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慰安婦合意 韓国にくすぶる不満 日本「理解できず」 共同世論調査
お隣同士だけど、時々もめてしまう日本と韓国。両国の国民は、実際のところお互いをどう思っているのでしょうか。そんな興味深い世論調査が、日韓の団体によって発表されました。もちろん日韓関係が大事だと考える人は双方に多いのですが、ちょっと際どい質問への答えに注目してみました。
調査したのは日本のNPO「言論NPO」と韓国のシンクタンク「東アジア研究院」。各国で千人ずつから回答を得る共同世論調査を4年前から毎年しています。今年も6~7月に18歳以上に聞きました。
まず、相手国への印象が「良くない」という人は日本側が48%、韓国側が56%。「良い」は日韓ともその半分ぐらいの26%です。では、「良くない」と答えた人の理由は何でしょうか。
複数回答で一番多かったのは、日本側は「韓国が歴史問題などで日本を批判し続けるから」(76%)。韓国側は「韓国を侵略した歴史について正しく反省していないから」(80%)でした。
調査結果を21日の記者会見で発表した言論NPOの工藤泰志代表は、これを「ミラー効果」と呼びました。韓国人を嫌う日本人が多いのは、日本人を嫌う韓国人が多いと思って、鏡のように反応してしまうからだという説明です。
ただ、会見に同席した東アジア研究院の孫洌・延世大院教授は「それは本当の韓国人の姿でしょうか」と疑問を示しました。実際、4年前と比べると、韓国側で日本を「良くない」と思う人が76%から20ポイント減っています。それでも日本側で韓国を良くないと思う人は37%から10ポイント増えています。
2人がともに指摘したのは、メディアの影響でした。相手国についての情報源を複数回答で聞くと、両国とも「自国のニュースメディア」が9割超でダントツ。「自分を嫌う相手」がメディアを通じて間接的に印象づけられるというわけです。
旅行などで相手国を訪れた経験のある人の方が好感度が高まるという調査結果も示されました。韓国人の日本訪問者が増え、日本人の韓国訪問者が減少傾向にあることとあわせて考えれば、最近のお互いへの印象の変化が説明できると工藤代表は指摘。「お互いに訪問したり、知人がいたりする直接交流が盛んになることで、相手国への感情も変わってくる」と話しました。
次に、相手国の社会・政治体制をどうみているかです。複数回答で、日本側は韓国を「民族主義」とみる人が48%で最多。これは朝鮮半島に住む人々の民族的な結びつきの強さからわからなくはないですが、では、韓国側で最多の49%を占めた「日本といえば」の答えは――。何と「軍国主義」でした。
孫教授は「軍国主義という言葉の使い方が間違っている」と述べつつ、安倍政権の姿勢との関係を指摘しました。「平和主義の日本が安倍政権で軍事的な能力を拡大していることへの懸念を表す、ぴったりした言葉がなくて、『軍国主義』を選んだのだろう」
この世論調査を続けている4年間は安倍政権と重なっており、韓国側で日本を「軍国主義」とみる人が最も多いことは変わっていません。ちなみに韓国側で安倍晋三首相の印象を「悪い」と答えた人は80%。就任間もない文在寅大統領に対する日本側の印象は「どちらともいえない」「わからない」が計59%でした。
両国の連携が必要な北朝鮮の核開発阻止は、どうすればいいでしょうか。日本側では「中国のより積極的な役割」(25%)や「米朝直接対話」(21%)と米中を頼りにする様子が目立ちましたが、韓国側では「(北朝鮮の核・ミサイル問題をめぐる)6者協議などの外交努力」(35%)や「制裁強化」(26%)という答えが多く、朝鮮半島の問題として自ら関わって解決するんだ、という姿勢が見て取れました。
一方、日韓両国民が軍事的脅威を感じている国はどこでしょう。日韓とも複数回答で、北朝鮮が8割、中国が5割前後でした。中国という答えは、昨年は日本側で72%、韓国で36%と倍の開きがあったのですが、大きく変わりました。
今年にかけて、日本側では中国の海洋進出よりも北朝鮮の核・ミサイル開発への懸念が高まる一方で、韓国側では中国が在韓米軍へのミサイル防衛システム導入に反対して経済面などで韓国に圧力をかけることへの反発が出ています。「それで中国を脅威とみる割合が日韓で近づいたのでは」と言論NPOではみています。
それでは、脅威に対抗するために核兵器を持つべきでしょうか。そもそも日韓はともに核不拡散条約(NPT)に「非核兵器国」として加盟し、米国の「核の傘」の下にあるので考えにくい選択肢です。「日本の核武装」には日韓とも反対が7割超でした。ところが「韓国の核武装」では日本側は反対が8割近くでしたが、韓国側は賛成が7割近くと立場が分かれました。
最後に慰安婦問題です。日韓両政府は一昨年末の外相会談で慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的」な解決を確認しました。日本政府は旧軍が関わった責任をふまえて元慰安婦の支援に資金を拠出し、韓国政府はソウルの日本大使館近くの「少女像」設置問題の解決に努力するこという合意です。ところがその後に釜山の日本総領事館前にも「少女像」が置かれ、混乱が続いています。
今回の世論調査では、慰安婦問題が「日韓合意では解決されなかった」という回答が日本側53%、韓国側75%にのぼりました。日韓合意については「評価する」が日本側41%、韓国側21%。「評価しない」が日本側25%、韓国側55%と日韓で反応がわかれました。
韓国側に理由を複数回答で尋ねると、「評価する」の最多は「歴史問題がこれ以上日韓関係を妨げるべきでない」の65%、「評価しない」の最多は「慰安婦の意見を反映させずに合意した」の77%でした。日本側に日韓合意に対する韓国側の不満をどう見るかを聞くと、「理解できない。合意を履行すべき」が最多の49%、「なぜ不満があるのかわからない」の22%が続きました。
孫教授は、韓国側の日韓合意への不満の強さについて「密室交渉だとか、歴史問題に不可逆的な解決などないといった批判がある」と説明。ただ、文氏が大統領選で公約した「再交渉」についてはこう語りました。「韓国側に具体案はなく、安倍政権の特徴も考えれば本質的な和解は難しい。元慰安婦の意見を聞いてみる手はあるが、正直、答えのない問題だ」
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