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連載

#11 AV出演強要問題

DMM、傘下AVメーカー売却 出演強要問題の中、亀山会長の狙いは?

3Dプリンターなどの事業を手がける「DMM.make」の看板。都内の繁華街や主要な交差点などで見かける屋外広告には積極的に有名人を起用している
3Dプリンターなどの事業を手がける「DMM.make」の看板。都内の繁華街や主要な交差点などで見かける屋外広告には積極的に有名人を起用している 出典: 朝日新聞

目次

 IT企業「DMM.com」グループが、傘下だったアダルトビデオ(AV)メーカー大手「CA」を売却していたことが分かった。同グループを率いる亀山敬司会長が明らかにした。アダルト配信事業はグループ内で続けるものの、「内部での運営責任を明確にするため」に株式会社「DMM.com」から切り離す準備をしているという。AV出演強要問題が社会問題化する中、DMMはAV事業についての組織改編に乗り出した。(朝日新聞経済部記者・高野真吾)

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グループの基盤をつくった会社売却

 DMMは昨年7月、18歳以上向けアダルトサイト「DMM.R18」で扱うAVは、AVメーカーらでつくる「知的財産振興協会」(IPPA)加盟法人及び加盟審査団体による審査済みの作品に限定し、該当しない作品の取り扱いを停止した。

 また9月には、総合エンターテイメントサイト「DMM.com」で扱う、アイドルやタレントが出演するイメージビデオについて、18歳未満が出ている作品の取り扱いを停止した。

 売却した「CA」は、昨冬には「WILL」に社名変更し、サイトも閲覧できなくなっている。CAは1990年に設立された「北都」が前身で、DMMグループの基盤をつくった会社といえる。

「知的財産振興協会」(IPPA)はAVメーカーなどで構成されている
「知的財産振興協会」(IPPA)はAVメーカーなどで構成されている 出典: 朝日新聞

本人から届いた長文メール

 これまでにも亀山会長はツイッターで「強要など絶対に許されない。どういう仕組みをつくれば今後このような被害がでないようになるのか。できることは、全てしていくつもりだ」などと発言していた。

 2016年12月、AV強要問題の広がりを受け、亀山会長に2度目の取材依頼をしたところ、本人から長文の回答がメールで来た。2017年1月上旬には追加質問にもメールで答えた。

 亀山会長はあらためて冒頭で強要問題について「弊社といたしましても真剣に対応してまいりました」と回答した。

 「強要事件につきましては、大変な問題であると認識しております」とした上で、「IPPAは被害者が出ないよう積極的且(か)つ具体的な対処をしていると聞いております。DMMは配信事業ですので、IPPAの審査に通った作品だけを取り扱うことで、悪徳な業者の作品を流通させないということを徹底しております」と述べた。

国際人権NGO「ヒューマンライツ・ナウ」がサイト上で公表したAV強要問題に対する「要請書」
国際人権NGO「ヒューマンライツ・ナウ」がサイト上で公表したAV強要問題に対する「要請書」 出典:【要請書】アダルトビデオ産業における出演強要被害再発防止および人権侵害防止のための要請書を業界団体に提出しました。 | ヒューマンライツ・ナウ

新体制発足に先立ち決断

 亀山会長は2017年1月から始まる新体制にも言及した。

 DMMグループは、「DMM.com」と「DMM.comラボ」の新社長に、イラスト投稿サイト「pixiv」を運営するピクシブ社長だった片桐孝憲氏を迎え、2017年1月に新体制をスタートさせた。

 亀山会長は「それ(新体制スタート)に先立ちCAは完全に売却、グループ傘下から外れ、会長も現在個人的に株を全く持っておりません。そういう経緯でCAが終了しました」と説明した。

 2度目のメールでは、「DMMグループとしては、アダルト配信などの事業は引き続き続けます」としつつ、「内部での運営責任を明確にするための法人分離は、行う予定です」と述べた。

 グループの取り組みについて「出演者が18歳未満の一般イメージビデオの取り扱いをやめるなど一層、基準を厳しくしております」と解説。最後に「今後も他社の配信業社の皆様と共に、配信の健全化をより一層目指していきたいと存じます」と結んだ。

片桐孝憲氏の新社長就任を伝えるプレスリリース
片桐孝憲氏の新社長就任を伝えるプレスリリース 出典:DMM.com、新社長にピクシブ片桐孝憲氏を1月より招聘を内定 : プレスリリース|DMM.com Group

厳しい視線の中でAVメーカー売却

 亀山会長は昨年6月の月刊誌の記事の中で、入社式で「うちの稼ぎの3割はエロ。それが嫌なら今のうちに辞めた方がいい」と述べたと報じられている。

 昨年1月の経済誌インタビューでは、最近、メディアに出るようになった心境の変化を問われ、次のように答えていた。

「4年前まで『引きこもり社長』だったので、エロだ、ヤクザだと散々に言われていました」
「従業員も1000人を超えたので『エロはエロですけど、ヤクザではありません』くらいは言っておいた方がいいかな」

 そんな中、警視庁は昨年6月、大手AVプロダクションの元社長ら3人を、所属女性をAVの撮影に派遣したとして労働者派遣法違反容疑(有害業務就労目的派遣)で逮捕した(後に罰金刑)。

 CAは、この事件関連で家宅捜索を受けたことが明らかになっている。結果として、AV業界に対する厳しい視線が続く中での、メーカー売却となった。

出典:https://pixta.jp/

まとめサイト「はちま起稿」でも話題に

 DMMグループは、オンラインゲーム「艦隊これくしょん」が大ヒットし、FXやオンライン英会話も育っているとされる。

 昨年12月の片桐新社長の人事発表時には「インターネット事業の更なる拡大、推進を行うため新しい経営体制を敷き、事業の一層の加速を目指します」と説明している。

 AV以外でも、DMMグループは昨年末、まとめサイト「はちま起稿」を「DMM.com」が買収していたことが明らかになり話題を集めた。「はちま起稿」は昨年10月には他社に売却している。

「DMM.com」のロボット事業部が予約販売中の卓上ロボットアイドル「プリメイドAI」(税抜き13万8千円)。アイドルの曲の振り付けをコピーする「振りコピ」ができる=東京都江東区
「DMM.com」のロボット事業部が予約販売中の卓上ロボットアイドル「プリメイドAI」(税抜き13万8千円)。アイドルの曲の振り付けをコピーする「振りコピ」ができる=東京都江東区 出典: 朝日新聞

グループの新たな「顔」は?

 変化の激しいネット業界において、様々な施策を打っているDMMグループだが、いまだ、収益源としてAV事業の存在が小さくないのも事実だ。

 「DMM.com」は昨年11月、VR(仮想現実)動画の有料配信サービスを始めているが、12月14日、亀山会長はツイッターで以下のようにつぶやいた。

 「1000万円売れたのはアダルトVR。とりあえずエロで人集めて、一般も売ります。メーカーさんはどんどんコンテンツ持って来てね~!」

 新社長に期待されている新規事業と、当面の収益源である既存のAV事業との責任体制を明確にしようとしたともいえる今回の措置。アグレッシブな企業イメージの象徴でもあったAV事業以外に、グループの「顔」となる成長分野を育てられるのか。新体制の手腕がさっそく問われそうだ。

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