お金と仕事
在宅勤務「働きすぎる」意外な実態 カメラは「監視ではなく支援」
在宅勤務を監視するシステムが開発された――。1月、こんな話題がSNSを駆け巡りました。「成果で判断するべきだ」などと、否定的な意見も多かったのですが、開発した企業に聞いてみると、「監視」とは少し違うよう。開発過程の話を聞くと、在宅勤務を巡る様々な課題が見えてきます。
話題になったのは、キヤノンITソリューションズが3月にサービスを始める予定の「テレワークサポーター」。12月上旬に発表し、新聞などでも取り上げられていましたが、1月中旬、あるメディアで「キヤノンITS、在宅勤務者をカメラで監視」という見出しで紹介された後、急に注目度が上がりました。
ツイッターでは「監視」という言葉に反応し、「成果が重要なのに」「在宅の意味がない」などと批判が相次ぎました。
「サービスの名前はテレワークを監視する『ウォッチャー』ではなく、『サポーター』。応援したいという意図なのですが……」と、開発したキヤノンITSの石原保志・ITサービス事業本部長は戸惑い気味。「誤解が広まってしまったようですが、本質を理解してもらえれば、雇う側にも働く側にもメリットはあるはずです」
では、一体どんなサービスなのでしょうか。
活用しているのは、顔認証の技術。パソコンのカメラを通じ、あらかじめ登録した写真を元に、本当に本人が座っているかどうかを判別します。カメラの映像は中継されているわけではなく、20分に1回、画像として記録。チャットやテレビ会議などのやりとりはできません。
働き始める時は、タイムカードのように「開始」を押します。オンとオフを切り替え、集中して働けるようにするのが狙いです。
ずっと見られているわけではないとはいえ、やはり撮られることに抵抗がある人はいるかも……。家だとだらけてしまうという人にとっては、緊張感を保てていいのかもしれません。
他人が座っていたり、のぞき込んでいたりしたら、「不正アクセス」と判断されます。データの流出を防ぐための機能で、マイナンバーの管理など社内業務のために導入を決めた企業もあるそうです。
開発過程では、在宅ワークの実態も調べたそうです。意外だったのは、「在宅だから成果を示しづらく、働き過ぎてしまう」という声があったこと。サボっているわけではないことをアピールするため「メールには即返信」を心がけている人もいました。
見られていないことが、逆にプレッシャーになっているわけです。在宅勤務というと、デザイナーのようなクリエーティブな仕事をイメージしがちですが、「成果を示しづらい」仕事も多いことがわかりました。
上司や同僚にとっては、電話で問い合わせをしたい時に相手の状況がわからないため、連絡していいのか悩むこともあるそう。システムでは、相手が仕事をしているか、離席しているかをリアルタイムに把握できるので、そうした悩みは減りそうです。
在宅勤務は、育児や介護をしている人、地方に住む人など、「出社して働く」ことが難しい人に、働く機会を広げる可能性があります。生産性を上げ、ワーク・ライフバランス(WLB)を向上させるという狙いもあります。
一方、管理をどうするかの課題もあり、二の足を踏んでいる企業も多いよう。開発者としては、こうした企業が機会を広げ、働き方改革を進める後押しをしたいという思いがあるそうです。
導入にかかる費用は、1人あたり月約2千円。ちなみに、話題になった後、企業からの問い合わせは相次いでいるそうです。
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