MENU CLOSE

エンタメ

「脱さっしー」迫られるHKT48 まるでアップル? 集団体制を模索中

2016年11月にあったHKT48の5周年記念公演に登場した指原さんとHKT48のメンバー
2016年11月にあったHKT48の5周年記念公演に登場した指原さんとHKT48のメンバー 出典: 朝日新聞

目次

 カリスマなき後、組織の発展をどう続けていくか。これ、ビジネスの話ではありません。福岡を拠点に活動6年目を迎えたアイドルグループHKT48。指原莉乃さんという強烈なカリスマに率いられてブレークした今、「脱さっしー問題」に直面しています。カリスマ経営から集団体制へ。それぞれの個性を打ち出そうと模索するメンバーに話を聞きました。

【PR】手話ってすごい!小学生のころの原体験から大学生で手話通訳士に合格

乃木坂・欅坂・STU…ライバル次々

 競争が激しいアイドルの世界。乃木坂46、欅坂46など「坂道」の人気沸騰に加え、AKB48グループ内でも瀬戸内各県で活動するSTU48をはじめ、HKTの後にも姉妹グループが次々に誕生しています。

 今後の活動を語る上で抜きにできないのが指原さんの存在です。

 「指原さんがSTUと兼任になり、HKTはここが一つのターニングポイント。いかに自分たちが動いていけるかが一番ファンのみなさんが見たい所だと思う」と2期生の渕上舞さんは言います。

 2012年6月にAKBからHKTへの移籍が発表された指原さんは当時から高い人気を誇りました。HKTの劇場支配人兼任になり一層手腕を発揮し、ライブではパフォーマンスに加え、MCで笑いを取り、セットリストも手がけます。

 「さしこちゃんに頼っているのが一番大きい。コンサートもさしこちゃんが言ったことに基づいてみんなが行動する感じ」と3期生の田中美久さん。渕上さんは「全体を見る力がすごい。隅々まで色々なメンバーのことを見ている」と言います。

HKT48のメンバー、左から本村碧唯、渕上舞、森保まどか、田中美久のみなさん
HKT48のメンバー、左から本村碧唯、渕上舞、森保まどか、田中美久のみなさん 出典: 朝日新聞

グループとしての力を意識

 指原さんの求心力は全体を引っ張るリーダーシップだけではありません。時には、細かな心遣いも見せます。

 4月にさいたまスーパーアリーナであった多田愛佳さんの卒業コンサートでは、事前の握手会で指原さんが直接、多田さんを熱心に応援してきたファンから聞きたい曲をひそかにリサーチ。「涙のシーソーゲーム」など希望した曲が本番で披露されると、「昔からの愛ちゃんファンは大喜びだった」(ファンの一人)といいます。

 1期生の森保まどかさんは「いつまでも頼り切りな訳にはいかない。1期生同士で話し合う機会も増えています。こんなにお世話になっている存在だから。個々がしっかり独立してがんばって、それがグループとしての力になる姿を見せていければ、さっしーも安心してくれると思います」と話します。

 今年の選抜総選挙で3年ぶりにアンダーガールズ(32~17位)に復帰。20歳になった今年を「勝負の年」と位置づける森保さん。特技を生かして制作が続く「ピアノアルバムを今年中に発売できたら」「夢であるモデルや演技のお仕事もして、その活躍をHKTに還元したい」と決意を口にしました。

 田中さんは「身近で見てきて、さしこちゃんは発信力がすごい」。HKTのSNSの発信力強化を意識しているそうです。

HKT48の1期生の森保まどかさん
HKT48の1期生の森保まどかさん 出典: 朝日新聞

「力を合わせてがむしゃらに」

 その田中さんら若手の「フレッシュメンバー」24人は7月のイベントが盛況で、9月に博多座(福岡市)でコンサートを行うことが決まりました。

 「(さっしーのような)引っ張ってくれるメンバーがいないので、2期生のめるみお(田島芽瑠、朝長美桜)さんとか3期生で協力し、発言することが増えている。変わっていくのを感じるので、力を合わせてがむしゃらに上を目指すしかないです」

 劇場公演も今秋から新たにパピヨン24ガスホール(福岡市博多区)でも行うことになりました。

 グループが今後、目指す道としてヒントになりそうなのが「集団体制」への移行です。

 「ずっと(さっしーに)頼り切りじゃ駄目。フレッシュにはフレッシュならでは、大人メンバーはベテランならではの落ち着きや安定感のあるものが出来ると思う」と語る本村碧唯さん。

2017年4月にさいたまスーパーアリーナであった、多田愛佳さんラストコンサート
2017年4月にさいたまスーパーアリーナであった、多田愛佳さんラストコンサート 出典: 朝日新聞

任天堂、カリスマから集団指導体制へ

 リーダーである指原さんの存在感が大きくなる中、危機感が芽生え始めているHKTのメンバーたち。グループの将来を考えると、「カリスマ指原」依存からの脱却を真剣に考える時期に来ているのかもしれません。

 ビジネスの世界で「脱カリスマ」を進めた企業として有名なのは任天堂です。

 ファミコンの生み出しテレビゲームの土台を作り上げた山内溥氏。2002年に引退する際、創業者一族でもある山内氏が掲げたのが「集団指導体制」への移行でした。

 山内氏の後を継いだ岩田聡氏はプログラマー出身。現場の声に耳を傾けながら「ニンテンドーDS」や「Wii」のヒット商品を生み出しました。

 岩田氏が急死すると、君島達己氏が社長に。ゲーム機開発部門を率いていた竹田玄洋氏と、自社ソフト開発部門のトップを務めていた宮本茂氏との「トロイカ体制」となりました。

任天堂のカリスマ経営者として知られた山内溥氏=2002年5月24日
任天堂のカリスマ経営者として知られた山内溥氏=2002年5月24日 出典: 朝日新聞
任天堂の社長が31日、半世紀以上務めた山内溥(ひろし)氏(74)から、岩田聡(さとる)氏(42)に代わる。岩田氏が入社約2年で役員最年少であり、鮮やかな交代にもみえる。だが実際には、有力候補だった娘婿と食い違いが生まれるなど、さすがの「カリスマ」山内氏も後継者育成には相当苦悩した跡がうかがえる。
2002年5月31日:カリスマ山内氏悩み決断 任天堂社長人事(ニュースX線):朝日新聞紙面から
70歳ごろから変化の激しいゲーム業界で戦う気力の衰えを感じ、後継者選びを意識したが、実は「これといっていい人間が見当たらなかった」という。山内氏は「退任後は集団指導体制」と言いながら、決断時期を先延ばしにする形が続いた。
2002年5月31日:カリスマ山内氏悩み決断 任天堂社長人事(ニュースX線):朝日新聞紙面から
2000年に任天堂に入社。同社を一大ゲームメーカーに育てた故山内溥氏の後を継いで、02年に社長に就いた。世界中で大ヒットしたゲーム機「ニンテンドーDS」や「Wii」の開発、販売などで同社を発展させた。
2015年7月14日:岩田聡さん死去 DSやWii開発:朝日新聞紙面から
任天堂は14日、7月に急死した岩田聡社長の後任として、経営統括本部長などを務める君島達己常務(65)を16日付で昇格させる人事を発表した。突然のトップ不在の事態を乗り切るため、銀行出身で経営全般に目配りしてきた君島氏を、ゲーム開発の2トップが支える「トロイカ体制」で臨む。ゲームの開発者出身で、商品のPR役も務めた岩田氏とは対照的に、君島氏は「黒衣タイプ」だ。旧三和銀行出身。米ニューヨーク支店などに勤務した経験を買われ、山内溥・元社長の招きで任天堂に入った。米国で営業などを経験した後、本社で財務や経営管理を担当した。14日の記者会見では、「全社を見てきた経験を生かし、新製品づくりを支えるのが私の役割だ」と話した。ゲーム機開発部門を率いていた竹田玄洋専務(66)と、自社ソフト開発部門のトップを務めていた宮本茂専務(62)は、新設の「フェロー」として代表取締役にとどまる。部門を管理するというよりも、より自由に開発に携わる立場だ。
2015年9月15日:任天堂社長に君島氏 銀行出身、財務など担当 開発2トップを支える:朝日新聞紙面から

アップルではジョブズ氏からクック氏へ

 アップルの創業者スティーブ・ジョブズ氏が、ティム・クック氏に引き継いだ際も「集団指導体制」への移行として注目されました。

 交代直後にあった「iPhone4S」の発表では、クック氏ではなくマーケティング担当幹部のフィル・シラー氏がプレゼンに登場するなど、カリスマ依存からの変化を印象づけました。

 一方で、クック体制のアップルからは、ジョブズ氏が生み出したような革新的な製品が生まれていないという指摘も根強くあります。

プレゼンをするジョブス氏=2002年1月7日、ロイター
プレゼンをするジョブス氏=2002年1月7日、ロイター
ジョブズ氏は社員らにあてた手紙で無念さをにじませた。体調が思わしくないことをうかがわせる。後任には最高執行責任者(COO)のティム・クック氏(50)が就いた。IBM、コンパック(現ヒューレット・パッカード)を経て1998年に入社。生産や販売などの実務を長年担い、ジョブズ氏が厚い信頼を置いてきた。だが、すべてを仕切ってきたジョブズ氏の代わりにはなれない。製品デザイン担当のジョナサン・アイブ氏、マーケティング担当のフィリップ・シラー氏らとともに「集団指導体制」に移行するとみられる。
2011年8月26日:アップル、求心力試練 ジョブズCEO退任 集団指導に移行か:朝日新聞紙面から
目玉の「4S」の説明ではマーケティング担当幹部のフィル・シラー氏が登場。「集団指導体制」を改めて印象づけた。
2011年10月5日:新iPhone、堅実型 「4S」14日発売、auも参入 全面刷新せず処理能力向上:朝日新聞紙面から

「今が一番頑張りどき」

 ITやゲーム業界と同じように、競争が激しいアイドルの世界。立ち止まるとすぐに、他のグループにファンが流れることも日常茶飯事です。

 HKTが8月2日に発売したシングル「キスは待つしかないのでしょうか?」はグループにとって10作目。一つの節目を迎えたなか、どう成長していくかがポイントになっています。

 折しも、春以降、指原さんはSTUに加え、8月に行われたTIF(TOKYO IDOL FESTIVAL)のチェアマンを務めるなど「アイドルの頂点」と呼ばれるほど活動の幅が拡大。メンバーはいや応なく「脱さっしー依存」に向き合うことになりつつあります。

 HKTのメンバーで作るチームKⅣのキャプテンもつとめる本村碧唯さんは、危機感を隠しません。

 「今が一番頑張りどき」

 カリスマがいなくてもグループの価値を生み出せるのか。アイドルグループHKT48の「脱さっしー」問題は、個々のメンバーの活躍にかかっているようです。

関連記事

PICKUP PR

PR記事

新着記事

CLOSE

Q 取材リクエストする

取材にご協力頂ける場合はメールアドレスをご記入ください
編集部からご連絡させていただくことがございます