話題
品薄商法?売れすぎて在庫切れ ネットの拡散「予測は本当に難しい」
食べ物や飲み物などの新商品が発売直後、売れすぎて販売を一時休止するケースがたびたび起きています。ネット上ではあえて生産数を絞って限定感をあおる「品薄商法」と指摘する声もありますが、実際狙っているのでしょうか。新商品の一部が、発売約1週間で3カ月間の販売休止になった湖池屋は「品薄を狙ったわけではない。ネットの拡散が想像以上だった。予測するのは本当に難しい」と話します。
湖池屋は今年2月、新商品のポテトチップス「KOIKEYA PRIDE POTATO」を発売しました。昨秋に大規模な組織改編をした湖池屋にとって、PRIDE POTATOは「新生湖池屋」を象徴する新商品です。「秘伝濃厚のり塩」「松茸香る極みだし塩」「魅惑の炙り和牛」の3種類が、2月6日に発売されました。
しかし、発売から1週間が過ぎた14日、湖池屋は「炙り和牛」の販売を一時休止することを発表。「当初の販売計画を上回り、十分な供給量を確保できない」とし、「のり塩」「松茸」に生産を集中して安定供給を図ると説明しました。
ところが6日後、「松茸」についても「供給が追いつかないため、販売を休止する」と発表。「松茸」は4月3日に、「炙り和牛」は5月29日に販売再開しましたが、炙り和牛については結局、3カ月以上欠品が続きました。
「我々にとっては、新生湖池屋の今後を占う商品。これがこけたら『湖池屋はダメだな』と思われてしまうので、気合に気合を入れた準備をして送り出した。結果的に一部の商品が届けられない事態になって、お客様にご迷惑をかけてしまったことは申し訳ない」
こう話すのは、湖池屋広報課の小幡和哉さんです。「品薄商法ではないのか?」と質問をすると、「我々としては、社運をかけて精魂込めた商品。狙ったわけではない」ときっぱり否定。「通常の新商品と比べて格段に高い目標を立て、供給する態勢は整えてきた」と説明しました。
その目標というのが初年度売り上げ2000万袋、金額にして20億円という設定です。業界的にも「ヒット商品」とされるこの目標を達成することを目指して、味やデザイン、CMやSNSでの宣伝など、準備に準備を重ねて発売したというPRIDE POTATO。しかし、消費者からの反響は予測をはるかに超えました。
「1カ月での販売見込みを、1週間で達成してしまった」と小幡さん。原材料の不足はありませんでしたが、新商品は専用ラインで生産していたため、予測を超えた発注に対応できず、生産設備を増強するまで、売れ筋の「のり塩」だけにせざるを得なかったということです。
それではなぜ、予測を誤ったのか。商品のインパクトやテレビCMの反響などの拡散が「ネット上で想像以上だった」と小幡さんは話します。
その拡散について、PRIDE POTATOや湖池屋などの単語が含まれた2月中のツイートを、米クリムゾンヘキサゴン社のSNS分析ツール「ForSight」でwithnews編集部が分析しました。ツイート数は発売直後から増えましたが、中でも大幅に伸びた日が2日ありました。
一つは、「炙り和牛」の販売休止を発表した14日です。ツイート数は前日の6倍以上にまで上昇しました。流通経済研究所の池田満寿次主任研究員は「販売休止になることで、『どんな商品なんだろう』と消費者の関心をさらに呼んだ」と分析します。
もう一つは、期間中で最多のツイート数を集めた23日です。この日の投稿を分析すると、「湖池屋ポテトチップスのCMで歌ってる女子高生が歌唱力すごすぎてみんな固まってる」とCMに登場した鈴木瑛美子さんに注目する投稿へのリツイートが多数を占めました。数日前にされた投稿が、この日にリツイートのピークを迎え、最終的には2万6千リツイート以上になりました。
発売開始からの口コミや、販売休止のアナウンス効果、テレビCMの話題性がSNS上で連鎖的に拡散し、「大反響は2月いっぱい続いた」と小幡さん。3月以降も売れ行きは衰えず、発売から4カ月後の6月6日には、年間目標の20億円を達成したと発表しました。
\夏至/
— コイケヤキャンペーン【公式】 (@koikeya_cp) 2017年6月21日
そして、スナックの日!!
(*´-`).。oO{ちなみにコイケヤポテトチップスの日は8月23日} pic.twitter.com/u5aeJsXbTI
一時的な販売休止が相次ぐことについて、池田主任研究員は、「SNSが普及する前は、テレビCMでどれだけ宣伝するかで販売予測が見込めたので、計画も立てやすかったが、ネットの口コミは良くも悪くも見込みを立てづらい」と分析。PRIDE POTATOのように、SNSで広がりすぎて、生産が追いつかなくなるケースは目立ちますが、「拡散させようとして、空振りしている新商品も多い」と話します。
また、「品薄商法」について池田主任研究員は、「一時的な話題になるかもしれないが、売り上げ機会を逃し、長期的な視点で見ればブランドイメージを損なう。デメリットの方が多い」と採用するメーカーはほとんどないと指摘しました。
小幡さんによると、湖池屋にとってここまでの反響があった商品は1984年発売の「カラムーチョ」以来だということです。「カラムーチョも口コミから広がったが、ネット全盛の今はそれが一瞬で拡散、爆発的に広がる。『プロなんだから、予測できるだろ』と言われますが、本当に難しい」と話しました。
1/16枚