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できる・できないの境界「一線越えではなく反復横跳び」 作者に聞く

「できる」と「できない」の境界を描いた図がツイッター上で注目を集めています。

「できる」と「できない」の境界を描いた図
「できる」と「できない」の境界を描いた図 出典: 天野雀さんのツイッターより

目次

【ネットの話題、ファクトチェック】

 「できる」と「できない」の境界を描いた図がツイッター上で注目を集めています。「できない」から「できる」に一度移ってしまえばそれっきりと思いがちですが、実は「何度も境界の上を反復横跳びしながら次第に『できる』側に収まる」ということを図式化したものです。どういった経緯で思いついたのか? 作者に話を聞きました。

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天野雀さんが描いた「japanese women」
天野雀さんが描いた「japanese women」 出典: 天野雀さんのツイッターより

「これに気づくだけで救われそう」


 今月3日にツイッター投稿された1枚のイラスト。2つの図が描かれており、一つは「こう思いがち」、もう一つは「実際は」と名付けられています。

 「こう思いがち」の図は、「できない」から「できる」に向かって横向きに矢印が直進しており、その真ん中に縦棒のように「境」があります。「できない」と「できる」の間には明確な線引きがあり、ある時にそこを超える様子が描かれています。

「こう思いがち」の図
「こう思いがち」の図 出典: 天野雀さんのツイッターより


 一方で「実際は」の方は、同じように真ん中に境がありますが、矢印は直進ではなく、境をまたぎながら右に左に何度も往復しながら、次第にその横幅が「できる」に収まっていきます。

「実際は」の図
「実際は」の図 出典: 天野雀さんのツイッターより


 どうやら、「できない」から「できる」に一度移ってしまえばそれっきりというわけではなく、「何度も境界の上を反復横跳びしながら次第に『できる』側に収まる」ということを描いているようです。

 この投稿に対して、「こういう考え方っていろんなものに対して当てはまる」「これに気づくだけでかなり救われそう」といったコメントが寄せられ、リツイートは2万4千、いいねは6万を超えています。

2つを並べるとこうなります
2つを並べるとこうなります 出典: 天野雀さんのツイッターより

作者に聞きました


 話題の図をツイッター投稿したのは、天野雀さん(@b0mb00)です。ゲーム関係の絵をパソコンで描く仕事をしながら漫画も描いており、先日、自費出版でオリジナル作品「百鬼夜行」を出しました。

 どういった経緯で、この図を思いついたのか? 詳しく話を聞きました。

天野雀さん描いた漫画「百鬼夜行」
天野雀さん描いた漫画「百鬼夜行」 出典: 天野雀さんのツイッターより


 ――「できる」「できない」について図のような考え方をするに至った経緯は

 正月に特にやることもないので、Amazonプライムビデオで番組を見ていたら、ある若手芸人が「どうしたら売れますか」「どうしたら、お笑い界で成功できますか」といった質問していました。

 それに対する大物芸人の回答が「徐々にだよ」でした。「できたり、できなかったりを繰り返すうちに、だんだんできるようになってくる」。そんなニュアンスだったと思います。

 その時に「あ、そうか。『できた』後に『できない』が来ることもあるな」ということに気付き、それとほぼ同時に、脳内に「白い線をまたいで反復横跳びする人間」のイメージが浮かびました。

 線を挟んで左が「できないゾーン」、右が「できるゾーン」。その真ん中に立ち、その2つのゾーンを反復横飛びで、行ったり来たり。「1回1回の結果にとらわれがちだけど、実際は反復横跳びなんだ」と、腑(ふ)に落ちた感がありました。

天野雀さんが描いたイラスト
天野雀さんが描いたイラスト 出典: 天野雀さんのツイッターより

方法は一つではないから


 ――番組がきっかけだったんですね

 大物芸人と若手芸人の考え方が食い違っていたのも興味深かったです。若手芸人の質問の意図はきっと、「成功するための秘訣を教えて下さい」だったのでしょう。成功の裏には、とっておきの「裏ワザ」「成功法則」みたいなものが存在する、と思い込んでいるようでした。

 でも、世の中に『これさえあれば』なんてものが、果たしてあるのでしょうか? 金づちだけじゃ家は建たないし、小麦粉だけじゃ料理は作れない。色々な道具を全て総動員して、ようやくできあがる。成功者と呼ばれている人もきっと、できたりできなかったりを繰り返すことで、得た知識や経験を総動員しているはず。

 そして、できることが当たり前になったら、「ズバリこの方法で、できるようになる!」と答えられなくなる。なぜなら、方法は一つではないから。そんなことも含めて『徐々にできるようになる』という言葉が腑に落ちた、という感覚でした。

 ――図のような経験をされた具体的な事例があれば教えてください

 もしかしたら全部かもしれません。仕事も、お金の管理も、勉強も、絵も、楽器も、人間関係も。もちろん「できないゾーン」で挫折して、諦めたままのこともたくさんあります。漫画はずーっと「描けないゾーン」でしたが、最近ちょっとだけ「描けるゾーン」に入れました。

天野雀さんが描いたイラスト
天野雀さんが描いたイラスト 出典: 天野雀さんのツイッターより

自分の思考パターン、試しにやめてみる


 ――「繰り返してきた自分の思考パターンを見つけて検証し、試しにやめてみる」という考え方もツイートされていましたね

 人の話を聞いていると、「この人また同じこと言ってるよ」「昔からずーっと同じ思考パターンだなぁ」と思うことがあります。特に愚痴ですとか、自己卑下なんてものは繰り返しやすい。「アイツ気にくわない」だとか「自分は向いてない」だとか。

 そういう人を見ると「同じところずーっとぐるぐるしてて、進歩ないなぁ」「その考え方は、誰のタメにもなってないから、いい加減やめたら良いのに」なんてことも思いますが、人に対してそう思うということは、自分もそう思われている可能性が非常に高い。というか、思われてます。

 人にアドバイスするなら、まず自分に対してからが一番よいのではないのかと思ってチェックしてみると、結構いっぱいあるもんなんですよね。「要らないこだわり」が。

 ――実践してみて変化や発見は

 僕は『自分が描く漫画には、絶対に美男美女を出さない』という謎のルールを掲げていたのですが、試しにやめることにしました。そう思ったら、「そもそも何でこんなルールが出来上がったんだ?」と。

 どうやら「漫画くさくなる」のが嫌で、「主人公がイケメンで、ヒロインが美少女なんて『漫画くさい』」ってなことを思い続けていたみたいです。でも、『漫画くさく』ならなければ、美男美女を登場させても全然問題ないということに気がつきまして、今まで随分、無駄なルールに縛られていたなぁ、と思った次第です。

 こんな風に、「こうしなければならない」と思っていたことをいざやめてみようと試みると、「そもそもなんでこんなルールができたんだっけ」と疑問がわき、「意外と大した理由じゃない」ということに気付けて、少し自由になれます。

天野雀さんが描いたイラスト
天野雀さんが描いたイラスト 出典: 天野雀さんのツイッターより

落ち込む必要は全くない


 ――「できる」「できない」のツイートが話題になったことについては

 「図にするとどんな感じなんだろう」と思って、サラッと描いてみたら、思ったより理にかなっていたので、なんとなくツイートしてみました。思った以上の人が共感してくれたようで、とても意外でした。

 うまくできなかった時に、「失敗の原因」や、「もっとうまくいく工夫」などは考えても良いと思いますが、「落ち込む必要は全くない」のではないかと、僕は最近思っています。

 「できている人」や「こうなるべきだった理想の自分」と比べると、ヘコむし、しんどいですが、色々試しながら繰り返していけば、間違いなく「できる」ようにはなっていきます。少なくとも最初の「ド下手な自分」よりは、成長していることに違いないので、あまり人の評価を気にせず、「できる」ようになっていく過程だけを純粋に楽しめる人間になりたいなぁと思っています。

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