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野球ユーチューバー「クーニン」って何者? ダル自主トレにも招待
「野球ユーチューバー」。インターネットの動画サイト「YouTube」で様々な動画を配信し、野球を広めようと活動する「伝道師」がいます。あのメジャーリーガーの自主トレにも招待された男とは――。(朝日新聞スポーツ部記者・山口史朗)
「クーニンさんですよね! 写真、撮ってください!」。大阪府内のグラウンドで野球をする男性に、野球少年たちが目を輝かせながら近づいてきました。
昨年12月下旬のことです。「僕、ただのおっさんなんだけどなあ」。そう苦笑いしつつ、「クーニン」と呼ばれる男性は、写真撮影に応じました。
芸能人でもプロ野球選手でもありません。が、「クーニン」は今、小・中学球児を中心に幅広い野球人に知られる存在なのです。写真を撮ってもらった野球少年の1人が言いました。「毎日、見ています!」
クーニンの肩書は「野球ユーチューバー」。文字通り、「YouTube」に野球関連の動画を毎日、アップしています。月間の再生回数は最高で約750万回に上るそうです。
その名も「クーニンTV」。この内容が小・中学生のみならず、大人の「草野球プレーヤー」にとっても、実に参考になり、なおかつおもしろいのです。
週末は軟式野球クラブチームで活動するクーニンさんが実際に投げたり打ったり、筋力トレーニングをする映像から、強豪チームの投手に試合前の肩の作り方や牽制(けんせい)球のコツを教えてもらう企画、グラブの型付け方法など、動画のテーマは多岐にわたります。
ある強豪チームのエースを取材した動画では、直球やスライダー、チェンジアップなどの握りを教えてもらい、その後は実際にクーニンさんがその投手と対決します。これから変化球を覚える中・高校生にとって、参考になること間違いなしでしょう。
32歳。普段は東京都内の情報通信系の会社でウェブディレクターとして働く徳島県出身の元高校球児です。2014年の秋に会社の上司に誘われて始めたYouTube活動でしたが、どんな動画が見られるかを研究するうち、徐々に再生回数が増えたそう。
「本業でもメディア運営に携わり、ユーザーをいかに獲得して定着させるかを考えているため、その経験が生きているのかもしれません」と言います。
そして、なんとこの冬、クーニンさんの存在を知ったダルビッシュ投手(レンジャーズ)から、田中将大投手(ヤンキース)、大谷翔平投手(日本ハム)らとともに都内で行う自主トレに誘われたのです。この時の内容もクーニンTVで紹介されています。
元々、ダルビッシュ投手と知り合いだったわけではありません。
「3年前くらいに、フェイスブックのメッセージ機能で、ダルビッシュ投手にトレーニング方法を質問したんです。そのときは返信がなかったのですが、この冬、突然メッセージをもらって。びっくりしました」
最初は趣味程度に始めたyoutube活動も、多くの人に視聴されるようになったことで「野球の普及、裾野の拡大に貢献したい」と思うようになったそうです。
今年からは「クーニンズ」という自らの軟式野球クラブチームも立ち上げ、活動の幅を広げようと考えています。
そんなクーニンさんに共感する野球関連の企業も増えています。12月下旬にクーニンさんが大阪を訪れたのもそのためでした。
大阪市中央区のユニホームメーカー「イウジン(日本スポーツ開発株式会社)」を訪れ、オーダーユニホームの製作現場を取材しました(こちらはクーニンTVで公開)。
取材を受けた同社の営業部長・島田真衣さんは「私たちイウジンも、ユニホームを作ることで少しでも野球の普及に貢献したいと思っています。形は違えど、動画を通じて野球の普及に努めるクーニンさんは、私たちと同じ思いを持っているのかなと感じ、取材を受けました」とのこと。
「野球人口が減っている中、クーニンTVを通じて、サッカーではなく野球をやる子どもたちが増えてほしい」とクーニンさん。
視聴者からのコメントで新しい情報を知ることもあるそうで「こちらも勉強になります」。クーニンさんの取り組みは少しずつ、でも着実に様々な野球人へと広がっています。
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