IT・科学
「YouTube」最初の動画が生まれた日 ファミレスで決まった巨額買収
2005年4月23日、YouTube(ユーチューブ)で最初の動画が投稿されました。ホームビデオを、ネットを通じて、友達にも見てもらいたい。そんな思いからはじまったサービスは、世界で10億人をこえる人が利用する巨大インフラに成長しました。その最初の一歩となった動画は「意外な場所」で撮られたものでした。
YouTubeは、2005年、アメリカのカリフォルニア州で、共同創設者であるチャド・ハーレー、スティーブ・チェンの2人によって生まれました
当時、インターネット上には写真を無料で共有するサービスはありました。しかし、ファイルサイズが大きく、メールで送りにくい動画の共有サービスはありませんでした。
無料で再生時にCMが表示されることもなく、特別な再生ソフトを必要とすることもない、画期的なサービスでした。すべて自前でシステムを構築することで低コストを維持し、実現させました。
気になる「最初の動画」ですが、撮影されたのは動物園です。
「Me at the Zoo」というタイトルで、ゾウを前にチャド・ハーレーが19秒間、話しています。
動物園のゾウというところが、気軽にアップできるYouTubeの特徴を現しています。
便利すぎるサービスだったために、利用者は爆発的に増えます。
今では世界的な企業として知られていますが、当時は、共同創設者のチェンのクレジットカードを限度額まで使い切って、サーバーを維持する状態でした。
テレビ局などからの著作権侵害への指摘も深刻化し、それらに対応する人も十分ではない状態でした。
2006年10月、YouTubeは、グーグルから16億5000万ドル(当時の円換算で2000億円)で買収されます。
交渉は意外な場所で行われました。人目を避けるため、シリコンバレーのデニーズで、グーグルの共同創業者、サーゲイ・ブリン、ラリー・ペイジと接触していたのです。
実は、この時、グーグルのライバルであるヤフーとも交渉をしていたことを、チェンはニューヨークの中米友好団体「百人会」でのインタビューで明かしています。
インターネットの世界の勢力図を書き換える重要な決断の舞台は、「ファミレス」だったのです。
著作権侵害への訴えに対しては、違法ファイルの削除などで対応し、かつてYouTubeを訴えたテレビ局などの中には、公式チャンネルを開設する会社も出ています。
影響を与えたのは、エンターテインメントの分野だけではありません。
シリアの内戦では、政権軍と反体制派の衝突の様子が、次々と投稿されました。真偽が不明なものも含めて、世界中に衝撃を与えました。
中国などYouTubeへの接続を禁止している国もあります。
最近、注目されているのはYouTuber(ユーチューバー)と呼ばれる、YouTube上で収入を得る人たちです。
ユーチューバーの収入源は、再生数に応じたサイト内の広告料や企業とのタイアップ、イベントなどです。世界には年収1千万円超の人も数千人いるとされていますが、ユーザー数が10億人以上いる中では、ほんの一握りです。
一方、2016年に話題になったのは「ピコ太郎」です。 再生回数が1億回を超えた「PPAP」は、世界中でネタにされました。
2016年10月にあった日本外国特派員協会での会見では、「ミラクルが2万回起こった感じ」と本人も驚くほどの化け物コンテンツになりました。
動物園の「ゾウ動画」から始まったYouTube。
内閣府の2016年度の「青少年のインターネット利用環境実態調査」によると、高校生で84.1%、中学生で74%、小学生で60.5%が動画視聴にインターネットを使っていると回答。
2020年に一部でサービスを始める次世代通信方式の「5G」では、今まで以上に気軽に動画が視聴できるようになります。
インターネット動画は、今後、ますます、身近な存在になっていきそうです。
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