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本当にいた!「機密費」目当てに近づくやから…官房長官の「断り方」
内閣の中でも「実力者中の実力者」と言われる官房長官。巨額の機密費目当てに「すり寄ってきた」きた人にはどう対処するのか? 連日、開かれる記者会見を見る時の「ヒント」は? 官房長官経験者に話を聞きました。(朝日新聞政治部デスク・林尚行)
話を聞いたのは、第1次安倍政権で官房長官を務めた塩崎恭久衆院議員です。
――総理大臣を支えるこの官房長官という役職ですが、最も気をつけていたことは何でしょうか?
「まず1日2回、記者会見があります。ここが、国民との接点になるので、官房長官室で色んな打ち合わせをします。できる限り5階の官房長官の部屋から会見の部屋まで行く間に気分を切り替える。明るく元気に国民にメッセージを送るように、頭の切り替えをしていくことを、一番、気をつけていました」
――官房長官をされていた中で、最も印象に残っている記者とのやりとりは?
「全く準備しないで、聞かれることが時々ありまして。2006年、レッドソックスに松坂大輔投手が移籍することについてどう思うか、聞かれました。あまり知らなかったので、やや苦し紛れではありましたが、レッドソックスがずいぶん強くなってきていた、そういうところに日本人のメジャーリーガーとして行く人が出てきたって言うのが大変うれしかったので、そういうこと申し上げました」
次は……気になる官房機密費費について。
――ぶっちゃけ、機密費目当てで寄ってくるような人というのはいるんでしょうか?
「機密費は、国益のために有効に使うと言うことが基本です。従ってそれに反するような使い方を、何となくお願いをしてくるような人も、なかったわけではないよな記憶が、薄らあります」
――そういうときはどうやってお断りするんですか?
「なるべく失礼がないように、しかし、国益にかなっていないんだったらやっぱりそれは申し訳ないんだけれども、そういうことにはならないっていうことは明確に言わないとおけない。と思いますが、上手に言わないとやっぱり、人間関係が大事ですし、官房長官が自ら、人間関係を難しくするようなことではいけないので。そういうところはまあ注意をしながら、やってきたというところであります」
――官房長官にとって、最も必要な素質を漢字一文字で表すとしたら?
「漢字一文字で言えば『忍』。しのぶ、忍耐の忍、この1字かなあ、と。総理が考えている政策ができるように、官房長官はまさに、しのびのように、黒衣のように環境作りをして、政策が実現するように仕事をする」
「それからまあ、忍耐って言うのも必要で。もちろん、記者会見で記者さんから追及を受けるって言うときも、忍耐が必要ですけど。やっぱり政策をとりまとめるのに当たっても、忍耐って言うのが必要なんですね。各省庁にまたがる政策は、やはり官房長官がまとめないといけないので。そこのところはまあ忍耐強くやっていかなければいけない」
「もう一つは、我慢をしないといけない。堪忍袋の緒が切れてはいけないので、堪忍って言うのも必要であります。平静心を失わない、そういうことも大事だなあ、心がけなければいけない、と思うんですね」
――官房長官をやっていて、この仕事はイヤだったなあ、と思うことは?
「当時、官房長官は、基本的には東京を離れることはありえない、と言う世界でした。地元にも、合計4回1年間で帰りましたが、そのうち自分のために帰ったのは1回だけでした。東京を動けないということになると、なんとなく閉塞(へいそく)感があって」
「建物も官邸や議員宿舎、ホテルの会議室とか、そういうところに閉じこもっていることが多いんですね。総理官邸の建物の中に官房長官の公邸があるんですが、そこでじっとしているのも、なかなかつらかったですね」
――官房長官の会見を見るときのヒントみたいなものがあったら教えていただけますか?
「(会見内容が公開されている)官邸のホームページを見ていただける方は、限られた方々ではないかと思うんですね。12時のニュースで『あ、俺が出てる』みたいな、感じでしたが、問題はその、切り取って流れるもんですから、新聞にも同じように切り取られて流れて、前後のことが分からないままに切り取られて発言を流されると、少しやっぱり、正確性を欠くときがあって」
「それが割合大事なときがあるんですね。ですから、官邸のホームページをごらんいただくときは、少し流れを見てみると『あ、こういうことなのか』というのが分かるような気がします。やはり全体の流れが、一番正確なことを伝えられているんだろうと思うので」
「最近はスマホでも見られちゃいますから、色んな所で見ていただけたらありがたいなと思いますね」