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音楽でメシを食うのは難しいのか? 僕がギター型スプーンを使う理由

あるロックバンドのメンバーが投稿した画像が、ツイッター上で注目を集めています。

山岸賢介さん愛用のギター型スプーン
山岸賢介さん愛用のギター型スプーン 出典: 山岸さん提供

目次

【ネットの話題、ファクトチェック】

 あるロックバンドのメンバーが投稿した画像が、ツイッター上で注目を集めています。写っているのはギターのような形状のスプーン。「音楽でメシを食っていこう」とプレゼントされたものですが、あまりの使いづらさに「音楽でメシを食うのは難しいってことか」と思い立ち、投稿したそうです。「でも、ぼくはこれを使う。これでメシを食う」と話す彼に、詳しく話を聞きました。

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「ウラニーノ」のボーカルとギターを担当している山岸賢介さん
「ウラニーノ」のボーカルとギターを担当している山岸賢介さん 出典: マザー・エンタープライズ提供

37歳の誕生日プレゼント


 1月中旬にツイッター投稿された画像。そこには、テーブルの上に置かれたギター型スプーンが写っており、こんな文言が添えられています。

 去年の誕生日、傷彦さんが「音楽でメシを食っていこう」と言ってギター型のスプーンをくれた。

 愛用しているのですが、非常に使いづらい。食べづらい。

 「音楽でメシを食うのは難しい」というメッセージも込められているのではないかと思うほど(笑)

 でもぼくはこれを使う。これでメシを食う。

「ウラニーノ」山岸賢介さん


 投稿主はロックバンド「ウラニーノ」のボーカルとギターを担当している山岸賢介さん(37)です。

 ウラニーノは2001年にさいたま市大宮区を拠点に活動を開始。2009年7月にメジャーデビューミニアルバム「ランドリーとワールド」(エピックレコード)を発売しました。

 2010年秋公開の映画「遠くの空」では主題歌を担当し、山岸さんは役者としても出演。2013年に発表した曲「音楽はあるか」は、同じ年に公開された映画「ベイビー大丈夫かっ BEATCHILD1987」の主題歌に選ばれました。

 現在のメンバーは、山岸さんとドラムの小倉範彦さん(36)の2人。メッセージ性の強いシリアスな楽曲が多い割に、ライブではコミックバンド顔負けの演出を行うこともあり、親しみやすくも濃いキャラクターが特徴です。

「ウラニーノ」の山岸賢介さん(左)と小倉範彦さん(右)
「ウラニーノ」の山岸賢介さん(左)と小倉範彦さん(右) 出典: マザー・エンタープライズ提供

自分と音楽の関係に似てるんじゃないか


 山岸さんがスプーンをもらったのは昨年8月。

 一緒にツアーを回っていたバンド「ザ・キャプテンズ」の傷彦さんが、自身の兄が経営する雑貨店で購入し、誕生日プレゼントとしてくれたそうです。

 「『音楽で食っていこうぜ』と一筆添えられていました。第一印象は『使い勝手悪そうだね』でしたが、それを選んだ傷彦さんのセンスはさすがだなと」

 他のスプーンと一緒に日常使いをしている山岸さん。先日ふと、こう思ってツイッター投稿したそうです。

 「普通の方が食べやすいのに、あえてこれで食べてる。これって、今の自分と音楽の関係に似ているんじゃないかって」

 山岸さんはバンド活動を続けながら、週4日ほど病院の医療スタッフとして働いています。

 「もともと患者だったんですが、シンガーでもある院長から『うちで働かないか』と誘っていただきました。現在の収入は、バンドと医療事務で半々ぐらいです」

「ウラニーノ」のドラム・小倉範彦さん(左)と、ギター型スプーンをプレゼントしてくれた「ザ・キャプテンズ」の傷彦さん(右)
「ウラニーノ」のドラム・小倉範彦さん(左)と、ギター型スプーンをプレゼントしてくれた「ザ・キャプテンズ」の傷彦さん(右) 出典: マザー・エンタープライズ提供

このスプーンで何でも食べられるように


 20代のころ、「商業的に成功して音楽でメシを食っていく」という気持ちで音楽活動を始めた山岸さん。今もその思いは変わらないといいます。

 「時代が時代ですし、いろんなかたちで音楽を続けることはできます。でも、若い頃と同じ気持ちを今も持ち続けています。なんとか稼いで生きていける、そんな生活に慣れちゃいけないって」

 メンバーが脱退したり、のどを痛めたり。プロデューサーだった佐久間正英さんが亡くなった時など、何度か転機はありましたが、「音楽をやめようと思ったことはない」と言います。

 「ライブをやるとお客さんが来てくれて、『良かったよ』と声をかけてくれる。その瞬間がうれしくて」

ライブ中の山岸賢介さん
ライブ中の山岸賢介さん 出典: マザー・エンタープライズ提供


 始めた当初は、40歳近くになっても続けているとは「想像もしなかった」という山岸さん。曲作りに対する姿勢には変化が出てきたそうです。

 「若い頃は自由にやらせてもらいました。売れるための音楽を作るのはダサいとも思ってました。でも、今はなんでもやってみたい。そんなアドバイスがもらえるのは、自分たちを売ろうとしてくれている人がいるからこそ。まぁ、生意気言ってられる年齢でもなくなったというのもありますけど」

 30代後半になって、同世代のプロ野球選手たちが次々と引退しています。周りのミュージシャンたちも、メジャーデビュー後に契約が切れて音楽をやめたり、自主レーベルを立ち上げたり。

 それでも山岸さんの思いは変わりません。

 「自分たちの良さを表現したヒット曲を、これからもずっと探して、作り続けていきます。スプーンを使い分けるのはなく、このスプーンで何でも食べられるようにしたいんです」

島村楽器に聞きました

島村楽器で販売しているギター型スプーン(アコギタイプ)
島村楽器で販売しているギター型スプーン(アコギタイプ) 出典: 島村楽器のホームページより


 ネットで「ギター型スプーン」と検索すると、島村楽器が販売している商品がヒットしました。

 レスポールタイプの銀と金、アコギタイプの銀の計3種類があり、価格は1本540円(税込み)からとなっています。

 広報担当者に山岸さんのスプーン画像を見てもらったところ、「島村楽器で販売している商品ではないようです」とのこと。

 島村楽器で取り扱っているスプーンは、オリジナルギターブランド「History」がモチーフになっているそうです。

 「販売開始にあたり、弊社の担当者が付けたキャッチフレーズが『母さん、今日から俺はギターで飯を食うよ!』でした。ギターを手にしたことがある方であれば、一度は夢見たことがあるプロミュージシャンへの道。家族から『あんたみたいなのが、音楽でメシが食えるわけないでしょ!』と冷たく言い放たれた経験を持つ者がおそらく多い弊社スタッフの中では、かなり共感できるセリフでした。発売以来、毎月コンスタントに販売数を伸ばしているロングセラー商品です」

 「音楽でメシを食うのは難しいという皮肉も込めていたのか?」という質問に対しては、「そこまでは考えていませんでした」とのことでした。

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