IT・科学
まとめ記事、中小サイトも次々停止 記事のチェック、重い負担に
根拠不明の情報が載ったり、他サイトからの無断転載が見つかったりと批判を浴びている「まとめサイト」。昨年、IT大手DeNAが運営サイトの公開を停止しましたが、その陰で中小規模のサイトも多数公開が止まっています。年を越した今も、多くのサイトで再開のめどがついていません。
「只今、メンテナンス中です。ご不便をおかけしておりますこと、深くお詫び申し上げます」
「健康医療情報まとめメディア」をうたい、約3万件の記事を掲載していた「Healthil」(http://healthil.jp/)では現在、こう表示されています。まとめサイトが問題化した直後の昨年12月、全記事の公開を停止しました。運営会社Candle(東京・渋谷区)は取材に対して「世間の意識の高まりを受け、記事公開を自粛しております。今後については未定です」といいます。
同社は設立2年半後の昨年10月、ジャスダック上場企業のクルーズ(東京・港区)が12億5000万円で買収し、子会社化したことでも話題になりました。
どのような記事が掲載されていたのでしょうか。ウェブアーカイブを使い、昨年2月掲載のまとめ記事「まぶたが赤いだけじゃ済まされない!色々な原因をまとめてみました!」を調べてみました。
さまざまなサイトから、写真や文章が転載されています。
その中で「アイプチやつけまのり、アイメイクの影響で接触性皮膚炎に」の項目にある、女性のまぶたが痛々しく腫れた写真が目につきました。写真の下にも「アイメイクこそが目元トラブルを起こしてしまう大きな要因」と書かれています。
出典元として別のまとめサイトへのリンクが張ってありますが、飛び先の記事は削除されていました。そこで画像を調べると、大手を含む複数の画像販売サイトに収録されている素材だと分かりました。
しかし、どのサイトでも説明書きは「鼻の美容整形をした後のまぶたの腫れ」とあります。Healthilの記事とは大きく食い違っています。
Candleは、ほかにも旅行情報まとめサイト「JOYTRIP」(http://joy-trip.jp/)の公開を停止中。同社は「今回の件を契機として、既存の全記事のチェックを含め、改めて体制強化を進めております」としています。
症状・病気カテゴリだけで約1万件の記事を掲載していた「からきゅれ」(http://www.karacure.com/)も、アクセスすると「12月29日より、全ての投稿の公開を一時停止させていただきました。復旧の目処は未定となります」と書かれています。
同サイトでは「レントゲンで肺に影があるといわれたけど、それって肺癌?」「いつもの頭痛とはちょっと違う、危険な頭痛の見分け方」といった記事が掲載されていました。運営会社のマイピクセル(東京・千代田区)は取材に対して「現在は時間をかけ、一件一件すべての記事を精査・検証しているところです。復旧は精査・検証の結果を以って検討いたします」としています。
「専門家が監修するヘルスケア情報サイト」をうたい、約3000件の医療情報を掲載していた「メディシル」(https://medicil.jp/)も、昨年12月から公開を停止しています。公開停止前の「まとめ一覧」には「腱鞘炎以外にも存在する手の小指側に生じる痛みの原因」「歯並びが悪い人が知っておきたい3つの原因」といった記事が並んでいました。
サイト上では「昨今のキュレーションメディアに関して発生している問題を踏まえ、記事内容等の再確認を行うため、全ての記事を一旦非公開にさせていただきます」と書いています。
運営するポート(東京・新宿区)は取材に対して「外部の医師に、執筆ガイドラインの策定や執筆・リリース可否の選定などにたずさわって頂きながら運営しておりました」と強調します。
一方で、運営体制を見直すなかで「正誤情報についての精査や適切表現かどうかなどの細部に渡るチェックについて、再度見直しが必要な部分もあった」と説明。その作業中にまとめサイトが社会問題化したため、公開停止を決めたといいます。
今後、医療記事は精査のうえ別サイトに移し、メディシルは動画中心のサイトに衣替えするといいます。
まとめサイトを巡っては、DeNAが医療・健康情報サイト「WELQ」をはじめ10サイトの公開を停止中。不適切な記事掲載について第三者委員会の調査結果が出たあと、運営を再開できるか判断するとしています。
ただ、まとめサイトは大量の記事を掲載し、閲覧数を増やすことがビジネスモデルの肝。多量の記事の質を高めることは、サイト規模を問わず大きな負担になりかねません。今後、どれだけのサイトが再開できるのか、不透明な状況が続いています。
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