ネットの話題
【動画】逃げられない!箸がバキバキ、悪魔的設計の装置ができたワケ
回転するベルトと円盤に割り箸が挟まれると、引き抜くことができずバキバキに――。労災事故を疑似体感できる装置が、「悪魔的設計」とツイートされ話題です。年間約11万人の死傷者が出ている労働災害。防ぐためには、一人一人の安全意識が大切ですが、こうした事故を疑似体感することによって、意識を高めようという取り組みがあります。
本当に逃げられない pic.twitter.com/L2o5OI3Uaj
— 稲見昌彦 Masahiko Inami (@drinami) 2017年8月20日
話題のツイートは、「はこだて国際科学祭」(北海道函館市などが会場)で20日に展示された「回転体巻き込まれ体感装置」を紹介したものです。電気機器メーカーの明電舎(本社・東京)が企画した安全体感教育の一つ。実験に使われた大小二つの円盤(プーリー)にベルトをかけた仕組み自体は、様々な設備に組み込まれています。
回転体への巻き込まれ事故体験。割り箸を穴から入れてベルトが噛んだ瞬間手を引かせる。どれだけゆっくりでも逃げられない。現場では割り箸でなく指を持っていかれることになる… pic.twitter.com/g3ObjOEvqB
— 稲見昌彦 Masahiko Inami (@drinami) 2017年8月20日
円盤やベルトは高速で回転しているので、手で触るのはもちろん危険です。どれほど危ないのかを、この装置で体感することができます。
「本当に逃げられない」とつぶやかれた動画では、保護パネルの穴に割り箸を入れると、あっという間にベルトと円盤の間に巻き込まれ、そのままぐしゃり。投稿した東京大先端科学技術研究センターの稲見昌彦教授(人間拡張工学)は「数千人体験して割り箸生還率ゼロという悪魔的設計。みんなバキバキに粉砕されます」と伝え、動画は15万回再生されています。
ちなみにこの装置、今まで数千人体験して割り箸生還率ゼロという悪魔的設計。みんなバキバキに粉砕されます
— 稲見昌彦 Masahiko Inami (@drinami) 2017年8月20日
この装置を開発したのは、愛知県豊川市のアジアクリエイト社。工場の生産ラインなどを製作するのが本業ですが、こうした体感装置を50種類以上手がけています。「『痛い思い』をしないと伝わらない部分を、疑似体感してもらうのが目的」と担当者は話します。
元々は2005年、取引先のメーカーから「社員の安全教育のために、事故を体感できる装置を作ってほしい」と依頼されたことがきっかけでした。今回の巻き込まれ装置など数種類を製作したところ、評判が口コミで広がり、2008年ごろから本格的に製作・販売を始めたそうです。
企業ごとの細かな注文にも対応しているため、装置の種類はどんどん増えており、これまでに約800台(今年8月時点)を製作しています。
明電舎もその一つです。昨年12月に社外向けの安全体感教育事業を始める際に、巻き込まれ装置のほか複数の機器を導入しました。
厚生労働省によると、労働災害による死傷者数(休業4日以上)はここ数年、11万人台を推移。明電舎では、労災がゼロにならない原因を「危険予知能力の低下」と「ヒューマンエラー」と分析し、「危険の感受性に訴える教育」として2008年から社内や協力会社で安全体感教育を行っています。
明電舎によると、現在あるプログラムは26種類。「感電」など自社で過去に発生した労災を基にしています。「墜落」や「転落」など実際に体感できない事故も、VR技術を活用するなど工夫を凝らしています。
今回話題になった巻き込まれ体感も「回転体に限らず、動いている機器に巻き込まれてしまうと逃げることは出来ない。だから、機器に触れる場合は必ず停止をさせてから。それを理解してもらいたい」とその狙いを説明します。
明電舎によると、受講した作業員の中で、労災を発生させた人はこれまでいないそうです。こうした取り組みについて、稲見教授は「失敗体験は忘れがたい。それを安全に体感できるという点で意義が大きい」と評価しています。
1/33枚