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「昼顔」中国で異常人気の理由 チケット5千枚、30秒で完売の事態に
上戸彩さんと斎藤工さんが主演する、禁断の愛の物語「昼顔」。実は中国でもとても人気があります。日本ではドラマの続編にあたる映画の公開が始まっていますが、このほど開かれた上海国際映画祭に、上戸さんらが出席。中国人記者がキャスティングについて尋ねると、西谷弘監督からは意外な答えがかえってきました。「上戸彩さんには最初、あっさり断られました……」。監督が思わず漏らした秘話、そして、そもそも何でそんなに人気なの?
6月17日に開幕したアジア最大級の映画祭である中国・上海国際映画祭。26日までの10日間で、約500作品が市内の映画館で上映され、35万人の映画ファンが世界中の映画を楽しみました。
今年で20回目の開催ですが、上海の風物詩としてすっかり定着しました。
上海国際映画祭では、12年前から「日本映画週間」も設けられ、最新の日本映画が紹介されます。
日中間が政治的に難しい時期も途切れることなく続きました。「文化交流こそ止めてはならない」という日中主催者の思いがあったからです。
近年の中国では、日本映画ブームが再び巻き起こっています。
公開作品数はしばらく年間数本という状況が続いていましたが、2016年は11本が公開されました。
とりわけ「君の名は。」は1億人以上が鑑賞し、中国で公開された日本映画の最高興行収入を記録する大ヒットとなりました。
今回の上海国際映画祭を伝える中国中央テレビ(CCTV)のニュースでも、「注目は日本映画」と紹介されたほどです。
さて、そんな「日本映画週間」には今年、8作品が集まりました。
浅野忠信さん、田中麗奈さん主演で8月日本公開予定の「幼な子われらに生まれ」(三島有紀子監督)や、三姉妹の成長と母親の絆の描いた「カノン」(雑賀俊朗監督)など実力作がそろいました。
中国人の一番人気は、テレビドラマが社会現象となった、現在日本でも公開中の禁断の愛の物語「昼顔」です。
上海国際映画祭では約5千枚のチケットが30秒で売り切れるという最速記録を樹立。
主演の斎藤工さん、上戸彩さんが舞台あいさつに訪れた17日の上映は、劇場前に100メートル以上の行列ができ、60元(約1千円)のチケットがダフ屋によって2千元(約3万2千円)で取引される事態となりました。
「昼顔」人気にはちょっとした理由があります。実は2014年に放送されたテレビドラマは中国でもとても流行りました。
もっとも、正式に放送されたわけではないのでみんな「何らかの方法」で見ていたわけですが。
同じ年に北京を訪ね、学生文化活動を視察した安倍晋三首相の昭恵夫人が、学生に「日本の何に興味を持っていますか?」と聞いたところ、「昼顔!」と返され困り顔になったこともありました。
今回の映画祭には、斎藤さん、上戸さん、西谷弘監督が出席。舞台あいさつ前の記者会見では、30を超える日中メディアが3人を囲みました。
ドラマ以来の2年ぶりの撮影について「最初のシーンですっと戻れた」(上戸さん)、「いろんな人の心の中で続いている作品だった」(斎藤さん)などと感想を述べた役者陣に対し、「なぜ2人をキャスティングしたのか」という中国テレビ記者の問いに、西谷監督は意外な事実を語りました。
「上戸彩さんは早めに決めてお願いに行ったら、最初はあっさり断られました」
西谷監督は続けます。
「不倫自体への嫌悪感があるようで『視聴者として見てます。頑張ってください、さようなら』みたいな感じだったのですが、不倫が心の中にない人が新しい感情を知っていく物語だったので『まさにそういう人が必要なんです。そのままでいいから』と何度もお願いして役を受けてもらいました」
「斎藤工さんは、女性プロデューサーの推薦でした。でもカッコ良すぎるし、色っぽいし、自分の中にある北野先生(斎藤さんの役名)のイメージとは当てはまらない気がしました。それでホテルのカフェで会って話してみたんです」
「その時、カッコ良いことも色っぽいことも演じてやっている人、常にどんな役にも染まる覚悟がある人だと分かりました。結果的に大成功のキャスティングでした」
今回の映画祭で高い評価を受けた「昼顔」には、中国全土での公開にも期待が集まっています。
フジテレビによると「中国での配給会社は決まったが、センサーシップ(検閲)はこれからで、劇場公開は未定」とのことです。
目下、中国政府は「反腐敗」政策に力を入れており、不倫にも厳しい態度で臨んでいます。
当局の審査でもやはりそこがポイントになりそうですが、中国の映画業界関係者は「作品性が正しく理解されれば認められるはず。ぜひ中国でも公開してほしい」と話しています。
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