連載
#5 夜廻り猫
最低のクリスマス、本当に寂しい理由は…「涙を誘う猫マンガ」の聖夜
街がイルミネーションで彩られ、楽しそうに腕を組んだカップルが歩き、なんだか独りで過ごしたくないと感じてしまうクリスマス。でも、当日の朝になって、約束していた友達がドタキャン。「ハガネの女」「エデンの東北」などで知られ、ツイッターでも作品を発表している漫画家の深谷かほるさんが描いた「寂しいクリスマス」とは……。
「クリスマスは鍋しようよ」「チキンとケーキ予約するね!」
夏から約束していたはずの会社の同僚。けれど、当日、インフルエンザにかかったと連絡が入りました。
残念に思いながら、気分転換にデパートへ出かけると、ふせっているはずの友人が、カップルでデートしている姿を目にしたのでした。
女性は、こたつでふて寝して過ごします。
「最低のクリスマス こんなこと二度とやらない」とポツリ。
「もし同じことが起きても 次は友達の幸せを喜んであげる」と決意します。
「それなら こんなにみじめじゃない」
作者の深谷かほるさんは、「独りでいたって、やりたいことをやっている時は寂しくない。じゃあ、本当に寂しいのはどんなとき?」と考えたそうです。
「こんな風に友達に振られたとき、相手の幸せを祈ってあげる気持ちになれないことに気付いた時が、本当に寂しい気持ちになるんじゃないかと思いました」
本当は、この友人に「『見たぞー!よかったねえ、楽しくやんなよ!』と、言えたらよかった、と思っているんじゃないかな」。
誰と過ごしても、たとえ独りで過ごしたとしても、気持ちのあったかいクリスマスが過ごせますように。漫画からは、そんな思いが伝わってきます。
【マンガ「夜廻り猫」】
猫の遠藤平蔵が、心で泣いている人や動物たちの匂いをキャッチし、話を聞くマンガ「夜廻(まわ)り猫」。
泣いているひとたちは、病気を抱えていたり、離婚したばかりだったり、新しい家族にどう溶け込んでいいか分からなかったり、幸せを分けてあげられないと悩んでいたり…。
そんな悩みに、遠藤たちはそっと寄り添います。
遠藤とともに夜廻りするのは、片目の子猫「重郎」。姑獲鳥(こかくちょう)に襲われ、けがをしていたところを遠藤たちが助けました。
ツイッター上では、「遠藤、自分のところにも来てほしい」といった声が寄せられ、人気が広がっています。
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深谷かほる(ふかや・かほる) 漫画家。1962年、福島生まれ。代表作に「ハガネの女」「エデンの東北」など。昨年10月から、ツイッター(@fukaya91)で漫画「夜廻り猫」を発表し始め、6月30日に単行本を発売。自身も愛猫家で、黒猫のマリとともに暮らす。
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