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2時間で17億円売り上げた「中国のインスタ」 ECサイトの進化形
7千万人以上のユーザー数を誇り、「中国のインスタグラム」とも呼ばれる女性に大人気の電子商取引(EC)サイト「小紅書」が1月15日、東京都内で日本初開催となる大規模商談会を開きました。2017年6月には2時間で17億円の売り上げを稼いだというこのサービス。現時点で既に海外商品の売り上げ個数では日本が首位とのことですが、さらなる関係強化を考える創業者のミランダ・チューさんに思いを聞きました。
チューさんは1984年、中国湖北省の武漢生まれで北京外国語大学卒。「RED」という英語名でも呼ばれる「小紅書」は13年、モバイルのソーシャルネットワークサイト(SNS)として始まりました。
中国では赤色は人気や流行を意味しているため、「このアプリも人気になるようにと願いを込め、『紅』を社名に入れました」。「書」は書籍を意味し、ユーザーに、「REDを通じて知らない世界を知ってもらい、世界中の良い生活に触れるきっかけになるように」という願いも込めているそうです。
チューさんによると近年、中国の消費者は自分たちの生活の質にこだわりを持つようになり、海外ブランド製品や海外の暮らしに高い関心を持つようになってきました。
それに伴い、中国国内の商品だけでは満足ができず、海外の高品質な製品を求めるようになった、とのこと。「ただ、海外ブランド製品は多種多様であり、多くの製品の中でどれが本当に良いものか判断ができません。そこで解決策として、リアルなユーザーの声をコミュニティーで発信するモデルを作りました」と説明します。
7千万人以上のユーザーの大部分は女性。8割が90年代生まれで、そのうち半分が95年以降生まれとのこと。高収入で、「さらにより良い生活」を送ろうと意欲的な女性が多いそうで、お互いに「これはいいものだ」と思う製品を「口コミ」で紹介し合うコミュニティーが形成されました。
そうした状況を背景に、「小紅書」内にEC機能を導入し、紹介されている商品を買えるようにしたのが翌14年。15年1月に1700万円だった売り上げは同年6月には100倍の17億円となり、17年6月の販促イベントの際には同じ額をわずか2時間で記録するほどに。今では化粧品やファッションなどをはじめとする欧米の高級ブランドの商品も扱い、これらは日本からも購入することができます。
ユーザーは1カ月平均でアプリを52回開き、それぞれの平均滞在時間は約16分間とのこと。
「コミュニティーが成功した後、ユーザーはそこでいろいろな素晴らしい商品をシェアし続けています。他の利用者はこれらの口コミを見て、買いたくなります。このような問い合わせが多いため、コミュニティー機能にEC機能を付け加えることにしました。これでユーザーは何かが欲しいときにすぐ買うことができます」とチューさん。小紅書は今では、「中国のインスタグラム」「インスタグラムとアマゾンを足したもの」などという言われ方もするようになりました。
「世界トップクラスのSNSやEC企業に例えていただけることは非常に光栄です。これはユーザーの皆さんからの信頼の証しだと思っています。これが私たちのモチベーションとなり、今後も事業やサービスを進めることができます」と喜びます。
今回、日本で大規模商談会を開いたのは、さらなる知名度向上が目的。現段階では日本の一般消費者に小紅書を通じて商品を買ってもらう、というよりも、コスメやベビー用品をはじめとする高品質な商品の提供元、という感覚のようです。
約350人が参加した商談会ではチューさんによる事業説明の後、小紅書と連携している日本の化粧品ブランドのコーセー、THREEと、人気化粧品コミュニティーサイト「@cosme」を運営するアイスタイルが事例紹介のプレゼンテーションをしました。
アイスタイルの中国法人「アイスタイルチャイナ」の吉田直史・董事長は、他にも様々なECサイトがある中での小紅書の長所として、「購買プラットフォームというだけではなくて、(ユーザーが)商品を探したり評価したりもできるメディアプラットフォームとしても強い優位性がある。それは、ブランドの認知から販売まで一気通貫した取り組みをすることができる、という点で、我々も非常に頼りにさせていただいている」と話しました。
チューさんは「日本の製品は中国の消費者に好まれており、特に日本のコスメはREDの中でも人気の高いカテゴリーです。今回の商談会をきっかけに日本の素晴らしいブランドをREDに誘致し、REDの『コミュニティー+EC』という独自のビジネスモデルを通じて、中国市場で成功を獲得いただければうれしいです」と考えています。
一方、類似のコミュニティーサイトやソーシャルメディアではしばしば、実在しない人間のアカウントで商品の推薦をする「ステマ」なども問題になっています。小紅書はどう対策を取っているのでしょうか。
中国では芸能人が推薦するような商品よりも、商品を実際に使った人のリアルな声が好まれる傾向があると言います。そんな中、小紅書では、自分の投稿に対して他ユーザーから何かの商品を推薦するようなコメントがついた場合、そのユーザーのアカウントをたどれるので、一つの会社の商品ばかりを推薦しているようだと、怪しいアカウントではないかと判断することができます。
また、チューさんは商品をおすすめするプッシュ機能について、人工知能の技術を使っていると説明します。「人工知能を使って各ユーザーの閲覧履歴や各ページでの平均滞在時間などを分析し、ユーザーごとに関心の高い内容をプッシュします」。この機能により、そこから外れるようなステマ投稿の表示を抑止しているそうです。
小紅書は現在、日本や欧米を含む世界7カ所に倉庫、9カ所に小包の輸送拠点を設けるなど、物流面の整備も着々と進めています。
チューさんは今後について、「ソーシャルネットワーク電子商取引プラットフォームとして、より多くの方々にREDで自分の日常をシェアしていただき、より多くの消費者の生活の質が向上することを期待しています。出店ブランドの皆さんにはREDを真のコミュニティーとしてとらえていただき、多くの口コミでブランド認知を拡大させることで、中国での事業成功をサポートしたいです」と考えています。
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