IT・科学
激安iPhone充電器は「偽造品」か? ぶっ壊してみたら意外な結果に…
「安物買いの銭失い」という言葉、ありますよね。私はIT分野を中心に取材している記者ですが、最近気になっている「激安商品」があるんです。アマゾンでなぜかメチャクチャ安く売られている「アップル純正品」のiPhone用充電器です。縦横2.5センチの四角いヤツです。
これ、アップルストアでは税込み2376円します。
一方、アマゾンを見ると、たくさんの業者が「新品」を出品しています。
それが・・・ムチャクチャ安いんです!半額の1000円程度もザラにあります。
しかし、アップルは純正品を、認定した取扱店以外には出荷していないはず。こうした激安充電器の説明欄を見ると「iPhone付属品」などと書かれています。iPhoneについていたものをバラ売りしている、ということのようです。
頭をよぎるのが、これは「本物」なのかという疑問です。
専門誌「Mac Fan」も3月号で特集を組み、アマゾンなどネット通販で不自然に安い製品を「偽造品である可能性が高い」と指摘しています。
実は世界的には偽造品がたくさん出回っていて、アップルが販売業者に多額の損害賠償を求めた例もあります。
でも、天下のアマゾンで、堂々と偽造品販売? そんな実態があるのか、調べて見ることにしました。
安い順に3業者から買ってみました。値段は税込み1100円、1130円、1250円。アップルストアと比べ、半額ほどです。包装は封筒だったり、紙箱だったり、ものすごく簡素。
3商品を並べてみると、大きさや外観は純正品と同じ。表面の印字も不自然な点は見当たりません。
見た目はそっくりでも、中身は粗悪品・・・そんな可能性もあるはずです。
全国約40店を展開しているiPhone専門修理店「あいさぽ」の新宿本店に協力をお願いしました。
……分解してください!
何か専用の機具でもあればと思ったのですが、万力で挟んで小刀で切っていく地道な作業でした。1個あたり20分……本当に、お手数かけてすみません。
…で結果。
分解して分かったのは、iPhoneの充電器は、中身もものすごく緻密だということ。
立方体の土台の周りを這うように、さまざまな部品や基板が、寄せ木細工のように無駄なくぴっちり収まっています。
う…美しい。
しかし肝心の「調査」の方は……激安3商品と純正品との違いが、見つかりません。
「あいさぽ」の事業責任者、望月弘晃さんも「基盤や部品のつくり、内部の小さな印字なども純正品と違いが見当たりません」と指摘します。
ただ、3商品をじっくり確認した望月さん。「あ、この激安品だけ、部品が無いですね」
確かに最安1100円で買った充電器だけ、緑色のコイル状の部品が見当たりません。
ただ、望月さんは「アップルは純正品のつくりを公開していません。どれが必要な部品なのか、見ただけでは判断できないのが現状です」。
参考に望月さんが以前、中国業者の商品の中に見つけた偽造品を見せてもらいました。
こちらは中身スカスカで、いかにも安っぽい。「使ったら、充電が全くできませんでした。ここまで粗悪なら偽造品と分かるのですが」。
外観も中身も純正品と同じに見える…今回の3商品に「偽造品」と判断できるものはありませんでした。とはいえ値段は激安。なぜそんな商品が出回るのでしょうか。
長年、修理用部品を調達してきた経験から、望月さんは二つのルートを指摘します。
一つは中古市場などに流れたiPhoneの付属品が転売されるケース。
そしてもう一つ。「中国の電気街では『純正品』とされる充電器が、700~800円で大量に売られています」
中国内にはiPhoneの製造工場もあります。基準を満たさない「検査落ち品」が市場に横流しされているのでは…そんな真偽不明の臆測も耳にするといいます。
アマゾンには様々な業者が出品しています。充電器の購入者レビューを見ると「全く充電できなかった」「純正品と書いてあるから信じたのに」といった苦情もあり、アマゾンジャパンは取材に対し、偽造品などの出品があれば「然るべき処分を行っている」と強調します。
アップルも公式サイトに、偽造品を見分ける参考として、充電器や充電ケーブルの外見上の特徴を公開しています。広報担当者は「偽造品はiPhoneの損傷や異常過熱を招くリスクもある。正規品か確認したうえで使って欲しい」と話しています。
1/11枚