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コラム

恋愛は必需品ではなく嗜好品? 〝30秒で泣ける漫画〟の作者が描く

漫画家・吉谷光平さんが若者の恋愛離れ」について描きました。

漫画「若者の恋愛離れ」の一場面=作・吉谷光平さん
漫画「若者の恋愛離れ」の一場面=作・吉谷光平さん

 若者の恋愛への熱意が薄れてきたって本当なの? ツイッターに投稿した漫画「男ってやつは」が〝30秒で泣ける〟と話題になった漫画家・吉谷光平さんが描きました。

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漫画「若者の恋愛離れ」=作・吉谷光平さん
漫画「若者の恋愛離れ」=作・吉谷光平さん
 街角にクリスマスソングが流れる季節。かつて、当日、誰と過ごすかで盛り上がったが、いまは若者の恋愛への熱意が薄れてきたという。それって本当なの? マーケティング会社社長で、著書に「恋愛しない若者たち」などがある牛窪恵さんに、朝日新聞の吉川啓一郎記者が聞きました。
漫画「若者の恋愛離れ」の一場面=作・吉谷光平さん
漫画「若者の恋愛離れ」の一場面=作・吉谷光平さん
(以下、牛窪恵さんのお話)

 若者の恋愛観を、実際に当事者に話を聞きながら調べ続けてきました。今の20~30代は、恋愛を必需品ではなくて嗜好(しこう)品と捉えており、手間やリスクを考えると割に合わないもの、と考える人が多くなっていると感じます。

 21世紀に入り、まず変わったのが男性の恋愛観です。景気低迷と将来不安の高まりから、無用な消費を嫌がり、わざわざ恋をしてお金や時間を使いたくない。初めから男女平等の教育を受けており「男が引っ張る」感覚も弱い。
漫画「若者の恋愛離れ」の一場面=作・吉谷光平さん
漫画「若者の恋愛離れ」の一場面=作・吉谷光平さん
 それでも、少し前まで女性には恋愛願望がみられましたが、最近は男女を問わず「恋愛は面倒」という声が多くなりました。おそらく最大の理由は、常にスマホでネットや人とつながっている「超情報化社会」になったことです。

 まず、満たされやすくなっています。私の大学時代は、授業以外はサークルかバイト、あとはデートぐらいしか楽しみがなかった。でも今は無料の動画やゲームも多く、友人とも常時つながっている。恋をしなくても、いくらでも楽しく過ごせます。性愛への関心も、今はスマホで満たせる。困り事も、助けてくれた誰かにときめく前にスマホが解決してしまい、ロマンチックな瞬間が訪れにくい。

 職場ではハラスメント扱いされるのが心配で誘いにくいし、やっと告白しても、内容を転送されて恥をかいたり。付き合えば、行動がスマホ上で筒抜けで束縛されやすく、別れれば、相手のスマホに自分のデータや画像が残っているからストーカーやリベンジポルノも怖い。これだけの面倒やリスクを背負ってまで、特定の人と深い関係になる必然性が薄れているのです。
漫画「若者の恋愛離れ」の一場面=作・吉谷光平さん
漫画「若者の恋愛離れ」の一場面=作・吉谷光平さん
 だから、上の世代は「恋愛しない方がおかしい」と自分たちの感覚で見ず、そうした現代的な難しさを理解した上でサポートする必要があります。当の若者には、パートナーを見つける動物的本能を取り戻すため、時々は「スマホ断ち」も大切だと伝えたい。ネットと切れた状態で、「あの人に会いたい」といった自分の自然な感情に、静かに耳を傾ける時間も必要です。

 もともと、昔の日本は西欧型の大恋愛ではなく、一緒に暮らしてから情が移っていくタイプの文化でした。トレンディードラマが全盛だったバブル前後が、むしろ例外的だったのかもしれず、恋愛より情愛を重視するのは決して悪いことではありません。

 ただ、私の経験上も、結婚後に「思っていたのと違う」という瞬間は必ずある。その時、「あれだけ好きになった人だから仕方がない」という割りきりも支えになります。今の若者は賢く先読みしがちですが、人生を納得させるためにも、一度は後先考えずに「燃え上がる恋」をするのも悪くないと思うのですが。
漫画「若者の恋愛離れ」の一場面=作・吉谷光平さん
漫画「若者の恋愛離れ」の一場面=作・吉谷光平さん

 【よしたに・こうへい】 漫画家。サラリーマン生活や漫画家アシスタントなどを経て、月刊スピリッツの「サカナマン」でデビュー。漫画アクションで「あきたこまちにひとめぼれ」を連載中、月刊ヤングマガジンの連載「ナナメにナナミちゃん」の単行本1巻が発売中。ツイッターで公開した2ページ5コマの漫画「男ってやつは」が〝30秒で泣ける〟と話題に。

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