コラム
漫画で「ダメママ」宣言 二ノ宮知子さん語るドタバタ子育て
お子さんを抱っこしたら「ママが良い!」と号泣されたお父さん、いませんか。大ヒット作「のだめカンタービレ」を生み出した漫画家・二ノ宮知子さんはその逆。育児の中心は、主夫の夫。自身を「ダメママ」とした漫画も描いた二ノ宮さんに、お子さんと過ごす時間が少ないゆえの「子育てどたばた劇」を聞きました。
「俺が育てるから産んでくれ」。忙しさにかまけていた30歳の頃、同い年で主夫の夫と「将来子どもが欲しいね」と話した時、そう言われました。その言葉通り、長男(8)と次男(5)の育児は夫が中心です。
夫は調理師免許を持ち、もともと家事が好き。私の趣味だったバンド活動を通じて付き合いだしてから、仕事を辞めて、家事をしながら漫画の手伝いをしてくれました。28歳で結婚。流産や子宮筋腫の手術を経験した後、オーケストラに熱中するピアニストらの成長を描いた「のだめカンタービレ」の連載が佳境だった39歳で長男、42歳で次男を出産しました。
いま夫は朝5時に起きて、小学校に通う長男の朝ご飯作り。洗濯や買い物、子どものお風呂はほぼ任せています。私の家事は7時半ごろ起きて、幼稚園に行く次男のご飯を担当するくらい。これが「おにぎり通信」の副題を「ダメママ日記」にした理由です。母が子育てに奮闘する漫画だと読者に期待される前に宣言しました。
息子たちと過ごす時間は食事と、私の仕事場で宿題をする時が中心。よく絵日記や算数を見てあげます。アシスタントさんからも絵の描き方を教わっていて、いつか漫画のお手伝いをしてくれないかなとひそかに画策中です。
一緒に過ごす時間が夫よりも少なく、初めはなつかれなくて大変でした。長男が2歳の頃、デパートで2人になった時、周りの人がいる前で「パパが良い!」と号泣されました。まるで世間のお父さんが「ママが良い」と言われるように。つい先日は夫の代わりに次男を幼稚園へ送る時、自転車で道に迷った。ここは右? 左? と、次男に道を聞きました。いわゆる「イクメン」に近いのは夫よりも私ですね。
主夫の夫よりも、息子2人と過ごす時間が少ない。だから一緒の時は、子どもが持っている疑問に理由をはっきり説明したいと思っています。
例えばテレビのチャンネル争い。以前、私がニュース番組を見たいと言っているのに、息子たちは「全然面白くない。何でそんなものを見るの」と聞いてきた。「地震や戦争とか、知らないといけない大事なニュースがあるの」と真面目に話したら、長男はいつの間にか毎朝登校する前にニュースを見るようになっていました。夫から「長男が(都知事を辞職した)舛添さんをおちょくっていたよ」と聞いて、ちゃんと見ているんだなと感心しました。
最近は次男のわがままに困っています。お友達家族とレストランに行った時に次男が「回転ずしがいい」と泣いて、あまりにもうるさくて店を移ったと夫から聞きました。
泣けば大人が言うことをきくと思っているみたい。許せば泣きやむので楽なんですけど、良くないですよね。今は絶対に許さん! と心に決めています。夫はどちらかというと優しいので、私は厳しい母になろうとしています。
自宅で夫がやきそばを作った時にキャベツが入っているのを見た途端、野菜嫌いの次男が「食べな~い」と床に寝転がった。全く起き上がろうとしないので、「(次男を)鬼に食べさせないといけないね」と言ったら、わんわん泣いた。そうしたら長男も「食べさせないで」と泣き出して。おまえが泣くなよ! と思いましたけど、まだ2人とも鬼を信じているみたいで使えそうです(笑)。
でも結局、鬼より「野菜食べないと病気になるよ」とか「お兄ちゃんは何でもチャレンジして食べているよ」と言ったのが効いたようです。さんざん泣いた後に起き上がって、「チャレンジする」とつぶやいてキャベツを食べた。最初は意地張って泣いていても、しっかり説明した時のことは後々覚えているみたい。だんだん根比べに勝つようになっています。
息子たちは年々、色んなことに気づいてきています。
長男は、4歳くらいで私の仕事を何となく理解し始めた。我が家の子育てを描いた「おにぎり通信」を見て、「あれ? これって僕たちのことだよね」と。次男も今、そんな年頃です。
以前から日曜日の朝はテレビで仮面ライダーシリーズを息子たちと一緒に見ています。物語もさることながら、俳優がかっこいい。作品によっては、主人公の俳優が出ているほかの出演作のDVDを買うはまりぶりです。そんな母を見ていた長男が5歳の頃、「みんな役なんでしょ。ライダーじゃないんだよね」と悟ったように言った時は焦りました(笑)。
ヒーローにはヒーローでいてほしい。子どもの夢を壊してはいけない! と思って「ライダーにも色々やることがあるの。生活があるのよ」と慌ててごまかしました。いつか本当にわかったときに笑える話なら、楽しいウソは大丈夫かなと思います。
まだ子どもなので仕事場をチョロチョロと出入りして邪魔をすることもある。忙しいと構ってあげられなくて、「これ描かないとご飯食べられないんだよ」と、たまに言ってしまう。
ある時、腕が痛いと言ったら、長男が泣き出してしまいました。描けなくなって生活できなくなる、と想像したのでしょうか。仕事の大切さをしっかり話したいけど、ちょっと言い方を失敗したかな、と反省しています。
今はできるだけ、息子の小学校の話を聞くよう心がけています。学校で誰と遊んだの、何を勉強したの、とか何げないことをご飯や宿題の時間に聞きます。
息子から何も言わなくても、私が聞くと「遊ばないって友達に言われた」とか、たまにショックなことがあるんですよね。「大丈夫、大丈夫」と励ましたり、「君が何か言ったんじゃないの?」と聞いてみたり。
仕事が忙しくて短い時間しかなくても、その日一日の出来事を話す習慣を大切にしています。このさき成長しても、話せる関係はつくっておきたい。いつでも味方だから、何でも話してごらん、と伝えていきたいです。(聞き手・滝沢卓)
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