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フォロワー6千万 中国のトップ芸人が「たけし」に共感する理由
人口14億人の中国で、最も人気のある漫才師と言われる郭徳綱(グオ・ダーガン)さん。家賃も払えなかったという下積み時代から、今や100人を超えるメンバーを率いるまでに。中国版ツイッターのフォロワー数は6771万人を超えています。人気が出るきっかけもインターネットだったそうです。「尊敬する芸能人はビートたけしさん」。来日した郭さんに、中国でのお笑い文化、日本とのつながりを聞きました。
郭徳綱さんは1973年生まれの44才です。天津市出身で、7才から歴史物語を講談風に語って聴かせる「評書(ピンシュー)」などの口芸を学びはじめました。
16才の時に漫才(中国語で「相声=シアンション」)を教わり、その後は天津や北京などを転々としました。
「相声」は清王朝の末期から発展したと言われており、150年の歴史があります。しかし、1990年代には、テレビに人気を奪われ、有名な漫才師(相声俳優)も職を変える人が大勢、出ました。
郭さんも北京の茶館に身を寄せ、茶館のお客を相手に芸を披露し続けました。ひどい時は、観衆が一人しかいない日もあり、家賃を払うお金もなかったそうです。
それでも茶館でコツコツと芸を磨きながら、1996年、数人の有志と一緒に相声の専門団体「徳雲社」(最初の名は「北京相声大会」)を設立。そんな郭さんの転機は、2005年ごろに訪れました。
中国でもインターネットが普及し、若者がネット上で郭徳綱さんや「徳雲社」の相声を視聴するようになり、相声人気が広がったのです。
ネット上で評判になったことがきっかけで、中国のマスメディアが郭さんと「徳雲社」を取り上げ、一気に有名になりました。
2013年には、中国の芸能界の「登竜門」と言われる中国中央テレビ局(CCTV)の春節聯歓晩会(NHKの紅白歌合戦相当)への出演も果たしました。
当初は3、4人しかいなかったメンバーも、今ではメインメンバーだけで100人を超えました。
「徳雲一隊」から「徳雲八隊」までチームが分けて中国各地で出演し、低迷した「相声」を蘇らせています。
今では、中国を代表する漫才師になった郭さんは、日本とも縁があります。
日本の漫才業界を描き芥川賞になった又吉直樹さんの小説『火花』。中国版を出版される際には、その序文を書いています。
そんな郭さんが、最も好きな日本人の芸能人は、ビートたけしさんです。
浅草のストリップ劇場で芸を磨いたビートたけしさん。その後、「たけし軍団」を作り、1986年にはフライデー事件なども。現在は監督、司会者として絶大な人気を得ています。
郭さんも、長い下積みの上、100人を超えるメンバーを率いる立場に。現地では、弟子の破門事件などで話題を集めたこともあります。そして、今や映画やテレビの司会者としても引っ張りだこです。
そんな似た経歴を持っていることから「たけしさんには、人気が出るまで苦労した点など、共感を持っています。好きだけでなく、尊敬すべき人だと感じています」と話しています。
徳雲社は現在海外でも活動を拡大しており、オーストラリアのメルボルンにも拠点を作っています。
今回の来日でも、東京・有楽町の5千人のホールが満員になる盛況ぶり。中国の「たけし軍団」が日本に進出する日も近いかも知れません。
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