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うまい棒10000本! 小学校に寄贈した男性、その意外な理由とは?
駄菓子「うまい棒」1万本を小学校に寄贈した男性がいます。その意外な理由とは?
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駄菓子「うまい棒」1万本を小学校に寄贈した男性がいます。その意外な理由とは?
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1月下旬、さいたま市在住の男性が「うまい棒」1万本を小学校に寄贈しました。1本10円として10万円にもなりますが、なぜ、こんなに大量にプレゼントすることになったのでしょうか? 男性や校長に話を聞きました。
1月22日朝、東京都墨田区にある区立錦糸小学校で開かれた全校朝会。
体育館の舞台の緞帳(どんちょう)が開くと、積み上げられた段ボール17箱が現れ、全校児童約250人から「キャー」「すごい」といった歓声が上がりました。
段ボールには定番駄菓子「うまい棒」がぎっしり1万本。児童たちから見えるように並べられており、味も12種類が取りそろえられていました。
これらを寄贈したのは、さいたま市在住で、区内に本社がある東武鉄道に勤務する桐生大輔さん(41)。
「子どもたちが喜んでくれて、本当によかったです」と振り返ります。
なぜ1万本も寄贈することになったのか? 桐生さんは「実はこれ、墨田区が企画した動画コンテストの賞品なんです」と話します。
区が昨年実施した「すみだの魅力PR動画コンテスト」に、「太眉愛護団体」という名義で応募した桐生さん。
見事グランプリを受賞し、以下の4つのうちから賞品1つを選ぶことになりました。
4つの選択肢について、コンテストの事務局である墨田区の広報広聴担当者は、こう説明します。
「区内に本社があるなど墨田区ゆかりの会社の品々です。金額にして約10万円になるように選びましたが、きっと受賞者はレストラン招待を選ぶものと思っていました」
応募の時点で「自分は独身でレストランに連れて行く相手もいないから、うまい棒しかない」と決めていた桐生さん。
昨年末にあった表彰式に参加した際、賞品の実物はありませんでしたが、やはりうまい棒を選ぶつもりでいました。
その時、総合的な学習の一環として応募し、特別賞を受賞した錦糸小の5年生児童たちが表彰式に参加していることに気づきました。
「今回のコンテストは、大人とか小学生とか部門分けがなかったんです。Facebookを通じて錦糸小の子どもたちの一生懸命な姿を見ていたので、ちょっと申し訳ない気持ちになりました」
式が終わった後、区の担当者に「この賞品、小学生に譲ることはできませんか」と相談した桐生さん。
その後、寄贈することが決まって贈呈式の開催を打診されましたが、一度は断ったそうです。
「あんまり恩着せがましいのも嫌ですし、知らないおじさんが来てもねぇ、という思いでした」
ところが、学校側から「ぜひ参加してほしい」と再び声がかかりました。その理由について、伊藤康次校長はこう説明します。
「本校は外国と関わりのある児童が多くいます。そんな児童たちが街の魅力を探して作った動画を評価してくれた人がちゃんといた。そのことを児童に実感してもらいたかったのと、物をもらっておしまいではなく、本物の人とのつながりを感じてほしかったんです」
桐生さんの参加が決まり、事前に学校に1万本を搬入。全校朝会が開かれた当日の朝に舞台上に並べて、緞帳を開く演出もしました。
体育館で初めて1万本を目にしたという桐生さん。「やっぱりもらわなくてよかったと思いました。一人暮らしの家にあんなに届いたら、寝るとこがなくなっちゃいますよ」。
贈られたうまい棒は、数字の量感をつかむ教材として2年生が活用。箱から出して体育館に並べ、1万本の多さを実感した後、全校児童に配布しました。
贈呈式で「人と人とのつながりが強い墨田区で育つことを誇りに思ってほしい」とあいさつした桐生さん。事前に文章を考えて暗記して臨みましたが、緊張したそうです。
「私もいい経験をさせてもらいました。うまい棒を見た時の子どもたちの歓声を聞いた時は、グランプリだと知らされたときよりも、ずっとうれしかったですから」
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