テレビCMやネットで、壁や道が青色に染められた街を見たことがありませんか? その街の名は「シャウエン」。ボリビアのウユニ塩湖や台湾の九份(きゅうふん)ほど、まだ名前が浸透していないこの街、実はモロッコにあります。ある旅行会社では、モロッコのツアー参加者数が5年連続で増加し、今年は昨年の2割増。中でもシャウエンは「含まないツアーは考えられない」というほどの需要だそうです。実際にシャウエンに行ってみると、まさに「いいね」過ぎる景色が広がっていました。
「シャウエン」とはアフリカ大陸北西部の国、モロッコの北部にある街。正式には「シェフシャウエン」といい、国際空港があるカサブランカから、車で7時間近くかかるという秘境です。
「シャウエン」の名は「角」を意味する現地の言葉からきています。街から見えるの2つの山が、ヤギの角のように見えることからこの名前がつけられたといわれています。
地中海側に位置しているシャウエンは、古代から多くの文明を受け入れる玄関口としての役割を担っていました。
このため、ローマ、アラブ、ヨーロッパなどの文化が幾重にも折り重なり、内陸部とは一味異なる独特な雰囲気をつくりだしています。
シャウエンの見どころは、とにかく「青い」旧市街。家も道も、街中が青い塗料で色付けられています。街は迷路のように入り組み、まるでおとぎ話の世界に迷い込んだようで、散策だけでも見応えたっぷり。よく見ると水色のような淡い青や、濃い青まで、さまざまな青が存在しています。
シャウエンが青い理由には諸説あるようですが、旅行会社に現地のホテルやレストランを手配するツアーオペレーター「サラムモロッコ」(福岡県福岡市)の担当者は「学術的にわかっている訳ではない」と話します。
モロッコは日本と比べると乾燥した気候で、日差しも強いです。太陽のまぶしさをやわらげるために、青い塗料を塗った、という説もあれば、虫よけのため、という説もあります。
15世紀の宗教運動レコンキスタによって、スペインから逃れて移り住んだイスラム教徒などが、壁を青く塗るようになったのでは、という説も有力です。イスラム教徒にとって、青は空や天国をイメージさせる神聖な色なのだそうです。他にも、ユダヤ教徒にとっても青は特別な色で、20世紀ごろに移り住んだユダヤ人が塗り始めた、という説もあるようです。
サラムモロッコの担当者によると、シャウエンの住民によって街の塗装は塗り直されているそうです。ヨーロッパの人々には人気の観光地で、住民もはりきって塗るようになり、年々青くなる印象もあるのだとか。最近塗り直されたのか、家の脇に生えている植物にも青の塗料がかかっているのを見かけました。
旅行会社「H.I.S.」のツアー企画者によると、モロッコツアーの参加者は5年連続で増加を続け、今年は前年を2割強上回っています。人気上昇中なモロッコですが、イタリアやスペインなど、主要な都市に比べると総数は多くないといいます。
シャウエンもCMなどで取り上げられることが多くなりましたが、モロッコにある街という認知度はまだまだ低い、という穴場っぷりです。
すごいのはシャウエンの「写真力」。たとえモロッコに興味がなかった人でも、店頭でシャウエンの写真を見せると、一気に関心を抱くことが多いそうです。
しかも「実際に行ってみてがっかりした」という意見はほとんど聞いたことがなく、「シャウエンを含まないモロッコのツアーは考えられない」というほど、重要なスポットになっています。
モロッコツアーの参加者は幅広く、学生からシニア世代まで。夫婦など家族での旅行や、一人での参加が多いのですが、どこを切り取ってもフォトジェニックな街だけに、シャウエンに興味を抱くのは若い女性が目立つそうです。
シャウエンの街の中を散策するのもよいですが、塔にのぼって街並みを見渡すのもおすすめです。街の中心にあるハマン広場に面した「カスバ博物館」に行ってみました。
「カスバ」とは城塞のことで、土色の古い城塞を博物館として公開しています。入場料は10ディルハム。1ディルハムは12円程度(2017/10/31時点)なので、120円ほど。別の観光客が受付で「お釣りがない」と言われていたので、ぴったり用意して行くことをおすすめします。
実はこの博物館の庭には塔があり、最上階まで上ることができます。狭い階段を上り窓をのぞくと、目の前にシャウエンの街が広がっているのです。
上から見ると濃淡さまざまな青色に加え、白色の壁や、オレンジがかった瓦がアクセントになって美しく、異国情緒に思わずため息が出ます。ちょうど近くのモスクから礼拝の時間を告げる「アザーン」が聞こえてきて、改めて遠くへ来たんだなと実感しました。
ちなみにもしもゆっくりできるのであれば、宿泊もおすすめです。郊外から見る夜の街並みが幻想的で、雲がなければ空いっぱいに広がる星々を眺めることができます。
シャウエンの他にもモロッコには魅力な都市がたくさんあります。「H.I.S.」のツアー企画者によると、屋台がバラエティーに富み熱気が渦巻く街「マラケシュ」や、海辺のかわいい世界遺産の町「エッサウィラ」もおすすめだそう。
ちなみにこれらの街ではお土産も豊富。カゴバックや革製品、陶器など、安くてかわいいモロッコ雑貨は私もいくつか買って帰りました。
私は10月に旅行したのですが、基本的に朝や夜は冷え込み、昼はTシャツ1枚でいいほど暑いなど、1日の中でも気温が変わります。脱ぎ着しやすい上着を持っていくなど対策は重要です。
モロッコはSNS映えするフォトジェニックな写真が撮れる場所ばかりですが、不用意に現地の方を撮るのを控えましょう。またモロッコはイスラム教の国です。女性は大胆な肌の露出は避けるなど、現地の方の文化を尊重することも大切です。
人とはちょっと違う体験を味わいたいあなた、次の長期休暇の旅行先はモロッコはいかがでしょうか。ちなみに余談ですが、私はinstagramに写真を投稿したら普段の3倍以上「いいね」がつきました。