話題
香港=進撃の巨人?「雨傘革命」リーダーがアキバで探した「未来」
香港がイギリスから中国に返還されて、7月1日で20年。2014年に香港であった「雨傘革命」(雨傘運動)を覚えていますか? 学生たちが香港の中心部を占拠、最大で30万人が参加したという運動を率いたのは、なんと当時の高校生。中でも筆頭格だった2人はアニオタだそうです。6月中旬に来日した彼らと東京・秋葉原(以下、アキバ)を歩いてみたら、アニメと「革命」の意外なつながりが見えてきました。(朝日新聞国際報道部記者・井上亮)
訪日したジョシュア・ウォン(黄之鋒)さん=男性=とアグネス・チョウ(周庭)さん=女性=は、ともに20歳。香港の大学に通う大学生です。
ジョシュアさんは雨傘運動を率いた団体のリーダーを務め、アグネスさんはスポークスパーソン(広報責任者)でした。
実は2人とも、香港では学生運動のカリスマ的存在なんです。
特に、ジョシュアさんは演説のうまさで知られ、多くの若者を鼓舞。香港だけでなく、世界中から注目されました。
2014年にはアメリカの雑誌「TIME」の表紙を飾り、同じ年にノーベル平和賞を受賞したパキスタン人女性のマララ・ユスフザイさんらとともに、「世界で最も影響力のある十代25人」に選ばれたほどです。
日本の学生団体「SEALDs」も強い影響を受けたと言われています。
さすがの有名人ぶりで、アキバを歩いていても、香港からの観光客にあっさり気づかれていました。
今回の来日でも、記者会見、東京大学での講演、各メディアへの取材対応など分刻みのスケジュール。
ですが、アキバ散策では2人ともリラックスした様子でした。
カリスマといえども、まだ20歳の若者ですもんね。
井上
ジョシュア
井上
ジョシュア
井上
ジョシュア
「進撃の巨人」の人類は、かつて巨人によって滅亡の危機に追い込まれたんですね。その巨人の脅威から逃れるため、人類は巨大な壁を建てた。
いつしか巨人の脅威を忘れ、平和な日々を送っていたが、100年ぶりに超大型巨人が現れ、壁を破壊してしまう。
その後の人類と巨人の戦いを描いたのが、この作品です。欧米やアジアでも出版され、世界で6千万部以上も売れている超人気漫画なのです。もちろん香港にもたくさんの愛読者がいます。
もう気づいた方もいるかもしれません。
そう、ジョシュアさんがこの作品を好きなのは、単純に面白いからでもありますが、自分たちの境遇と作品の世界を重ね合わせているからなんです。
つまりこういうことです。
「人類=香港に住む人々」
「壁=1国2制度」
「巨人=中国共産党」
イギリス支配のもと、自由と民主主義に親しんだ香港の人たち。
1997年の返還で中国は、香港に幅広く自治を保証する「1国2制度」を50年間続けると約束しました。
ところが、20年たった今、この制度が後退し、自由や民主主義が脅かされているとジョシュアさんたちは考えているんです。
このあと、ちょっと「進撃の巨人」のネタバレになります。未読の方はご注意ください。
※
※
※
※
※
※
※
※
※
※
「進撃の巨人」では、人類を巨人から守っていた壁が、実は巨人が作り上げたものだったということが後に明かされます。
ジョシュアさんたちはこう考えています。
「巨人が壁を破壊するので、人類は必死に守ります。ところが、壁は巨人が作ったものだった。
香港ではそれと似たようなことが起きています。
中国共産党が1国2制度という壁をつくり、香港人は壁が自分の街を守ってくれると思ったが、今は巨人である中国共産党が壁を壊しつつあるのです」
(6月15日の日本記者クラブでの記者会見で)
雨傘革命は、壁を破壊しようとする巨人と戦い、壁を守ることなんです。
ちなみに、ジョシュアさんはアキバをさんざん歩き回りましたが、進撃の巨人のコスチュームは見つからず。
代わりに登場人物「ミカサ」のフィギュア(税込み1944円)をお買い上げ。満足そうな笑顔を見せてくれました。
1/63枚