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夏こそフィギュア?「アイスショー大国」日本の異様な盛り上がり

横浜で開かれたプリンスアイスワールド=2017年5月3日
横浜で開かれたプリンスアイスワールド=2017年5月3日 出典: 朝日新聞

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 冬のイメージがあるフィギュアスケート。実は、夏も盛り上がっています。春から夏にかけて全国各地でアイスショーが開かれ、多くのファンが観戦に繰り出します。実は日本は世界でも有数の「アイスショー大国」。なぜ日本でアイスショーが広まったのか? アイスショーの進化の歴史とは?

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アイスショーで演技する本田真凜=2017年7月7日、遠藤啓生撮影
アイスショーで演技する本田真凜=2017年7月7日、遠藤啓生撮影 出典: 朝日新聞

日本はアイスショー大国?

 フィギュアスケートは冬のスポーツですが、ファンはオフシーズンにあたる春から夏にかけても大忙しです。なぜならこの時期、日本では怒濤のようにアイスショーが開催されるからです。

 昨年、国内で開かれたアイスショーは約70公演。1日2公演あるショーもあり、日数では約50日で、1週間に1回開かれている計算になります。

 昔はこれほど多かったわけではありません。アイスショーは、世界で活躍する日本人選手が増えるにつれ、広まりました。

 1992年に五輪銀メダリストになった伊藤みどりさんの活躍でフィギュアスケートが国内に広まり、選手たちの才能が開花していきます。

 2006年には荒川静香さんが五輪金メダル、そして浅田真央さん、高橋大輔さん、羽生結弦選手など世界のトップで活躍する選手が次々と現れ、フィギュアスケート熱の高まりとともに、アイスショーが増えていったのです。

アイスショーで演技する荒川静香さん=2017年4月29日、横浜市
アイスショーで演技する荒川静香さん=2017年4月29日、横浜市

約40年の歴史があるアイスショー

 国内で最も歴史が古いのが、プリンスアイスワールドです。その始まりは1978年で、来年40周年を迎えます。約50名のプロフィギュアスケーターが集まり、日本初のアイスショーを東京・品川で開催しました。

 始まった当初からエンターテインメント色があり、伊藤みどりさんを迎えてミュージカル仕立てにしたり、八木沼純子さんをチームリーダーとしてショーをつくったりするなど、アイスショーの魅力を高めてきました。

1990年のプリンスアイスワールド
1990年のプリンスアイスワールド 出典: プリンスホテル提供

バク宙に大歓声

 現在、プリンスアイスワールドチームは24人。4月になるとチームが結成され、最初の公演となる4月末に向け、約3週間で集中的に練習し仕上げます。

 日中は他の仕事をしている出演者もいるため、練習が深夜から早朝に及ぶこともあります。今季は4都市26公演あり、公演を重ねていくにつれ演技に磨きがかかっていきます。

 団体で滑るプログラムが中心で、隊形を円や横一列など次々と変化させていく演技は圧巻です。チームリーダーの小林宏一さん(32)は、「ひとりひとりのレベルが高く、チームのレベルが上がってきている」と話します。

 今年も全日本選手権経験者が加入するなど、チームの底上げにつながっています。小林さんも全日本選手権経験者で、ジャニーズJr.に所属していたことも。バク宙が得意で、毎回大歓声を浴びています。

 ゲストスケーターが注目されがちですが、プリンスアイスワールドチームの個々人の人気も高まってきています。

プリンスアイスワールドでバク宙を披露する小林宏一さん=2017年5月3日
プリンスアイスワールドでバク宙を披露する小林宏一さん=2017年5月3日 出典: 朝日新聞
息の合った演技を見せるプリンスアイスワールドチーム=2017年5月3日
息の合った演技を見せるプリンスアイスワールドチーム=2017年5月3日

海外と比べてもケタ違い

 一方、海外でのショーはどのような感じなのでしょう?

 北米では、毎年、国内外のトップスケーターがツアーで回る「スターズ・オン・アイス」が有名で、30年の歴史があり、日本でも開催されます。

 欧州には、ドイツやフランスなどを回る「Holiday on Ice」や、イギリスで7~9月に開催される「Hot Ice Show」といった伝統的なアイスショーがあります。

 また、スイスで開かれる「アート・オン・アイス」では、高橋大輔さんが招待されると、日本から多くのファンが駆けつけました。トリノとソチ五輪で金メダリストとなったエフゲニー・プルシェンコさん(ロシア)によるスペクタクルなアイスショーもファンの間で話題になりました。

 ほかにイタリアや中国などでも行われています。

 ただし、日本と違って、毎週のようにトップスケーターによる同規模のアイスショーが開かれている国はありません。

 チケットが完売になる公演があるほど人気の日本のアイスショーは、やはり世界でも特別だと言えます。

日本で開かれた「スターズ・オン・アイス」で演技する(右から)羽生結弦、浅田真央と町田樹=2014年4月11日、杉本康弘撮影
日本で開かれた「スターズ・オン・アイス」で演技する(右から)羽生結弦、浅田真央と町田樹=2014年4月11日、杉本康弘撮影 出典: 朝日新聞

海外のスーパースターがこぞって日本に

 数多くのアイスショーが開かれるようになった日本には、五輪や世界選手権のメダリストをはじめ、世界のトップスケーターが次々と来日しています。

 エフゲニー・プルシェンコさん、トリノ五輪銀メダリストのステファン・ランビエルさん(スイス)、リレハンメルと長野五輪銅メダリストで今もなお日本で人気のあるフィリップ・キャンデロロさん(フランス)……。

 テレビで見ていた憧れのスケーターを目の前で見られる機会が増え、ファンも足を運ぶようになりました。

アイスショーの専門誌まで登場

 アイスショー人気の高まりで、専門の冊子も登場しました。

 フィギュアスケート専門誌「ワールド・フィギュアスケート」(新書館)は2015年に「アイスショーの世界」を刊行。現在、第4弾まで発行されています。アイスショーの紹介やスケーターのインタビューなど盛りだくさんの内容になっています。

アーティストと共演、歌舞伎とのコラボも

 4月末のプリンスアイスワールドを皮切りに、アイスショーが続きます。その中で最も豪華なアイスショーといっても過言ではないのが、「ファンタジー・オン・アイス」です。

 五輪や世界選手権のメダリストらが出演するほか、歌手やピアニストなどアーティストとのコラボレーションもあります。宙を舞ったり、氷上でアクロバティックなパフォーマンスをしたりと、驚きのプログラムもあります。今年は5、6月に千葉・幕張、神戸、新潟で開かれ、羽生結弦選手も出演しました。

 浅田真央さんが出演するアイスショーといえば、「THE ICE(ザ・アイス)」。今年は、現役引退後初のアイスショーとあり、注目が集まりました。大阪と名古屋であった公演で浅田さんは、現役最後の曲となった「リチュアルダンス」や「Wind Beneath My Wings」などを感謝の思いを込めて披露しました。

 ほかにも、国際大会で活躍する選手に加えジュニアやノービスの上位選手も出演する「ドリーム・オン・アイス」や、荒川静香さんを中心とした「フレンズ オン アイス」、クリスマスの時期に開かれる「クリスマス オン アイス」などがあります。

 今年は、歌舞伎とのコラボレーション「氷艶 hyoen2017 -破沙羅-」が開催されるなど、アイスショーの世界は進化し続けています。

 地元ファンの声援を受け、アイスショーを披露する浅田真央さん(左)=2017年8月4日、名古屋市、吉本美奈子撮影
地元ファンの声援を受け、アイスショーを披露する浅田真央さん(左)=2017年8月4日、名古屋市、吉本美奈子撮影 出典: 朝日新聞

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