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「鳥谷さまの守備、いい筋肉の動き」アニソングランプリ歌手の野球愛
私、普段は新聞記者としてプロ野球を担当しています。ある日、アニソン歌手の河野万里奈さんに自分のツイッターがフォローされていることに気づきました。実は河野さん、ガチの野球ファン。ひいきの選手は「鳥谷さま」です。「すてきな選手が各球団に散らばっていく。だから全球団を推さざるを得なくなりました」。勝敗とは別次元で楽しむ河野さんから、野球の奥深さを教えてもらいました。(朝日新聞スポーツ部記者・井上翔太)
実際、河野さんの話を聞けば聞くほど、本物の「野球DD」ぶりが伝わってきます。「DD」とは「誰でも大好き」という意味のアイドル用語。
日本ハムに入団した清宮選手のオリジナルソングも、目の前で歌ってもらいました。
――清宮幸太郎選手(日本ハム)の自作の応援歌。どうやって作るのですか。
「清宮選手のインタビュー記事や動画を見て、私が『好き』と思う側面を書き出して、歌詞にしています」
「例えば最初の『神様に愛されるように』は、早稲田実業時代の選手宣誓から引用しました」
「現代っ子の感じを出すために、ラップを入れたり、人柄からメロディーのイメージを膨らませたり……。3日間ほどで完成したと思います」
――他の選手の応援歌もあるのですか。
「最初に作ったのは、大和選手(DeNA)の歌でした。『なんで阪神からFA移籍しちゃうの?』っていうどうしようもない気持ちになって……」
「何となく、スタジオで悲しい響きのギターコードを探していたら、できちゃいました」
「題して『別れても好きな大和(おとこ)』です」
――「野球DD」になったきっかけは?
「鳥谷さま(阪神)です」
「私は言葉でのコミュニケーションが苦手で、ガス会社に電話することができなかったせいで、ガスを止められたこともあるぐらい」
「そんな自分を鳥谷さまに重ねて『鳥谷様は無口だけど、結果を出すことでファンを納得させている。周りとのコミュニケーションも野球で取っているんだ』と。それから『この人についていこう』と思ったんです」
――甲子園には、よく行くのですか?
「野球は、もともと身近な存在でした。祖母の家が甲子園の近くだったので、夏休みは家族で高校野球を見に行ってました」
「日常では当たり前に野球があって、毎年繰り返しているうちに、鳥谷さまの他にもすてきな選手が現れてきた」
「そういう選手たちが各球団に散らばっていくので、すべての球団を推さざるを得なくなりました」
――野球で好きなプレーは?
「守備が好きです」
「私は中学のとき、ソフト部でセンターを守っていたんですけど、フライが捕れなさすぎてライトにコンバートされたぐらい苦手。自分にはできないことです」
――外野席で応援するタイプでは、ないですね。
「内野席で黙々と見ることが多いです」
「球場には、例えばオーケストラのコンサートのような『職人芸術を見る場』の気持ちで行っています。『鳥谷さまの今の守備、いい筋肉の動きだよね』とか」
「負けても芸術を見られたら幸せ。戦ったことで誰かが傷つくことが、嫌なのかもしれません」
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