多くの企業が選考を開始した6月1日からおよそ1カ月。ドキドキの毎日を送る就活生の中には、外国人留学生もいます。新卒一括採用、エントリーシート、服装・・・何かとルールが多い日本の就活に戸惑う留学生も少なくないようです。そんなYOUたちに、日本の就活でヘンだと思うところを聞いてみると、日本人も共感できるところが・・・。
6月のある日、高田馬場の貸会議室でASEAN(東南アジア諸国連合)出身の留学生向けの就活セミナーが行われました。
就活セミナーを受講した、まさに就職活動中のベトナム出身の学生3人と、就職活動を終えたタイ・ベトナム出身の2人の学生・社会人から、日本の就活で「ヘンだな」と思うところを教えてもらいました。
自分を企業に売り込むための自己PR。グループ面接で「リーダーシップの経験を教えてください」と聞かれたけれど、リーダーの役割を果たしていた人ばかりではないはず。
それでも他の日本人は得意げに答えていて「本当にそうなのかな」と疑問に思ったそうです。
留学生がそう思ったのは、日本の学校の先生の言葉でした。
素直な気持ちでエントリーシートに記入し、学校のキャリア相談の先生に確認してもらったところ、「あなたはそう思ったかもしれないけど、面接ではマイナスかもしれない」と、もっと内容を変えて強くアピールするようにアドバイスされたといいます。
「ウソをつくことが前提みたい」と困惑していました。
専門的な知識を必要とする職業を除いて、さまざまな部門をローテーションする「総合職」の働き方や採用についても意見が。
「母国では就職したときの部門や仕事内容がわかっている状態で申し込む。だから面接も仕事内容に即した内容が多い」といいます。
「どんな業種の企業でも、自己PR、学生時代頑張ったこと…全く同じ質問ばかり聞かれる」と不思議に感じたそうです。
日本の企業では新卒採用には現在の能力だけではなく、成長の可能性があるかを見られるといいます。その中でいかに自分の短所を知り、どう向き合い改善しているか、という姿勢も問われる場合があります。
これに対しては、「仕事には関係ないのに、どうしてそんなことまで毎回聞かれるのかわからない」と話します。
更には「本当に自分が短所だと思っているところを素直には話したら落ちそう」と正直な気持ちも明かしました。
履歴書のほかに、日本では企業が用意した質問に答えるエントリーシートを提出することが多いです。一方でタイやベトナムでは学歴や職歴を記入する履歴書のみ。
またエントリーシートは電子データではなく、手書きを求められることも驚いたそうです。
学校のキャリアサポートの先生から「手書きの方が印象がいい」と言われて挑戦したが、日本語で書くには一苦労。
少しでも間違えると全部書き直しで、「とても疲れるので電子データにしてほしい」といいます。
日本では一般的に大学を卒業する1年ほど前から就職活動を開始します。
これに対してタイやベトナムでは卒業後、自分のタイミングで仕事を探して就職するといいます。
旅行に行くなどして、卒業後半年くらいの間で就職する人が多いそうです。
株式会社リクルートキャリアの調査によると、2017年卒業の就活生は1人あたり平均37.9社にエントリーしています。
留学生は一般的なエントリー数を知って日本の就活の厳しさを感じたそう。
「不採用だったら落ち込むけど、落ち込んでもいられないなって思った」といいます。
日本では近年黒い無地のスーツを着用する就活生がほとんどです。また髪形も黒髪で、男性は短く、髪の長い女性はポニーテールがスタンダードになっています。
一方でタイやベトナムでは特に服装は決まっていないそう。
最初見たとき、「みんな同じ格好でロボットみたい」と思ったそうです。
スーツ売り場で店員に黒スーツを勧められた人は、「ヒールの高さも決まっていてルールが厳しい。値段も結構高い」と唖然としたといいます。
驚いたのは「スカートが長い」という意見。ある女性は「母国のスーツのスカートはもっと短い。座ると下着が見えそうだから日本のスーツは楽」と話します。
こんなにヘンだと感じているところがありますが、母国の就活でも取り入れた方がいいことはありますか?と聞いたところ、「基本的には母国の就活の方が楽」と言いつつも、「ある」という答えも返ってきました。
日本は大学のサポートやセミナーも充実しており「就活を通して社会人としてのマナーを覚えられるところがいい」と話します。
ベトナムの学生が企業に履歴書を送るときは、最初どうしたらいいかわからないそう。とりあえずメールに書類を添付して、件名も本文もなく送ってしまうことも。
また、一括採用して研修が手厚いことも魅力だといいます。
「母国ではあらかじめ決められた業種・職種で募集があり、それができるスキルを持った人が応募して合格する。そして実際にその仕事をする。日本は研修も職場のローテーションもあって、働いてから得意/不得意がわかるので、自分の新しい能力が発見できていい」と肯定的です。
他に「自分の成長につながった」と話す人もいます。
「面接では時事問題なども聞かれる。今まで興味のなかった社会的な問題や国際情勢も知っておかないといけないと感じて勉強したので、知識が増えた」といいます。
日本政府は2008年、「留学生30万人計画」を公表しました。2020年までに留学生の受け入れ30万人を目指すというものです。
日本学生支援機構の調査によると、留学生の数は2012年度の16万人から増え続け、2016年度には23万人まで増加しました。
また法務省の発表によると、2015年に日本での在留資格を「留学」から就労資格へ変更する申請をし、許可された外国人の数は15,657人でした。2014年の約20%増です。
その約95%がアジア出身で、中でもベトナムは前年比88.7%増となり特に急増しています。