」と、言葉に熱がこもってきます。
社員食堂ではハッピーターンを使ったメニューもあるそう。ハッピーターン、やはり、社内でも特別な存在のようです。
平野さんによると、両端をひねる包み方は「キャンディー包装」と呼ばれています。
そして、それはハッピーターンのおいしさを表現する上でも欠かせない存在なのだそうです。
「この包み紙がないと、ばらつきが出ないんです」
ばらつき?
「実は、一つ一つのハッピーターンは、濃い味と薄い味の微妙な違いがあるんです」
味って一緒の方がいいのでは?
「そう思いますよね。でも違うんです。ずっと同じ味を食べると、やっぱり飽きてきちゃうんですよね。それが、たまに濃い味が出ると、リズムが生まれる」
いわゆる「当たり」ですね。
「はい、それもお菓子の魅力になっているんです。味を均一にしようと思えば、生地に練り込んじゃえばいいんですけど、それだとダメなんです」
密封タイプだと、パウダーが必要以上に落ちてしまうなど、ハッピーターンにっとて大事なばらつきを残したまま包装することが難しく、パウダーと包み紙がほどよく密着できるキャンディー包装ならではの構造が必要なのだそうです。
ところで、この包み紙、正式名称はあるのでしょうか?
「うーん、考えたことないですね……。」
ハッピー包み紙?
「ですかねぇ……。ただ、包み紙への思い入れは、社内の人間もすごく持っています」
そんなハッピーターンの伝統を体現する包み紙ですが、商品自体は進化もしています。
「250%パウダーのような、コンビニ向けの商品は、キャンディー包装ではありません。指についちゃう感覚も味わってもらいたいので」
次は、同じく密封していないお菓子の代表格、不二家のミルキーです。
ママの味で有名なミルキーも、両端をひねった包み方でお馴染みです。
あの包み紙の独特な手触りは、触るだけでミルキーだとわかるほどの存在感があります。
不二家では「ツイスト包装(ひねり包装)」と呼ばれ、1951年のミルキー発売当初から変わっていないそうです。
ミルキーの包み紙にもちゃんと理由がありました。
ソフトキャンディーのため変形しやすく、 ツイスト包装はミルキーの丸い形を保つ役割があるそうです。
両端を引っ張るだけで簡単に開けることができるため、握力の弱い子どもでも大丈夫という特徴もあります。まさにママの味です。
一方、ミルキーのハードキャンディーはピロー包装(通常の袋の個装)です。
これは、ある程度、硬さがあるため、形が崩れないから。
普通のミルキーのツイスト包装は変える予定はないそうです。
通常の包装より手間がかかるそうですが、不二家としても、包み紙がミルキーのトレードマークにもなっていることを大切にしているそうです。
包み紙を変えたお菓子もあります。六花亭のマルセイバターサンドです。
1977年に生まれた北海道を代表するお菓子、マルセイバターサンドは、長くフィルムを折りたたむ方式でした。
丁寧に折られたフィルムを開ける時間もお菓子の魅力の一つでしたが、異物混入を防ぐ目的で2012年1月から密封式に変更になりました。
包み方が変わったとはいえ、味は一緒。最近では、マルセイシリーズとして、キャラメルやビスケットも生まれています。
ロゴは昔から変わらない風格のあるデザインのまま。
濃厚な味わいは今も変わらぬ北海道の人気商品になっています。
包み紙にも、並々ならぬ思い入れがあるロングセラー商品。その一方で時代に合わせた変化にも、きちんと対応していました。
亀田製菓の平野さんは、ハッピーターンについて次のように語ります。
「今だったら『ハッピーターン』ていう名前、通ってないと思います。何味がわかりませんからね。でも、発売から40年以上経ってハッピーターンという存在そのものが味になっています。ロングセラーでも進化は必要です。守るものと、変化するもの。フレキシブルさを大事にした結果、今のような愛される存在になったのだと思います」
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