連載
#15 城崎広告「会社員のモヤモヤ」
飲み会・仕事中のひらめき、なぜ生まれる? 上手な生かし方もあった
朝日奈彬
営業部所属の28歳。高いコミュニケーション能力とポジティブシンキングが長所。趣味はテニス、スキー、サーフィン、ランニング。
夕永俊介
企画部所属の30歳。鋭い視点の持ち主でデータ分析やコンセプトデザインが得意分野。趣味はひとりキャンプと植物画。
猫渕渉
42歳の企画部部長。長年の経験で築いた人脈とそつのない仕事ぶりに定評あり。趣味は読書、お酒、料理。
夕永
朝日奈
猫渕
夕永
朝日奈
猫渕
思いがけないタイミングでアイデアが浮かんだ経験は、誰しも一度はあるのではないでしょうか? でも、実際にそれを生かせた経験がある人は少ないのではないかと思います。
せっかく思いついたアイデアを何とか生かす方法はないのか?そもそも生かせる形で思いつけないかを「アイデア・メーカー」(東洋経済新報社)などの著作があり、アイデアの出し方や活用法を企業に教えているイノベーションコンサルタントの山口高弘さんに聞きました。
予期せぬアイデアが思いついた場合、これが全てではないですが、多くは「ひらめき型」と「前提転換型」の2種類に分類できると思います。
まずは「ひらめき型」についてです。
既存の知識や理解を超えて情報がインプットがされたとき、その瞬間は情報を処理しきれず頭の中が雑然とした状態になる印象を受けますが、脳内では意識していない間や別のことを考えている間も情報が整理され続けています。
そして、脳内で情報がある程度整理されると、何らかの情報を見たり触れたりしたときに、それがヒントとなって整理された情報が一つのアイデアになることがあり、それを「ひらめき型」と言っています。
処理しきれないほどの情報が基盤となっているため、普段通りの情報に基づいて思いつくアイデアとは異なるアイデアが生まれます。ひらめきは、突然やってくるのではなく、処理しきれない情報を必死に整理し、ある時結集するという、処理しきれないほどの情報の整理にチャレンジしたことへのご褒美といえるでしょう。
もう一つが前提転換型です。ひらめき型が過多な情報を処理することがきっかけであるのに対して、前提転換型は、普段用いている思考の枠が外れることによってこれまでにないアイデアが生み出されます。
ほとんどのビジネスは前提条件に基づいていたり「枠」という考え方にはめて考えられています。例えば、「海外での宿泊体験」に関するアイデアを考える場合、「ホテルやゲストハウスに泊まる」という前提条件を踏まえて考えます。このため、驚くほどの飛躍したアイデアにはなりづらいのです。
前提転換型はこの「枠」から外れたアイデアになります。「ホテルやゲストハウスに泊まる」という、通常の前提を転換して、「海外の民家に泊まる」というアイデアを考えついたとしたら、それは前提が転換されています。これが、既に世界中で愛されているAirBnBだったりします。
枠や前提の考え方は昼間のビジネスシーンのような合理的、論理的に考えるスイッチが入っているときには、外れることが難しかったりします。しかし、夜の疲れた状態や、お酒を飲んだり、プライベートモードに入ったりすることで、「こう考えないといけない」といった固定概念や思考の枠が外れやすくなります。
そういったときに、そもそもの枠がなくなることで、新しいアイデアにつながったりするのです。
夕永
朝日奈
夕永
では、そのようなアイデアを生かすにはどうしたらいいのでしょうか?
まずは「ひらめき型」です。このタイプのアイデアが実現化できないケースの多くは、論理的に説明ができないことです。
何かがきっかけで突然思いついたものなので、思いついた経緯や論理が無く、何が良いのかを自分でも論理的に理解ができていないことが多いのです。
例えば、「今この時間暇な人に自分の代わりに買い物をしてきてくれることをスマホでオーダーできる代行サービス」というアイデアを思いつき、「低コストでリアルタイムな買い物代行だ!」と興奮したとしたとします。
翌朝振り返ったときに「本当に実現できるのか?」「安全性は確保されているのか?」「誰にとってどういう価値があるのか?」など、即座には言語化できないことに気づきます。本人もまだ理解しきれておらず、他人に説明するにあたって無理やり説明しようとすると「宅配をスタッフではなく一般市民が担うようなものです」となり、既存サービスの劣化版のような、何も新しい所がないアイデアに落ち着いてしまうのです。
しかし、言語化がちゃんとできていないだけで、新しいアイデアではないと切り捨ててしまうのは大変もったいないです。何が重要な点なのか、何が新しいのかがうまく説明できないだけで、そこには宝のような内容が隠れているかもしれません。
言語化への取り組みは難しくなく、小さな具体例を積み重ねることで解像度を上げて事後的に振り返ってみることがその近道です。
切り口となるのが、人・時間・場面・目的という枠組みです。「誰が?」「どんな時・場面で?」「どんな目的で?」「どのように使う?」といったことを突き詰めて具体的に考えていくと、説明できなかったアイデアが説明できるものに変わっていきます。
新しいアイデアであればあるほど、今までにない概念になりますので言語化が難しくなります。できるだけ自分が思いついたニュアンスを大切にして具体化していくようにしましょう。
猫渕
朝日奈
猫渕
続いて「前提転換型」の実現方法です。
この場合、まずは職場の同僚などの身近な人に話してみましょう。そして、話した結果の相手の状況を大きく下記の4分類で分けてみてください。
1) 新しいけど理解ができる
2) 理解はできたが、新しくない
3) 新しいが理解ができない
4) 新しくなく、理解もできない
まず重要なのが理解するということです。具体的には賛否両論が出ることを目指すとよいでしょう。
「ひらめき型」と同じく新しいアイデアは既存の枠にない話になりますので、そもそも理解へのハードルが高いです。賛否両論が出る=理解はできている、ということになりますのでまずはそこを目指しましょう。
ただし、理解されたとしても前提が転換されているアイデアに対して、人はネガティブな反応を示しがちです。「そんなのありえない」「そんなの不合理だ」といった反応です。新しいアイデアは既存の枠で捉えられないため、不合理に見られがちなのです。
例えば、「コーヒーを出さない喫茶店」というと、「喫茶店」という枠組みにおいて「コーヒーを出さない」ということになりますので従来の「喫茶店」のイメージからすると不合理に感じ、とらえ方は様々ですがネガティブな印象を持つ人が多くなります。
では、前提が変換されたアイデアはどうすれば受け入れられやすいのでしょうか?
一つの方法として、世界中のどこであっても、ほんの一部でもいいので、自分のアイデアが実現されている隠れた事例を探すことです。
ここで知っておきたいのが「人は、見たものしか信じない」という現実です。見たことも聞いたこともないものは、信じることができないものです。
これを踏まえて「ヨーロッパの△△の地域では、コーヒーを出さないカフェがある」といった事例を探すことで、そのアイデアを「見たもの」に変えることができ、信じることができるようになります。
夕永
猫渕
夕永
思いついたアイデアの具体化に向けた近道として共通して言えることが、思いついた瞬間にアウトプットするということです。メモでもいいですが、音声で残しておくことがニュアンスも残しやすいのでおすすめです。
イメージを即座に目に見えるものにすることで、記憶定着も図られ、また良し悪しを判断しやすくなるだけでなく、追加修正もしやすくなります。
周りの人が受け入れやすい心構えをしておくことも重要です。
特にマネジャーのような役職についている人は新しいアイデアや既存の枠にとらわれない考え方が出てきたときは、否定的な考えが浮かんだとしてもまずは受け止め、本人に対して「誰のための?いつ、どういう場面で?何のために?どういう理由で使うか?」といった形で、解像度を上げる問いかけを意識してみましょう。
良いアイデアを具現化している組織ほど、新しいアイデアを受け入れ、それを生かすことができる優秀なマネジャーが居るケースが多いです。
様々なアイデアが日常にはまだまだ潜んでいると思います。昨夜の発見や新しい組み合わせが日常をちょっと良くする商品や世界を変えるような素晴らしいサービスに変わることを期待しています。
猫渕
朝日奈
夕永
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