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コラム

不倫報道、なぜ過熱するのか? 〝30秒で泣ける漫画〟の作者が描く

漫画家・吉谷光平さんが不倫報道について描きました。

漫画「不倫は悪!!!」の一場面=作・吉谷光平さん
漫画「不倫は悪!!!」の一場面=作・吉谷光平さん

 なぜ今、こんなに不倫報道が過熱するのか? ツイッターに投稿した漫画「男ってやつは」が〝30秒で泣ける〟と話題になった漫画家・吉谷光平さんが描きました。

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漫画「不倫は悪!!!」=作・吉谷光平さん
漫画「不倫は悪!!!」=作・吉谷光平さん
 お笑い芸人、タレント、政治家、作家……。そして7日、また、民進党の山尾志桜里衆院議員の「不倫」問題が報じられた。なぜ今、こんなに不倫報道が過熱するのか。
漫画「不倫は悪!!!」の一場面=作・吉谷光平さん
漫画「不倫は悪!!!」の一場面=作・吉谷光平さん
 同日発売の「週刊文春」は「イケメン弁護士と『お泊まり禁断愛』」とのタイトルで、山尾氏が妻子ある男性と密会していたと大きく報じた。山尾氏は同日、離党を表明した。民放各局のワイドショーや情報番組は7日朝からこの話題でもちきりだった。例えば、テレビ朝日の「羽鳥慎一モーニングショー」は約45分を割いた。出演者が、国会論戦で活躍した山尾氏についた異名をもじり、「ジャンヌ・ダルクは最終的に火あぶりになるわけで」とコメント。笑いがわく一幕もあった。

 不倫報道は最近目立つ。政治家では宮崎謙介氏、今井絵理子氏、中川俊直氏、お笑い芸人の宮迫博之さん、俳優の渡辺謙さんや斉藤由貴さん、作家の乙武洋匡さんら多くの有名人が報じられた。週刊誌のスクープなどをきっかけにテレビやネットで取り上げられ、謝罪を迫られるパターンだ。
漫画「不倫は悪!!!」の一場面=作・吉谷光平さん
漫画「不倫は悪!!!」の一場面=作・吉谷光平さん
 いつの世にも不倫はあり、古今東西の文学の題材にもなってきた。だが、メディアコンサルタントの境治さんは「それにしても、いまの報道の過熱ぶりは異常だ」とみる。民放の在京キー局が、不倫報道にどれだけ時間を割いているかをデータ会社に依頼して調べたところ、2014年、15年は30時間未満だったのに、16年に170時間に急増、今年は8月27日までで120時間に上り、「この2年の突出ぶりが際立つ」という。

 要因の一つはネットとテレビの相乗効果だ。週刊誌がネットで不倫報道を予告するパターンが始まり、ある民放キー局幹部は、「世の中の一大事のように報じるのはどうかと思う。だが、制作現場にとって、ネット上の反応が世間の関心事のバロメーターになっている。ネットが盛り上がると、テレビでも取り上げやすくなる」と語る。

 境さんは、不倫のイメージの変化も挙げる。転機は、16年1月に発覚したタレント・ベッキーさんとミュージシャン・川谷絵音さん。境さんは「謝罪後に、実は反省していないとも受け取れるLINEでのやりとりが世間にさらされる新しい展開で、『不倫=完全悪』のイメージができあがり、メディアも視聴者も、いまも引きずっている」とみる。
漫画「不倫は悪!!!」の一場面=作・吉谷光平さん
漫画「不倫は悪!!!」の一場面=作・吉谷光平さん
 「コンプライアンス」(法令順守)の風潮の強まりを指摘するのは、岩波明・昭和大教授(精神医学)だ。岩波教授は「不倫のとらえ方は人、事例によって異なるはずで、それほど悪いと思っていない人もいるだろう。なのに、不倫を許容するような意見を表明した人まで批判の対象になる雰囲気がある。寛容さが失われているようにも思う」。

 過熱する不倫報道の裏で、実は、不倫にともなう慰謝料の相場は下がっているという。不倫訴訟に詳しい田村勇人弁護士は、不倫で離婚した場合に裁判で認められる慰謝料は約300万円、離婚しない場合で100万円だといい、10年前と比べて2、3割減だと明かす。「裁判所が、円満な家庭を維持することの価値が相対的に下がっている、と考えているのかもしれない」

 それでも不倫の注目度が上がることについて、岩波さんは「いまの社会は、いったん『悪』のイメージがついた人を一斉にバッシングする風潮がある。不倫は褒められたことではないが、批判できるのは身内だけなのではないか」と話す。
漫画「不倫は悪!!!」の一場面=作・吉谷光平さん
漫画「不倫は悪!!!」の一場面=作・吉谷光平さん

 【よしたに・こうへい】 漫画家。サラリーマン生活や漫画家アシスタントなどを経て、月刊スピリッツの「サカナマン」でデビュー。漫画アクションで「あきたこまちにひとめぼれ」を連載中、月刊ヤングマガジンの連載「ナナメにナナミちゃん」の単行本1巻が発売中。ツイッターで公開した2ページ5コマの漫画「男ってやつは」が〝30秒で泣ける〟と話題に。

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