IT・科学
石原さとみ、綾野剛…なぜSNSで「なりすまし」? 投稿者に聞いた
ツイッターやインスタグラムなどのSNSで、芸能人の名前や画像を使った「なりすまし」が後を絶ちません。なぜ、なりすましをするのでしょうか。投稿者13人にSNSを通じて、疑問をぶつけてみました。その結果は・・・?
調べるとSNSには、多数のなりすましアカウントが見つかります。例えば女優の石原さとみさんは、インスタグラムで公式ページを開いていません。
なのに「ishiharasatomi.official」と名乗るアカウントがあります。
オフィシャル…つまり公式? 自己紹介欄にも「Official Instagram」と書かれています。
開設から1年半、石原さとみさんの画像を4枚投稿しただけですが、フォロワーは実に約90万人。投稿画像には「いつもステキです」などとコメントが寄せられる一方、「偽物なら本物のふりしない方がいいですよ、ファンがかわいそうです」と非難の声も投稿されています。
所属するホリプロは公式サイトで「石原さとみになりすましたツイッターやインスタグラム、facebook等が存在するようですが、本人のものではありません」と注意を呼びかけています。
ほかにも俳優の綾野剛さんや佐々木希さんを名乗るアカウントが、次々と見つかりました。
今回はSNSのメッセージ機能を使い、13のアカウントに取材を申し込みました。「なぜ、なりすましをしているのか」「なりすましている芸能人・著名人のファンなのか」などを尋ねました。
その結果。
1人からだけ、返信がありました。
返信によると、投稿者は10代後半の女性。インスタグラムの自己紹介欄には「ファンアカウントです」と書いてあり、芸能人本人かのようにふるまう形の「なりすまし」とは異なる人でした。
しかしアカウント名は、ある女優の名前に「official」とつけたもの。投稿も女優の公式ツイッターなどから転載した画像ばかり。顔写真も、もちろん女優の画像。女優側から認められた公式アカウントのようにも見えます。
女性は、こう説明します(●●は女優の名前)。
「私は●●ちゃんの大ファンで、最初はストレス発散として大好きな人の写真をパパッと投稿していました。すると不思議とフォロワーが増えはじめたので、たくさんの人に●●を支えてもらいたいと思い、ファンアカウントとして使おうと思いました」
では、なぜ「official」と名乗ったのでしょうか。
「いつか、●●もインスタグラムをはじめてほしい、それまでは私がファンの方々の感想、気持ちを受け止め、コメントいただいた方々のをまとめて●●にプレゼントしたいという思いも込めていました」
女優の代わりにファンの気持ちを受け止めたい。そんな一方的な愛情が動機だったといいます。
開設4カ月で、フォロワーは数千人に。ただ、迷惑行為をしてしまったかもしれないという思いもあるといいます。
「まさかこんなに多くの人にフォローしてもらえるなんて思ってもいませんでした」
「officialと名乗ってしまったことに関して、迷惑がられたこと、ファンが勘違いした行為をしたかも知れません」
「画像に関しては、公式サイトで公開されていない部分は載せてはいません。でも、著作権に関わるようなことをしたかも知れません」
「二つのことについて、深く反省しております」
女性のアカウント名からは現在、「official」の文字は消えています。
なりすましは後を絶たず、事務所側は投稿する予定がないのに芸能人の公式アカウントを作り、偽物の存在を明らかにするといった対策を迫られています。ツイッターも、なりすましアカウントを永久凍結する場合があるといいます。
各方面に迷惑をかけるなりすまし行為。どんな法律に触れるのでしょうか。
みずほ中央法律事務所(東京・新宿)の三平聡史弁護士は「芸能人に不名誉な投稿をすれば名誉毀損罪や侮辱罪に。画像やテレビ番組を『私の今日の写真です』などと勝手に投稿すれば、著作権法違反に問われることも考えられます」と指摘します。
「さらに『今日のライブは中止』などとつぶやいて、ファンが会場に行かないといった実害が出れば、業務妨害罪に問われる可能性があります。民事の面でも、事務所から損害賠償を求められるかもしれません」
一方で課題もあると言います。
「事務所から正しい情報が拡散すればファンの大部分が誤解した状態は終わるため、裁判でも『損害賠償を認めるほど悪質ではない』という方向になりやすいと思います」
「しかし違法性を認めない傾向が強いと、有名人は皆、公式アカウントを作るといった自己防衛を強要されることになります。そこで、こうした悪ふざけも一定の線引きで違法性を認めることになりますが、まだ裁判例としてしっかりとしたものはほとんどないといえます」
「これから大きな実害が続けて生じるようであれば、結果的に裁判例として基準ができてゆくと思います。加えてSNSのシステム上の工夫や、ファンも真偽を疑う意識を持つなど、多方面からの解決が必要とされる問題だと考えられます」
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