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「VALU」への規制どうなる? 金融庁は「集団投資」か重要視
株式市場に似た独自の仕組みによって、個人が資金を集められる新興サービス「VALU」が揺れています。人気ユーチューバーによる「大量売却騒動」で損失を被る人が相次いだため、4日から新たな取引ルールを導入します。それでは今後、確実な利用者保護に向けて、法の網はかかるのでしょうか。あらためて金融庁に話を聞いてみました。
VALUには堀江貴文さんやイケダハヤトさんなど著名人も参加。こうした個人が登録して、仮想株式のような位置づけの「VA」を発行できるサービスです。利用者は「VA」をビットコインで買うことで、その人を資金支援できる仕組みです。
一方で独特なのが「VA」を利用者間で売買することができる点。著名人の「VA」を安い時に買い、後日、その著名人の人気が高まり価格が上がれば、もうけが出ます。そのため単なる支援ではなく、投資目的に購入する人もいるのが現状です。
そうした中、8月に人気ユーチューバーによる「大量売却騒動」が起きました。
人気ユーチューバーのヒカルさんが、VALUで動き始めるとツイッターで表明。優待特典などを期待して「VA」を購入する人が増え、価格が高騰しました。ところが、すぐさまヒカルさんは自らの「VA」を大量に売りに。数千万円規模の利益を得る一方、価格は暴落して購入者らから猛烈な批判を浴びました。
さらに、ヒカルさんが所属している事務所関係者も「VA」を売却しており、大量売却をあらかじめ知っていた「インサイダー取引ではないか」と疑念を抱かれる結果となりました。
株取引の場合、インサイダー取引や価格つり上げのため虚偽情報を流すことは、金融商品取引法(金商法)で禁止されています。違反すれば刑事罰や課徴金の対象となるなど、対策が張り巡らされています。
しかしVALUは、現時点で金商法の規制対象にはなっていません。
こうした状況を、金融庁はどう考えているのでしょうか。
取材に対して「個別企業について回答はできない」とのことでしたが、一般論として説明してくれました。金融庁は「金商法の規制対象となるかどうかは、『集団投資スキーム持分』に該当するかが一つの重要な点になる」と指摘します。
一般的には耳慣れない「集団投資スキーム持分」とは何でしょうか。
例えば代表的なものに投資信託があてはまります。多くの人から資金を集めて、プロが株式などを購入。資金を出した人に、もうけを分配する投資の形です。
自分で株を売買する形でなくても、投資性の強い金融サービスは多数存在します。金商法では利用者を守るため、そうしたサービスに法の網をかけているのです。
金融庁によると、「集団投資スキーム持分」にあたる条件とは以下です。
(1)他者から金銭などの出資・拠出を受け
(2)その財産を用いて事業・投資を行い
(3)その事業・投資から生じる収益などを出資者に分配する仕組み
こうした見解を踏まえて見てみると、VALUは「他者からVA発行で資金を集め」「その資金を活動に役立て」「物品提供などの優待特典を、出資者に贈ることができる」仕組みです。
ただVALUでは優待特典の内容は「限定イベントに招待」「グッズを贈る」など人によってバラバラ。設定しないこともできます。
こうした新機軸のサービスの場合、金融庁は「運営会社へのヒアリングなどで実態を把握し、法律に適合するのか確認していく作業が必要になる」としています。つまり実態として、どのようなサービスが行われ、どのような使われ方をしているか調べた上で判断されることになります。
金融庁は「(利用規約などで)形式的にこうだと運営会社が言っているから、それで規制対象に当たらないと判断すべきものだとは思っていない。事業の内容から、実質的に判断しないといけない」と説明します。
また、「VA」をビットコインで購入するVALUのような形のサービスは、今年から登録制が始まった「仮想通貨交換業」に当てはまる可能性もあります。金融庁は、やはり実態を把握したうえで判断すべきことだとしています。
登録が必要と判断されたサービスは、マネーロンダリング対策のための本人確認などが義務づけられます。
一方でVALUの運営会社も、大量売却騒動を受けて対策を打ち出しています。
9月4日からは、一日に売却できる「VA」を総発行数の10%未満に制限。今後は値上がりしたからといって、すべてを一気に売り抜けることはできなくなります。
価格操縦行為のさらなる規制と利用者保護のため、来週の9月4日(月)より売買取引に関する以下の制限および仕様を追加いたします。https://t.co/azJJb6yxvP(1/4)
— VALU (@VALU_PR) 2017年8月29日
大量売却騒動を起こしたユーチューバーらに対しては、「禁止事項を定めた規約に違反したと判断し、該当4氏の出金を停止しています。規約違反に対しては、厳正な対応をしていく所存です」(VALU社担当者)と強調します。
ITと金融を融合したフィンテックサービスは、次々と新たな事業が登場しています。新分野の育成と利用者保護をどう両立させるか、法律面、運営面の両方で対応が求められています。
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