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意識高いプレミアムフライデー、何が悪い? 仕事帰りに教養講座
月末の金曜日の仕事を午後3時に切り上げる「プレミアムフライデー」。政府や経済界は、消費拡大や働き方改革につなげようと期待しますが、盛り上がりに欠ける感は否めません。「飲み会、買い物だけではなく、こんな使い方もあるのでは」と提案する人に話を聞きました。
「コンテンツなしに、早く帰社させるっていう制度だけで、何かが変わるとは思えないですね」と断言するのは、IT企業「ストリートアカデミー」(東京)の藤本崇社長(41)。午後3時過ぎから居酒屋に行ったところで、滞在時間はそんなに変わらないし、百貨店に繰り出してもそうそう長くは滞在しない。
それよりは、軽い気持ちで楽しめる「学び」の時間として使っては、という提案をしています。
藤本さんは、「自分の持っているスキルで何かを教えたい」という人と、「それを学びたい」という人とのマッチングサイト「ストアカ」を運営。約1万2千の講座のうち、4月28日の前回は「プレミアムフライデー対象講座」として香水作りやDJ教室など7講座を紹介しました。
中でも、唎酒師(ききさけし)の資格を持つ同社幹部が講師を務める日本酒講座は、定員10人が女性中心に満員となる盛況。午後3時までとはいえ、働いた後は脳みそが疲弊しているため、難しい勉強よりは、単発でライトに教養を深められる講座が良いのでは、と考えています。
藤本さんがこんな取り組みをする背景には、「日本の働く人にはもっと自由になって欲しい。日本には、誰も縛っていないのに、縛られていると思い込んでいる人が多い」との思いがあるそうです。
転勤族だった親の影響で、中学1年から映画会社に入った社会人1年目まで、米国で過ごしました。ですが、元々映画が好きでせっかく映画業界に進めたのに、芽が出ないうちにその会社はクビに。日本で外資系企業に務めながら、映画の専門学校に通いました。
ところが、周囲は「君は昇進コースにいるんだから、そんなところに金なんか使うな」「見苦しいぞ」と諭してくるばかり。米国では「弁護士をしていた人が40歳から料理人になる」みたいな話を耳にすると、みんな「おめでとう!」「良かったじゃない、また好きなことに出会えて」と祝福してくれるのに……。藤本さんは「諭してくれた人が残念、というよりも、そういうことを言わざるを得ない日本の社会常識みたいなものが残念だとずっと思っていた」と言います。
そんな藤本さんも、一時は「周囲に迎合」。ビジネスに専念することを決め、米シリコンバレーにあるスタンフォード大学のビジネススクールに入学しました。すると、街に出れば大起業家のビル・ゲイツが普通にそこら辺を歩き、スティーブ・ジョブズとスーパーで出くわす「起業」が身近な環境。スクールの同僚も、クリエイティブに自らビジネスを始めている人たちばかりでした。
起業への意欲が膨らみ、36歳になった2012年7月にストリートアカデミーを立ち上げ、「何かをやりたいと思う人をいぶかしく思うような文化を変えられるよう、そういう人たちを後押しできるサービスを」とストアカを始めました。今や、登録ユーザー数は12万人以上を数え、講座がきっかけとなって起業した人や、人気講師となって本を出した人などもいるそうです。
藤本さんは「プレミアムフライデーは、やりようによってはまだまだ普及させられる。学び、という観点をぶつけていくことで、実は有意義な時間なんだと皆さんに認識してもらうことは可能だと思っています」と語ります。
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